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第6章〜魔法講義(2時間目)〜
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昼休みが終わり午後の講義が始まる。
「よーし、それじゃあ午後の講義をはじめまーす♪」
月兎先生の講義開始の合図で、午前とは違い一部の生徒間にあった会話が収まる。早くも、他のペアの魔法属性を聴きだそうとパーティ作成に意欲的なペアが出たようだ。ちなみに、僕と姉さんは午前と同様に他のペアとの会話はなかった…。
(ーー正直、パーティ作成は出来れば早めに完了しておきたいけど…。他のペアの実力も知らずにパーティは作れないよなぁ…。)
そんなことを考えていると、月兎先生が講義を開始する。
「じゃあ、今回は魔力制御と魔法の仕組みについて説明していこうか。まずは魔力制御だけど…、これは魔力だけで、様々な効果を発動させる技術ことね♪それで効果毎に大きく分けて4つに分かれてて、『身体活性化』、『魔力障壁』、『魔力弾』、『魔力感知』があります。順番に説明すると、まず『身体活性化』だけど…。」
「先生!すみませんが、ちょっと、よろしいでしょうか?」
月兎先生が説明している中、唐突に僕の左隣に座っている金色の長い髪を持つ如何にもお嬢様風の女性が右腕を挙げながら喋り出した。
「うん?えっと…、たしか清水雷華(しみずらいか)さんだっけ?何か質問かな?」
清水雷華と呼ばれた女性は、席から立ち上がると教室にいる全員の視線を受けつつも堂々と喋り出す。
「午前中の講義からずっと疑問でしたけど、どうして『夢の箱庭』を用いた魔法等の実戦訓練をやらずに、座学ばかりやっているのでしょうか?それも、みんなが知っているようにな基礎的なところを。正直に言わせてもらいますけど、パーティ作成のための時間も限られていますし、他のペアの実力は早いうちに知っておきたいので、こんな講義をする時間なんてないと思うのですが…。」
一部の生徒が思っていたかもしれないことをはっきりと口にする清水さん。そんな彼女の横に座っている薄い青色の髪の大人しめな雰囲気をしている女子生徒(おそらくと言うより、ほぼ確実に清水さんのペアだろう)が清水さんに語りかける。
「ら、雷華ちゃん、先生に対してそんなこと言っちゃあ駄目だよ。ねっ?」
「私は、私が思ったことを言っただけ。何の問題もないわ。」
あくまでも、強気の姿勢を示し続ける清水さん。
それに対して、月兎先生が返答をする。
「ほうほう、なるほどね~。つまり、清水さんはこれから私が教える魔力制御について十分に理解しているから、その時間を魔法の訓練等にあてたいということかなぁ?」
「はい、その通りです。月兎先生。」
「オッケー、じゃあこれから先生が行う魔力制御に対処して、先生が何をしたのか説明してもらおうかな♪それができたら、お望みどおりこの講義の時間を好きに使ってもらった構わないよ。」
そう言うと、月兎先生から殺気のような圧力が静かに溢れ出す。
「えっ?どういうことですか?」
清水雷華さんは突然の出来事に追いつくことができず混乱している。きっと、教室にいる多くの生徒も似たような状況だろう。
(ーー何をする気なんだ、この先生は?)
そんな中、僕は魔力制御を行い『身体活性化』で動体視力などの視力関係と反射神経を重点的に強化しながら、月兎先生に『魔力感知』を集中させ感知精度を高めることで、月兎先生の魔力の流れを把握し次のアクションに備える。
「じゃあ、始めるね?実戦は待って貰えないよ。」
月兎先生は混乱している清水さんを置き去りにして、どこからともなく黒ペン(キャップは付いたまま)を取り出すと、ペンをダーツの矢のように構える。そして、ペンを持っている右手を中心に魔力の制御し始める。すると、大量の魔力が右手とペンに集まり、魔素濃度が一気に濃くなり高エネルギー状態になる。
(ーーまさかそんなことしないよな?)
「ホイっと♪」
そんな僕の儚い願いは叶うことはなく、月兎先生は右手首のスナップだけでペンを清水さんの顔に向かって投げ飛ばした。
(ーーやっぱり!)
僕は『身体活性化』のおかげで、月兎先生の行動に反応することができているが、混乱中の清水さんは全くと言っていいほど反応できてはいない、そのため弾丸のような速度で飛んできているペンを躱すことも防ぐこともできない。
(ーーやばい、間に合うか?)
