僕、魔女になります‼︎

くりす

文字の大きさ
8 / 15

第7章〜仮想戦闘〜

しおりを挟む
 特に道に迷うことなくスムーズに仮想訓練棟にたどり着いた僕と姉さん。
 まだ訓練開始の5分以上前にも関わらず、殆どの生徒が集合していた。おそらく、仮想世界での魔法訓練を楽しみしているからだろう。若しくは真面目に5分前行動を心掛けているだけかもしれない。
 正直、僕はかなり楽しみである。この世界での記憶では、仮想世界で魔法を使った経験はあるけど、今までフィクションの存在だった魔法を自分が使うことができるのだから期待しない訳がない。
 (ーーただ、残念なのが学園長と決め事で僕の魔法属性である『変化』を他の生徒に気付かれないように、魔法属性を偽装しなきゃいけないということかな。万が一にも、僕が男だとバレる訳にはいかないからね。)
 一応、魔法属性を偽装しながら、闘う方法は既に考えてあるので問題はない。
 
 そんなことを考えていると、訓練開始時間も間もなくとなり、生徒たちは集合し終えている。
 その後、月兎先生と稲葉先生が一緒にやってくる。
 (ーーいよいよ、本格的な訓練開始かな?)
 「みんな、全員集まってる感じかな?」
 僕ら生徒たちを確認する月兎先生。
 「うん、大丈夫そうだね♪それじゃあ、みんなお楽しみの仮想訓練を開始!と言いたいけど、今回は『夢の箱庭』の説明を兼ねてだから実際に仮想世界にダイブしてもらうのは2組になるかな。誰か立候補するペアはいるかな?」
 月兎先生が言い終えると直ぐに挙手をする人物がいた。月兎先生はいち早くその人物に気がつく。
 「おお!素早い!躊躇いなく手を挙げたね、清水さん。」
 そう、その人物とは清水雷華さんであった。
 (ーー何故だろう、嫌な予感がする…。)
 そんなことを思っている間に、月兎先生は話を進める。
 「それで、清水さんはどこのペアと戦闘するかの希望はあるのかな?」 
 「ええ、あります。紲名さんのペアとの戦闘を希望します。」
 (ーーああ、何となくそんな気はしてた…。)
 予想していた通りに、清水さんは僕と姉さんのペアを指名してきた。
 「オッケー♪じゃあ、清水・矢野ペアと紲名姉妹のペアにやってもらおうかな。」
 (ーーこっちの意見は確認しないの⁉︎)
 僕は月兎先生の話の進め方に驚愕した。他のペアの意見を聴く気はないらしい。それどころか、清水さんのペアである瑞樹さんにも確認しなかった。
 まさに、言った者勝ちという感じだ。
 (ーーまぁ、でもやれと言うならやりますけどね。)
 「じゃあ、実際に4人に『夢の箱庭』を使ってもらう前に、この設備について簡単に説明しておこうか。」
 月兎先生の説明によると、『夢の箱庭』の仕組みは以下のようになるらしい。
 
 まず、『揺り籠』と言うカプセル型の装置へ使用者に入ってもらう。
 次に、『揺り籠』の機能で使用者たちの意識を中枢コンピュータである『マザー』とリンクさせる。その後、『マザー』で訓練空間の条件等を設定する。
 そうすると、『マザー』によって造られた空間内で使用者たちが訓練を行うことができるということらしい。ちなみに、『マザー』とリンクしている使用者の身体は『揺り籠』で基本的に動くことができず、眠っているような状態になる。

 「ただ、覚えておいて欲しいのが、『夢の箱庭』での使用者の身体能力や魔素の総量は使用者本人の感覚で決まってしまうということ。つまり、限りなくリアルな自分で訓練を行うことができるけど、現実の自分のスペックと何らかの齟齬が生まれる可能性が出てしまうということだね♪まぁ、今の技術では『ルーム』内の魔素量を測定することができないから、使用者本人の感覚に頼るしかないから仕方ないんだけどね♪」
 月兎先生が『夢の箱庭』の説明を終えた。
 要するに、自分の身体能力や魔素量等を正確に自分が把握していないと、自分のスペックに近いだけの身体で訓練をすることになると言うことだ。その誤差が現れやすいのが、身体能力と魔素量である。
 すると、『夢の箱庭』内でできたことが、いざ現実の非常時にやろうとしてもできないといったことが、起きてしまう可能性がある。そして、それが致命的になるかもしれないのである。
 そのため、『夢の箱庭』とは別に身体能力や魔素量を把握する訓練が大切になる。
 ただし、術式や魔力の制御は現実でも『夢の箱庭』内でも誤差がほとんど発生しないので、安全に魔法や魔力制御の訓練を行うことができる。

