僕、魔女になります‼︎

くりす

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第3章〜新しい世界のはじまり〜

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 再び意識が戻って来ると、僕はボンヤリとした状態でゆっくりと眼を開く。
 すると、僕の視界の中に前の世界での僕の部屋ではないが、記憶の中には確かに見憶えのある天井が入ってきた。
 (ーーどうやら本当に新しい世界へと来てしまったようだ…。いや、改変されたのだから、来てしまったは少し変かな…。)
 そんなことを考えながら、僕はゆっくりと上体を起こした。そして、気持ちを落ち着けさせるためだろうか、無意識のうちに軽く身震いをする。
 その後、僕は今の自分が置かれている状況を把握するために、この世界での記憶を丁寧に探っていく。

 (ーー先ずは、日時と場所だ。)
 この世界に来る前は、たしか10月の中頃だったはず…。今は……どうやら2月の中頃の太陽が昇り始めた時間帯らしい。
 僅かに太陽の光が部屋の窓にあるカーテンの隙間を縫って射し込んでくる。
 道理で震えてしまう訳だ。普通に寒いし。

 (ーーさてと、次は場所だけど…。)
 ここはどうやら、徳島にある町(どうやら、47都道府県は殆ど前の世界と同じようだ)の自分が生まれ育った家の自分の部屋だということがわかった。

 (ーー次に、考えることは…。)
 などと思考に耽っていると、不意に僕の耳に慌てた様子で、この部屋を目指して駆けてくる足音が聞こえてきた。
 僕がそちらに意識を向けるとほぼ同時に、部屋のドアが蹴り破るような勢いで大きな音を立てながら開いた。
 そして、ドアを開けた人物、僕の姉である紲名明日花が姿を見せる。
 「あきらっ!玲はちゃんと玲なの⁈」
 もし僕が状況を理解していなければ明らかにおかしな発言をした自分の姉に対して、僕は、姉さんも前の世界の記憶がある事をほぼ確信する。
 そして、姉さんを少しでも落ち着かせるために普段通りを意識しながら質問に返す。
 「そんなことを聴くってことは、姉さんも、この世界以外の記憶があるってこと?」
 「えぇ。正直なところ目が覚めたら、いきなりほぼ別世界だもの。驚きしかないわよ。さらに、元の世界の記憶どころか、この世界での記憶もバッチリあるし…。ということは玲もなの?」
 「うん。僕も…、両方の世界での記憶があるね。」
 ルアとの約束の都合上、姉さんの封印された記憶をなるべく刺激したくないので、世界が改変されたかもしれないという話題になるのは避けて行きたいし、可能なら異世界転生的な姉さんが納得できる話にしたいものだ。そうすれば、世界改変の話題が出て来る可能性は、ぐっと下がるはずだし…。
 そんなことを考えていると、姉さんが僕の答えを聴いて安心したように息を吐き出す。
 「よかった~。もしかしたら、私だけかと思ったし。それにしても、どうしてこんなことになったのかしら?」
 「それについては、僕もさっぱり。ただ言えるのは、この事象に対して、すぐに答えは出ないと思うよ。手掛かりも何も無いしね。」
 「まぁ、小説や漫画でもよくある展開よね~。」
 流石、我が姉と言うべきなのか、ルアの言っていた通り、こんな状況下で冷静を取り戻しつつある。
 「それにしても、私も玲も元の世界の時と姿が変わってないのね。」
 そう、僕たちの姿は元の世界と同じである。
 「確かに、全くと言っていいほど変わってないね。この世界で過ごしてた自分たちも同じ姿なのは、まさにご都合主義の展開だね。」
 「まぁ、容姿や性別が変わってると余計な混乱があるかもしれないものね。」
 「そうだね。とりあえず、僕たちの状況を把握しとこうか。」
 「そうね。この世界について色々把握はしておいた方が良いものね。」
 姉さんと意見が一致したので、僕たちはこの世界での記憶を頼りに自分たちや世界についての状況を可能な限り把握していく。