僕は咄嗟に清水さんの方へ左手を向けると彼女の前方に『魔力障壁』を展開させる。
すると次の瞬間には、清水さん目掛けて勢いよく飛んでいたペンが彼女に当たる直前に硬いもの同士が衝突したかのような甲高い音を立てた後、別方向へ跳ね返った。
(ーーなんとか間に合ったかな?)
跳ね返ったペンが月兎先生の近くに落ち、月兎先生はそのペンまで移動し拾い上げる。そして、ペンの状態を軽く確認した後、取り出した時と同じようにどこかにしまい込む。
(ーーペンが一切曲がりもしてない?)
そう、月兎先生に拾われる直前に見た限りでは凄まじい速さで投げられたにもかかわらず、ペンが壊れるどころか曲がりもしていなかった。
(ーーつまり、考えられるのは…。)
僕がそんなことを考えていると、ペンを拾い元の位置に戻った月兎先生は清水雷華さんに質問する。
「さあ、清水さん!私がどのような魔力制御をしたのか、そしてお隣に座っている紲名玲さんがどうやって防いだのか説明してちょーだい?」
「えっ?あの、その…。」
質問された清水さんはいきなり自分に向かって高速でペンを投げられたことによる混乱から抜け出せていない様子。
「ブッブー、時間切れでーす♪これが説明できないんだったら、ちゃんと先生の講義を受けるように♪後、もう座っていいよ♪」
混乱から立ち直れていない清水さんは月兎先生に言われるがままにストンと着席する。
それを確認した月兎先生は次に僕に対して同じ質問をする。
「じゃあ、次は実際に防いで見せた紲名玲さん!答えてちょうだい♪」
「えっと、まず先生が行ったのが『身体活性化』によって右手を強化してペンを投げ、次に僕がそのペンを『魔力障壁』を用いてそのペンが清水さんに当たるのを防いだ感じですかね?」
「ほうほう?じゃあ、あんな速さで投げられたペンが壊れなかった理由は?」
「それは、先生がペンを投げる前にペンに対しても『身体活性化』での硬度の強化を付与したか、若しくはペンの自体が特殊な材質のために高い硬度があったからだと…。」
月兎先生の質問に対して、僕は自分が考えたことを素直に答えた。
その解答を聴いた月兎先生は満足したのか、嬉しいそうに頷くと説明を始める。
「はい!そのとーり♪『身体活性化』は自分の身体の強化だけではなく、自分の持っている武器や防具、アイテムなども一時的に強化することができます!これは実戦でも非常に役立つ、とても大切なことなのでしっかり覚えるように♪じゃあ、他の魔力制御を含めて説明していくね♪」
以下が魔力制御、つまり『身体活性化』、『魔力障壁』、『魔力弾』、『魔力感知』を簡単に説明したものになる。
『身体活性化』ーー魔素を用いて身体能力を強化することである。ただ、『身体活性化』と言っても純粋な運動能力の他にも視力や反射神経といった感覚能力、怪我を回復力を高める治癒能力、自分の身体や所有しているアイテム等の硬度を強化したりと幅広く活用できる。もちろん、その人の魔力制御の技術力に依存はするが…。
また強化の仕方には大きく分けて2通りあり、魔素を体内に留めたまま強化する方法と、身体の表層を覆って強化する方法である。
魔素を体内に留める方法は、『ガーデン』内の魔素を使うわけだが、この方法のメリットが魔素を体内に留めている分は魔素を消費せず『身体活性化』を行うことができるということと、身体の外に魔素を出していないため魔力感知に発見されにくいという2点である。しかし、デメリットとして『身体活性化』に使用している『ガーデン』内の魔素を魔法に用いるとその分効果が弱まること、体内に留め続ける方が制御が難しいということである。
そして、身体を魔素で覆う方法はイメージとしてパワードスーツを着用している状態に近い。そのため、身に纏っている魔素の濃度を高めることである程度の硬度を出しながら運動能力を強化することができるので、体術の攻撃力と攻撃範囲を増やすことができるという大きなメリットである。ただ、身に纏っている魔素は少しずつ消費していくため、強化を維持するには常に魔素を補給する必要があるのと、身に纏っている魔素がノイズになり自身の魔力感知が難しくなるのがデメリットになる。
これらの性質の違いをしっかりと理解し、必要応じて使い分けることが特に近接戦を主体とする『魔女』には重要になってくる。
『魔力障壁』ーー言葉通り魔素を用いて強固な壁を空間に生み出して攻撃を防ぐものである。そのため、多くの『魔女』の防御手段として使われている。