 「まぁ、長々と説明するのも面倒なので、そろそろ仮想世界で実戦してもらおうかな♪ちなみに、他の生徒たちは先生と一緒に見学してもらいます♪それでは、清水・矢野ペアと紲名姉妹はそれぞれ『揺り籠』に入ってダイブしてもらえるかな?」
 月兎先生がそう言い終えると、僕たち4人はそれぞれ『夢の箱庭』の技術職員に案内されて『揺り籠』へ向かう。
 すると、そんな僕たちに稲葉先生が声を掛けてくる。
 「別に緊張せずに、やって貰えば大丈夫ですよ。ところで、月兎先生が説明していなかったので補足しますが、今回の訓練では装備等のアイテムは事前に登録していないため使用できません。もし、戦闘に大きく影響するアイテムがあるなら今から登録してもらいますが大丈夫ですか?」
 その稲葉先生の質問に対して、僕ら4名は全員問題ないと返答する。
 (ーーどうやら、瑞樹さんたちは何かアイテムに依存した魔法属性ではないということかな?)
 おそらく、瑞樹さんたちもそう思っているのだろう何かを考えるような仕草をしている。
 そんな僕たち4人に再度稲葉先生から声が掛かる。
 「分かりました。それでは皆さん頑張って下さいね。」
 「「「「はい!」」」」
 そう返事をして、僕らはそれぞれ『揺り籠』に入った。
 『揺り籠』に入って、しばらくすると技術職員だろうか音声による説明が聞こえてくる。
 「それでは、みなさんの意識を『マザー』とリンクさせます。眼を閉じて、リラックスして下さい。」
 言われるがままに眼を閉じて、身体から余計な力を抜く。
 「では、リンク開始。」
 そう聞こえた次の瞬間、僕の意識は遠退いていく。


 次に意識が戻って来て僕が眼を開けると、姉さんと対戦相手である清水・矢野ペアを確認できた。(戦闘中は瑞樹さんのことは矢野さんと呼ばせてもらう)
 そして、僕らはバトルフィールドの確認のために周囲を見渡す。
 (ーーだいたい、直径50メートルくらいの円形で障害物等はない…。1番シンプルなフィールドって感じかな。)
 また、僕らの立ち位置は中心から約15メートルの距離を置いて向かい合う形になっている。
 そんな風に状況を確認している両ペアの目の前に、突如小型テレビサイズの電子モニターが出現する。
 「やっほー♪聞こえてるかな?」
 モニターから聞こえてきた声の主は月兎先生である。相変わらず、高めのテンションである。
 声が聞こえて直ぐにモニターに月兎先生の顔が映り出す。
 「聞こえてますし、見えてますよ先生。」
 僕の右隣にいる姉さんが返事をした。
 「オッケー、オッケー♪それじゃあ、ルールの説明をするね♪」
 ちゃんと、僕らに聞こえているかを確認した月兎先生は今回の訓練でのルールを説明してくれる。
 「ルールは至ってシンプル!先に、相手ペアの両名を戦闘不能にするか、降参させるかで勝敗を決定するよ♪ちなみに、ペアのどちらかが降参を宣言すれば、降参したペアの敗北になりまーす♪大丈夫かな?」
 ルールの説明を終えて、確認をしてくる月兎先生。
 それに対して、軽く体を動かして感覚等に違和感がないを確かめた後、僕と姉さんが頷きながら応える。
 「大丈夫です。」
 「問題ありません。」
 見てみると、相手のペアも頷いている。
 僕ら4人の確認が取れた月兎先生は開戦の合図を出す。
 「オッケー♪それじゃあ、バトルスタート!」
 目の前にあった電子モニターが消えると同時に、僕と姉さんのペアと清水・矢野ペアの戦闘が幕を開ける。

 開戦してすぐに、僕は『身体活性化』で身体能力や反射神経等を強化し、相手のペア目掛けて一気に突っ込む。
 そして、姉さんが僕に少し遅れて後ろから追いかけてくる。

 ここでいきなりだが、僕に今現在発動している変身魔法について説明したいと思う。
 この変身魔法は普段、僕から自然に放出している魔素の一部を取り込むことで変身状態を維持している。
 だが、戦闘時には僕から放出されている大部分の魔素を術式に取り込むことで、変身している身体の強化を行うことができる。この変身魔法の強化と魔力制御による内側からの『身体活性化』を併せることで、かなり効果的な身体能力の強化となっている。
 もちろん、この方法は従来の『身体活性化』の制御だけでも十分発揮させることも可能だが、魔力制御をかなり意識的にする必要がある。
 そのため、この変身魔法による補助は戦闘において大きな恩恵となっている。
 また、それ以外にも僕から放出される魔素が術式に取り込まれることで必然的に、僕の放出される魔素量が大幅に減少する。すると、相手に僕の居場所が感知され難くなると共に、本来ならノイズになる放出される魔素がなくなることで僕自身の『魔力感知』の精度をおとさずにすむことに繋がる。
 ここまでくると、もはやチートみたいに聞こえるかもしれないが、僕自身の魔法ということもあり、学園側も認可している。というより、魔法属性の偽装を行いながら闘うという縛りプレー状態なのだから、これくらいは許して欲しい。変身魔法がないと学校生活を送ることもできないだろうし…。
 