 こうして、この世界について把握していく中でルアから聴いたこと以外にも様々なことがわかった。
 例えば、この世界での生活などの技術レベルが前よりも全体的に高くなっている分野が多いようだ。特に、魔女の育成に使用される分野と関連があるのは元の世界から見ると凄まじいの一言である。
 どうやらこの世界では、魔法と科学の両方の技術が上手い具合に噛み合って技術レベルを上げることができたらしい。本当に、ご都合主義な世界だと感じざる得ない。

 次に僕たちは自分たちの置かれている状況の把握するためには記憶を探っていく。
 そして、自分の状況を把握していくほど、僕は何とも言えない複雑な感情に襲われいった。それに対して、姉さんの方は面白いオモチャを見つけた子どものごとく純粋なようで何か含みのある笑顔でこちらを向けながら、僕に話掛けて来る。
 「何か言いたそうな顔ね、玲。」
 「いや~、なかなか面白い状況に陥ってるなーと思ってた所だよ。」
 「本当に面白い状況よねー。」
 おそらくというより、ほぼ確実に僕の気持ちを理解した上で、姉さんは話を続ける。
 「だって、私も玲も同じ魔女になるために育成学校に行くことになってるものね。」
 そう、姉さんの言うように僕たちは有事の際に魔法などを用いて解決を試みることを認められた資格である『魔女』を取得するための育成学校に進学することになっている。
 再度説明するが、『魔女』の言葉どおりにこの世界では魔法を使うことができる能力を持っているのは女性だけなのが広く常識として知れ渡っている。
 そのため、自然と『魔女』の資格を取得することができる生徒は全員女性に限られる。
 では何故、男である僕が生徒になることができるのかというと、理由はいくつかあるが、大きな要因としては僕が男でありながら魔法を使うことができることと、使うことができる魔法の特性という2点である。
 これは僕自身の推測だが、この2点がルアが僕と出会って直ぐに説明してくれた世界改変時に僕が影響を受けた結果なのだろう。
 後、僕の魔法の特性については後々説明しようと思うので、今は割愛しておく。

 「まぁ、僕らが同じ学校に行くのは問題ないけど…。ちょっと気になることはあるね。」
 「あー、確かに。何か学校の制度が変わるからとかで、その制度の導入をスムーズにするために、私たち新入生は3月から仮入学になるのよね。」
 「他にもおかしなシステムを色々導入し。」
 「基本的に全寮制で、申請をしておかないと学校外に出ることが原則禁止とか、色々あったわね。」
 僕たちが入学する学校には、僕たちが現状で知っているだけでも気になるシステムがある。
 その中でも他の学校と大きく違っているのは入学試験の方法だろう。
 「僕たちからすれば既に終わった話だけど、入学試験の受験資格は特徴的だよね。だって…、2人1組での受験だったし。」
 「入学した後、基本的にペアで学校生活を送ることになってるもの、仕方ないと言えば仕方ない気もするわね。」
 「でも、新しく導入される制度は、その部分と関係してるという話だっけ?」
 「たしか、そうだったはずね。まぁ、詳細は入学した後に説明されるらしいし、今考えても仕方ないわよ。」
 「聴いてからのお楽しみというやつか。」
 正直、不安の方が大きいが今気にしても仕方ない、なるようになるだろう。
 「とりあえず、今のところ分かってるのはそんなところかしら。」
 「そうだね。魔法の使い方は何となくわかるし、問題無いと思う。本音を言えば、実際に魔法の練習をしたいけど。」
 「魔法の使用…特に攻撃性の魔法は許可がない状況での使用は原則禁止だものね。ちょっと残念だけど、今は仕方ないわよ。」
 そんな風に話をまとめた後、僕たちは3月の入学まで約2週間、この新しい世界での生活は特に問題なく過ごしていった。

 そして入学(仮)の日がやって来る。
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