また、『魔力障壁』は制御技術次第では展開した後に座標を動かすことができたり、身体の一部分に纏うこともできたりと、使う人次第で多種多様な利用方法が可能である。
『魔力弾』ーー魔素を圧縮して対象に放つ攻撃方法である。ただ、この『魔力弾』は対象との距離があるほど、威力の減少しやすい。そのため、主な用途としては中距離での牽制か近距離での咄嗟の攻撃方法となっている。
『魔力感知』ーー言葉通りの意味で自分の周囲の魔素を感知する手段である。主な用途は魔法使いが魔法を使ってくるタイミングを把握するためである。ちなみに、この『魔力感知』でも『ルーム』の魔素を感知することができる『魔女』は現代まで確認されていない。
また、高い感知能力があると壁などの障害物の奥にいる人物を感知することができる。ただし、この感知能力は基本的に個人の才能に依存しており、訓練等で伸ばすには限界がある。
補足だが、昨日、月兎先生が講義棟に近づいてきたのに気付いたのも、これのおかげである。
「以上が魔力制御の基本になってるよ♪ちなみにだけど、これらの魔力制御は魔法使いではない人たちも使うことができるんだよね♪ただ、魔法使いの方が『ルーム』から魔素を『ガーデン』に取り込むことで『ガーデン』内の魔素量を増やすことができる分、効果の大きい『身体活性化』、『魔力障壁』、『魔力弾』を使うことができるけどね♪」
どうやら、『魔力感知』は魔法を使える使えないよりやはり個人の才能が大きいようだ。ちなみに僕は魔法属性である『変化』の恩恵もあるおかげで、『魔力感知』には結構自信がある。
「それじゃあ、次に魔法の仕組みについて見ていこうか。まず、魔法を使うために必要な物は魔力と術式、それと使用する魔法に応じた魔法属性の3つあります。この3つはそれぞれ魔法における材料(=魔力)、設計図(=術式)、道具(=魔法属性)に例えるとイメージしやすいと思うよ♪」
(ーー確かに、その例えはわかりやすい気がする。)
僕が月兎先生の説明に関心している中、月兎先生は説明を続ける。
「それで術式って何かと言えば、要するに使用する魔法のイメージってことになるね♪つまり、魔法を使うには魔法のエネルギーである魔力、どんな魔法かのイメージ、その魔法への適性である魔法属性が大事になるわけだね♪ちなみに、魔法の展開方法には主に3つあって、『詠唱型』、『無詠唱型』、『魔法陣型』、と呼ばれています♪1つづつ説明していくね♪」
『詠唱型』ーー魔法を展開する際に詠唱つまり、事前に決めておいた魔法名等を言葉に出すことで素早く正確な術式(魔法のイメージ)を展開する方法。例として、炎の槍を創り出すためにフレイムランスと唱えるという感じだ。
『無詠唱型』ーー『詠唱型』とは異なり、魔法名を唱えずに術式を展開する方法。魔法名を唱えないため、『詠唱型』より術式の展開時間や精密性に劣ることが多い。ただし、不意打ち等に用いるには最適な手段である。(相手の魔力感知が高い場合は、気付かれることもある)
また、魔法名を唱える代わりに、予め特定の動作(腕を振る等)と魔法のイメージを結んでおくことで、術式の展開時間や精密性を向上させることも可能らしい。
『魔法陣型』ーー『詠唱型』、『無詠唱型』の術式を頭の中で構築する方法とは違い、術式を外部に展開して魔法を使う方法。この方法だと術式を正確に把握しやすくなるため、より精密で大規模な魔法を使うことが可能になる。他にも、魔法を発動した後でも術式を制御できるため、魔力を追加することで威力を増やしたり、術式を改変することで魔法の効果を書き換えることもできる。
ただし、この方法のデメリットとして、術式の制御に意識が集中しやすいため、術式の展開中に制御以外の行動がかなり難しくなり、無防備になりやすい。また、展開している術式に干渉されるリスクもある。
ただ、展開している術式には外部から魔力を取り込むことができるので、自分が魔力不足の時、味方が術式に魔力を流し込むことで魔法を発動することも理論上可能。
「要するに、術式をどのように創り出すかの違ってことだね♪これらを必要応じて使い分けができるように頑張ってね♪ちなみに、これら3つに当てはまらない魔法展開の方法として『異能型』があるけど、この『異能型』はかなり珍しいから今は説明を省略しておくね~♪魔法の仕組みについては取り敢えず、こんなところかな?誰か質問はあるかな?」
月兎先生による説明が終わり、生徒たちに理解できているかの確認をする。
僕を含む生徒たち、みんなから質問の声は出てこない。月兎先生の説明したことが、魔法を使う上で基本的なものということもあるが、月兎先生の説明がわかりやすいというのが大きな要因かもしれない。
ちなみにだが、清水さんは月兎先生の説明が始まると渋々といった感じで大人しく聴いていた。
「よし!質問はなさそうだね♪ちなみにだけど、魔法にはその効果に応じて魔術と法術に分かれてるんだけど、それぞれの特徴は…。」
月兎先生は次に魔術と法術の説明をした。
以下が、その魔術と法術の大まかな特徴である。
魔術ーー何もない状態から現象を生み出す方法。ゼロから創り出すため、どのような状況でも発動することができる。ただし、術式が崩壊するか術式内の魔力がなくなると、その効力を失う。
法術ーー対象物の状態を変化させる方法。魔法属性に応じた対象物がないと術式を発動することができない。しかし、一度変化させた対象物は術式の効果がなくなっても、元の状態に戻りはしない。ただ、術式を使った本人が制御すれば元に戻すことも可能。
そんな風に説明し終えた後、月兎先生は時計を確認し話し出す。
「じゃあ、今日の座学はここまでにしようか♪この後は施設の説明も兼ねて『夢の箱庭』を使った訓練をやろうか?それと、明日からというか原則として、『デバイス』に記載されている校則にもあるように座学による講義は平日の午前中だけになってるから、みんなヨロシクね♪午後は基本的に自由行動だから、自分たちで訓練するのも良し、先生たちに訓練をしてもらうのも良し、今はパーティ作りのために他のペアとコミュニケーションを取るってみるのもいいかもね♪ともかく、各自の判断に任せまーす♪それじゃあ、15分後に『夢の箱庭』がある仮想訓練棟に集合するように♪以上!」
そう言うと、月兎先生は教室を後にする。
それに伴い、生徒たちもそれぞれ行動に移る。
(ーーさてと、とりあえずお手洗いにでも行こうかな。)
そう思い、一声かけてようと姉さんの方を向いた僕の後ろから誰かが話し掛けてくる。
「ちょっと、よろしいかしら?」
(ーーあれ?この声は、たしか…。)
振り返ると、僕の予想通り清水雷華さんだった。
「えっと…、僕たちに何か用かな?」
「僕?まあ、いいでしょう。貴方に一言言いたいだけです。」
自分のことを僕と呼ぶことに一瞬疑問を持ったが、深くは考えず要件を伝えようとする清水さん。
ちなみに、僕の第一人称は色々考えたが結局そのままにすることにした。下手に変えてボロが出るより、最初から僕と呼ぶ人だと認識してもらう方がいいと判断したからだ。
(ーーこの流れだと、さっきの講義のことだと思うけど…。感謝を伝えようとする感じではないな…。)
「何を?」
清水さんの要件を予想しつつ、話を続けるように促す。
「べつに助けて欲しいとは言っていません。あれくらい、自分で対処できました。」
なんというか、如何にも『お嬢様』みたいなことを言われた。
(ーーこんな時、下手なことを言うと面倒になる気がするなぁ。どうしたものか…。)
そんなことを考えて困っていると清水雷華さんの後ろから聴こえてくる。
「雷華ちゃん、ちゃんと御礼しようよ。実際、助けて貰ったんだから。」
「そうは言っても、頼んでないのも事実です。ですから、礼を言うつもりはありません。それでは失礼します。」
言うや否や、清水さんは教室を出て行く。
「雷華ちゃんが失礼してすみません。あんな風にですけど、ちゃんと感謝はしていると思います。ただ、素直じゃないだけで…。」
「別に気にしてないから、大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。後、私は矢野瑞樹(やの みずき)と言います。瑞樹と呼んでもらっても大丈夫です。これからもよろしくお願いしますね。」
矢野瑞樹と名乗って女性がしっかりと清水さんのフォローをした。
それに対して僕も素直に応じる。
「うん、よろしくね、瑞樹さん。」
「はい。それでは失礼します。」
瑞樹さんは笑顔を浮かべて、軽く会釈をすると清水雷華さんを追って教室を出て行った。
その様子を見届けた後、姉さんが僕の後ろからひょこっと顔を見せてくる。
「良い子ね、瑞樹ちゃん。どう言った経緯で清水さんとペアになってるのかしら?」
「まぁ、高校での友だちとかじゃない?別に気にする必要はないと思うけどね。」
「それもそうね。それじゃあ私たちも移動しましょうか?」
「ごめん、その前にお手洗いに行ってくる。」
「そう?じゃあ、ここで待ってから。」
「了解。」
その後、用事を済ませて姉さんと合流し、仮想訓練棟へと向かった。
「よーし、それじゃあ午後の講義をはじめまーす♪」
月兎先生の講義開始の合図で、午前とは違い一部の生徒間にあった会話が収まる。早くも、他のペアの魔法属性を聴きだそうとパーティ作成に意欲的なペアが出たようだ。ちなみに、僕と姉さんは午前と同様に他のペアとの会話はなかった…。
(ーー正直、パーティ作成は出来れば早めに完了しておきたいけど…。他のペアの実力も知らずにパーティは作れないよなぁ…。)
そんなことを考えていると、月兎先生が講義を開始する。
「じゃあ、今回は魔力制御と魔法の仕組みについて説明していこうか。まずは魔力制御だけど…、これは魔力だけで、様々な効果を発動させる技術ことね♪それで効果毎に大きく分けて4つに分かれてて、『身体活性化』、『魔力障壁』、『魔力弾』、『魔力感知』があります。順番に説明すると、まず『身体活性化』だけど…。」
「先生!すみませんが、ちょっと、よろしいでしょうか?」
月兎先生が説明している中、唐突に僕の左隣に座っている金色の長い髪を持つ如何にもお嬢様風の女性が右腕を挙げながら喋り出した。
「うん?えっと…、たしか清水雷華(しみずらいか)さんだっけ?何か質問かな?」
清水雷華と呼ばれた女性は、席から立ち上がると教室にいる全員の視線を受けつつも堂々と喋り出す。
「午前中の講義からずっと疑問でしたけど、どうして『夢の箱庭』を用いた魔法等の実戦訓練をやらずに、座学ばかりやっているのでしょうか?それも、みんなが知っているようにな基礎的なところを。正直に言わせてもらいますけど、パーティ作成のための時間も限られていますし、他のペアの実力は早いうちに知っておきたいので、こんな講義をする時間なんてないと思うのですが…。」
一部の生徒が思っていたかもしれないことをはっきりと口にする清水さん。そんな彼女の横に座っている薄い青色の髪の大人しめな雰囲気をしている女子生徒(おそらくと言うより、ほぼ確実に清水さんのペアだろう)が清水さんに語りかける。
「ら、雷華ちゃん、先生に対してそんなこと言っちゃあ駄目だよ。ねっ?」
「私は、私が思ったことを言っただけ。何の問題もないわ。」
あくまでも、強気の姿勢を示し続ける清水さん。
それに対して、月兎先生が返答をする。
「ほうほう、なるほどね~。つまり、清水さんはこれから私が教える魔力制御について十分に理解しているから、その時間を魔法の訓練等にあてたいということかなぁ?」
「はい、その通りです。月兎先生。」
「オッケー、じゃあこれから先生が行う魔力制御に対処して、先生が何をしたのか説明してもらおうかな♪それができたら、お望みどおりこの講義の時間を好きに使ってもらった構わないよ。」
そう言うと、月兎先生から殺気のような圧力が静かに溢れ出す。
「えっ?どういうことですか?」
清水雷華さんは突然の出来事に追いつくことができず混乱している。きっと、教室にいる多くの生徒も似たような状況だろう。
(ーー何をする気なんだ、この先生は?)
そんな中、僕は魔力制御を行い『身体活性化』で動体視力などの視力関係と反射神経を重点的に強化しながら、月兎先生に『魔力感知』を集中させ感知精度を高めることで、月兎先生の魔力の流れを把握し次のアクションに備える。
「じゃあ、始めるね?実戦は待って貰えないよ。」
月兎先生は混乱している清水さんを置き去りにして、どこからともなく黒ペン(キャップは付いたまま)を取り出すと、ペンをダーツの矢のように構える。そして、ペンを持っている右手を中心に魔力の制御し始める。すると、大量の魔力が右手とペンに集まり、魔素濃度が一気に濃くなり高エネルギー状態になる。
(ーーまさかそんなことしないよな?)
「ホイっと♪」
そんな僕の儚い願いは叶うことはなく、月兎先生は右手首のスナップだけでペンを清水さんの顔に向かって投げ飛ばした。
(ーーやっぱり!)
僕は『身体活性化』のおかげで、月兎先生の行動に反応することができているが、混乱中の清水さんは全くと言っていいほど反応できてはいない、そのため弾丸のような速度で飛んできているペンを躱すことも防ぐこともできない。
(ーーやばい、間に合うか?)
僕は咄嗟に清水さんの方へ左手を向けると彼女の前方に『魔力障壁』を展開させる。
すると次の瞬間には、清水さん目掛けて勢いよく飛んでいたペンが彼女に当たる直前に硬いもの同士が衝突したかのような甲高い音を立てた後、別方向へ跳ね返った。
(ーーなんとか間に合ったかな?)
跳ね返ったペンが月兎先生の近くに落ち、月兎先生はそのペンまで移動し拾い上げる。そして、ペンの状態を軽く確認した後、取り出した時と同じようにどこかにしまい込む。
(ーーペンが一切曲がりもしてない?)
そう、月兎先生に拾われる直前に見た限りでは凄まじい速さで投げられたにもかかわらず、ペンが壊れるどころか曲がりもしていなかった。
(ーーつまり、考えられるのは…。)
僕がそんなことを考えていると、ペンを拾い元の位置に戻った月兎先生は清水雷華さんに質問する。
「さあ、清水さん!私がどのような魔力制御をしたのか、そしてお隣に座っている紲名玲さんがどうやって防いだのか説明してちょーだい?」
「えっ?あの、その…。」
質問された清水さんはいきなり自分に向かって高速でペンを投げられたことによる混乱から抜け出せていない様子。
「ブッブー、時間切れでーす♪これが説明できないんだったら、ちゃんと先生の講義を受けるように♪後、もう座っていいよ♪」
混乱から立ち直れていない清水さんは月兎先生に言われるがままにストンと着席する。
それを確認した月兎先生は次に僕に対して同じ質問をする。
「じゃあ、次は実際に防いで見せた紲名玲さん!答えてちょうだい♪」
「えっと、まず先生が行ったのが『身体活性化』によって右手を強化してペンを投げ、次に僕がそのペンを『魔力障壁』を用いてそのペンが清水さんに当たるのを防いだ感じですかね?」
「ほうほう?じゃあ、あんな速さで投げられたペンが壊れなかった理由は?」
「それは、先生がペンを投げる前にペンに対しても『身体活性化』での硬度の強化を付与したか、若しくはペンの自体が特殊な材質のために高い硬度があったからだと…。」
月兎先生の質問に対して、僕は自分が考えたことを素直に答えた。
その解答を聴いた月兎先生は満足したのか、嬉しいそうに頷くと説明を始める。
「はい!そのとーり♪『身体活性化』は自分の身体の強化だけではなく、自分の持っている武器や防具、アイテムなども一時的に強化することができます!これは実戦でも非常に役立つ、とても大切なことなのでしっかり覚えるように♪じゃあ、他の魔力制御を含めて説明していくね♪」
以下が魔力制御、つまり『身体活性化』、『魔力障壁』、『魔力弾』、『魔力感知』を簡単に説明したものになる。
『身体活性化』ーー魔素を用いて身体能力を強化することである。ただ、『身体活性化』と言っても純粋な運動能力の他にも視力や反射神経といった感覚能力、怪我を回復力を高める治癒能力、自分の身体や所有しているアイテム等の硬度を強化したりと幅広く活用できる。もちろん、その人の魔力制御の技術力に依存はするが…。
また強化の仕方には大きく分けて2通りあり、魔素を体内に留めたまま強化する方法と、身体の表層を覆って強化する方法である。
魔素を体内に留める方法は、『ガーデン』内の魔素を使うわけだが、この方法のメリットが魔素を体内に留めている分は魔素を消費せず『身体活性化』を行うことができるということと、身体の外に魔素を出していないため魔力感知に発見されにくいという2点である。しかし、デメリットとして『身体活性化』に使用している『ガーデン』内の魔素を魔法に用いるとその分効果が弱まること、体内に留め続ける方が制御が難しいということである。
そして、身体を魔素で覆う方法はイメージとしてパワードスーツを着用している状態に近い。そのため、身に纏っている魔素の濃度を高めることである程度の硬度を出しながら運動能力を強化することができるので、体術の攻撃力と攻撃範囲を増やすことができるという大きなメリットである。ただ、身に纏っている魔素は少しずつ消費していくため、強化を維持するには常に魔素を補給する必要があるのと、身に纏っている魔素がノイズになり自身の魔力感知が難しくなるのがデメリットになる。
これらの性質の違いをしっかりと理解し、必要応じて使い分けることが特に近接戦を主体とする『魔女』には重要になってくる。
『魔力障壁』ーー言葉通り魔素を用いて強固な壁を空間に生み出して攻撃を防ぐものである。そのため、多くの『魔女』の防御手段として使われている。
また、『魔力障壁』は制御技術次第では展開した後に座標を動かすことができたり、身体の一部分に纏うこともできたりと、使う人次第で多種多様な利用方法が可能である。
『魔力弾』ーー魔素を圧縮して対象に放つ攻撃方法である。ただ、この『魔力弾』は対象との距離があるほど、威力の減少しやすい。そのため、主な用途としては中距離での牽制か近距離での咄嗟の攻撃方法となっている。
『魔力感知』ーー言葉通りの意味で自分の周囲の魔素を感知する手段である。主な用途は魔法使いが魔法を使ってくるタイミングを把握するためである。ちなみに、この『魔力感知』でも『ルーム』の魔素を感知することができる『魔女』は現代まで確認されていない。
また、高い感知能力があると壁などの障害物の奥にいる人物を感知することができる。ただし、この感知能力は基本的に個人の才能に依存しており、訓練等で伸ばすには限界がある。
補足だが、昨日、月兎先生が講義棟に近づいてきたのに気付いたのも、これのおかげである。
「以上が魔力制御の基本になってるよ♪ちなみにだけど、これらの魔力制御は魔法使いではない人たちも使うことができるんだよね♪ただ、魔法使いの方が『ルーム』から魔素を『ガーデン』に取り込むことで『ガーデン』内の魔素量を増やすことができる分、効果の大きい『身体活性化』、『魔力障壁』、『魔力弾』を使うことができるけどね♪」
どうやら、『魔力感知』は魔法を使える使えないよりやはり個人の才能が大きいようだ。ちなみに僕は魔法属性である『変化』の恩恵もあるおかげで、『魔力感知』には結構自信がある。
「それじゃあ、次に魔法の仕組みについて見ていこうか。まず、魔法を使うために必要な物は魔力と術式、それと使用する魔法に応じた魔法属性の3つあります。この3つはそれぞれ魔法における材料(=魔力)、設計図(=術式)、道具(=魔法属性)に例えるとイメージしやすいと思うよ♪」
(ーー確かに、その例えはわかりやすい気がする。)
僕が月兎先生の説明に関心している中、月兎先生は説明を続ける。
「それで術式って何かと言えば、要するに使用する魔法のイメージってことになるね♪つまり、魔法を使うには魔法のエネルギーである魔力、どんな魔法かのイメージ、その魔法への適性である魔法属性が大事になるわけだね♪ちなみに、魔法の展開方法には主に3つあって、『詠唱型』、『無詠唱型』、『魔法陣型』、と呼ばれています♪1つづつ説明していくね♪」
『詠唱型』ーー魔法を展開する際に詠唱つまり、事前に決めておいた魔法名等を言葉に出すことで素早く正確な術式(魔法のイメージ)を展開する方法。例として、炎の槍を創り出すためにフレイムランスと唱えるという感じだ。
『無詠唱型』ーー『詠唱型』とは異なり、魔法名を唱えずに術式を展開する方法。魔法名を唱えないため、『詠唱型』より術式の展開時間や精密性に劣ることが多い。ただし、不意打ち等に用いるには最適な手段である。(相手の魔力感知が高い場合は、気付かれることもある)
また、魔法名を唱える代わりに、予め特定の動作(腕を振る等)と魔法のイメージを結んでおくことで、術式の展開時間や精密性を向上させることも可能らしい。
『魔法陣型』ーー『詠唱型』、『無詠唱型』の術式を頭の中で構築する方法とは違い、術式を外部に展開して魔法を使う方法。この方法だと術式を正確に把握しやすくなるため、より精密で大規模な魔法を使うことが可能になる。他にも、魔法を発動した後でも術式を制御できるため、魔力を追加することで威力を増やしたり、術式を改変することで魔法の効果を書き換えることもできる。
ただし、この方法のデメリットとして、術式の制御に意識が集中しやすいため、術式の展開中に制御以外の行動がかなり難しくなり、無防備になりやすい。また、展開している術式に干渉されるリスクもある。
ただ、展開している術式には外部から魔力を取り込むことができるので、自分が魔力不足の時、味方が術式に魔力を流し込むことで魔法を発動することも理論上可能。
「要するに、術式をどのように創り出すかの違ってことだね♪これらを必要応じて使い分けができるように頑張ってね♪ちなみに、これら3つに当てはまらない魔法展開の方法として『異能型』があるけど、この『異能型』はかなり珍しいから今は説明を省略しておくね~♪魔法の仕組みについては取り敢えず、こんなところかな?誰か質問はあるかな?」
月兎先生による説明が終わり、生徒たちに理解できているかの確認をする。
僕を含む生徒たち、みんなから質問の声は出てこない。月兎先生の説明したことが、魔法を使う上で基本的なものということもあるが、月兎先生の説明がわかりやすいというのが大きな要因かもしれない。
ちなみにだが、清水さんは月兎先生の説明が始まると渋々といった感じで大人しく聴いていた。
「よし!質問はなさそうだね♪ちなみにだけど、魔法にはその効果に応じて魔術と法術に分かれてるんだけど、それぞれの特徴は…。」
月兎先生は次に魔術と法術の説明をした。
以下が、その魔術と法術の大まかな特徴である。
魔術ーー何もない状態から現象を生み出す方法。ゼロから創り出すため、どのような状況でも発動することができる。ただし、術式が崩壊するか術式内の魔力がなくなると、その効力を失う。
法術ーー対象物の状態を変化させる方法。魔法属性に応じた対象物がないと術式を発動することができない。しかし、一度変化させた対象物は術式の効果がなくなっても、元の状態に戻りはしない。ただ、術式を使った本人が制御すれば元に戻すことも可能。
そんな風に説明し終えた後、月兎先生は時計を確認し話し出す。
「じゃあ、今日の座学はここまでにしようか♪この後は施設の説明も兼ねて『夢の箱庭』を使った訓練をやろうか?それと、明日からというか原則として、『デバイス』に記載されている校則にもあるように座学による講義は平日の午前中だけになってるから、みんなヨロシクね♪午後は基本的に自由行動だから、自分たちで訓練するのも良し、先生たちに訓練をしてもらうのも良し、今はパーティ作りのために他のペアとコミュニケーションを取るってみるのもいいかもね♪ともかく、各自の判断に任せまーす♪それじゃあ、15分後に『夢の箱庭』がある仮想訓練棟に集合するように♪以上!」
そう言うと、月兎先生は教室を後にする。
それに伴い、生徒たちもそれぞれ行動に移る。
(ーーさてと、とりあえずお手洗いにでも行こうかな。)
そう思い、一声かけてようと姉さんの方を向いた僕の後ろから誰かが話し掛けてくる。
「ちょっと、よろしいかしら?」
(ーーあれ?この声は、たしか…。)
振り返ると、僕の予想通り清水雷華さんだった。
「えっと…、僕たちに何か用かな?」
「僕?まあ、いいでしょう。貴方に一言言いたいだけです。」
自分のことを僕と呼ぶことに一瞬疑問を持ったが、深くは考えず要件を伝えようとする清水さん。
ちなみに、僕の第一人称は色々考えたが結局そのままにすることにした。下手に変えてボロが出るより、最初から僕と呼ぶ人だと認識してもらう方がいいと判断したからだ。
(ーーこの流れだと、さっきの講義のことだと思うけど…。感謝を伝えようとする感じではないな…。)
「何を?」
清水さんの要件を予想しつつ、話を続けるように促す。
「べつに助けて欲しいとは言っていません。あれくらい、自分で対処できました。」
なんというか、如何にも『お嬢様』みたいなことを言われた。
(ーーこんな時、下手なことを言うと面倒になる気がするなぁ。どうしたものか…。)
そんなことを考えて困っていると清水雷華さんの後ろから聴こえてくる。
「雷華ちゃん、ちゃんと御礼しようよ。実際、助けて貰ったんだから。」
「そうは言っても、頼んでないのも事実です。ですから、礼を言うつもりはありません。それでは失礼します。」
言うや否や、清水さんは教室を出て行く。
「雷華ちゃんが失礼してすみません。あんな風にですけど、ちゃんと感謝はしていると思います。ただ、素直じゃないだけで…。」
「別に気にしてないから、大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。後、私は矢野瑞樹(やの みずき)と言います。瑞樹と呼んでもらっても大丈夫です。これからもよろしくお願いしますね。」
矢野瑞樹と名乗って女性がしっかりと清水さんのフォローをした。
それに対して僕も素直に応じる。
「うん、よろしくね、瑞樹さん。」
「はい。それでは失礼します。」
瑞樹さんは笑顔を浮かべて、軽く会釈をすると清水雷華さんを追って教室を出て行った。
その様子を見届けた後、姉さんが僕の後ろからひょこっと顔を見せてくる。
「良い子ね、瑞樹ちゃん。どう言った経緯で清水さんとペアになってるのかしら?」
「まぁ、高校での友だちとかじゃない?別に気にする必要はないと思うけどね。」
「それもそうね。それじゃあ私たちも移動しましょうか?」
「ごめん、その前にお手洗いに行ってくる。」
「そう?じゃあ、ここで待ってから。」
「了解。」
その後、用事を済ませて姉さんと合流し、仮想訓練棟へと向かった。
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