 話を戦闘に戻そう。

 対戦相手である清水・矢野ペアは、開幕早々に僕らが距離を縮めようとする行動に対して冷静に対処する。
 僕から見て清水さんが左に、矢野さんが右に分かれて移動し始める。
 おそらく、こちらの狙いを分散させると同時に挟み撃ちの形にするためだろう。
 (ーー良い連携だ。動きに迷いがなかったから最初から別れるつもりだったのかな?)
 そんなことを考えながら僕は移動を停止して、後ろから追って来ていた姉さんと合流し相手の出方を伺う。もちろん、僕と姉さんは『魔力感知』で相手のペアの動きを常に把握している。
 この僕らの行動を好機と捉えたのか清水さんの魔力が大きく動くのを僕は感じ取る。 
 ちなみにだが、僕は『魔力感知』の対象を絞り精度を高めることで対象の動きをほんの少しだけだが先読みすることが出来る。
 そのカラクリは相手の体内にある魔素の流れを見ることである。意識的にしろ、無意識的にしろ何かしらの行動を起こす時に体内の魔素に動きが生じるからである。
 この技術は高い『魔力感知』の能力と集中力が必要だが、かなり有用な方法である。
 実際、月兎先生がペンを高速で投げた際に反応できたのも実はこの感知能力が大きく貢献してくれた。
 
 その『魔力感知』で清水さんの魔素の流れを正確に把握するために、清水さんに注目すると同時に姉さんへ僕が清水さんの魔法対処することを伝えるため声を出す。
 「姉さん!」
 「わかってる!そっちは、任せたわ玲。」
 (ーー流石、姉さん。言わなくても伝わってる。)
 まさに以心伝心という奴だろう。姉さんはもう一方の矢野さんへと視線を移す。
 役割分担が決まるとほぼ同時に、清水さんが魔法を発動させる。
 「サンダーランス!」
 清水さんの右手から2メートル強の槍の形をした電気が出現する。
 そして、清水さんの右手の動きに合わせて僕の方へと飛んで来る。
 それに対して、僕は右手を左上から振り下ろしながら無詠唱で魔法を発動させる。
 すると、勢いよく飛んで来ていた雷槍が僕の目の前で小さな結晶に変化する。
 「「えっ?」」
 何が起きたか把握できていない清水・矢野ペアを他所に僕は右手で空中にある結晶を掴み取り、結晶に魔力を注ぎ込みながら姉さんへと手渡す。
 そして、空いている左手に魔力を集めて魔法を発動させるために魔法名を詠唱する。
 「クリスタルランス。」
 僕の左手に結晶でできた槍が出現する。

 そう、僕が何の魔法属性に偽装するか考えたり試行錯誤した結果、魔法属性を『結晶』と装うことにした。
 理由としては大きく分けて2つある。
 まず1つ目の理由は、清水さんの魔法を結晶に変化させることで、魔法を結晶に封じ込めた様に見せることが可能だからである。
 もちろん、現状ではありとあらゆる魔法を変化させることはできず、幾つかの条件を満たしている必要があるが強力なのには違いない。
 しかし、『変化』という魔法は当然だが変化させるものがないと使うことができない。
 そこで、僕は魔法に用いる分の魔素とは別に一定量の魔素を用意することで魔素自体を任意の物へと変化させることを考えついた。実際、この考えはうまくいったが、質量がイメージし難い炎や雷等に変化させる魔法を使うと、変化させた物の威力をうまく制御できなかった。これは今後の課題だろう。
 ともかく現状は大きさや質量をイメージしやすいものに変化させたいというのが2つ目の理由になる。
 
 再び、話が逸れたので戦闘に戻そう。

 僕が魔法を発動させたのを見て、矢野さんが両手のひらを僕に向けて魔法を放つ。
 「矢武鮫(やぶさめ)!」
 矢野さんの目の前に、数多くの水でできた矢が現れ、一斉に僕を目掛けて飛んで来る。
 しかし、僕はその攻撃を気にせず清水さんにクリスタルランスを飛ばすのと並行して脚に魔力を集めて『身体活性化』で強化する。
 もちろん、僕に向かってきていた水の矢たちは姉さんが僕と水の矢の間に割り込み強固なガラスの壁を魔法で創り出すことできっちり対応する。
 一方で清水さんはクリスタルランスを横に大きく飛んで回避している。その回避行動を確認した僕は姉さんに声をかける。
 「姉さん!そっちは任せる!」
 「オッケー。」
 姉さんからの返事を聴きながら、僕は清水さんの回避先を予測して強化しておいた脚力で一気に距離を縮める。
 その僕の行動に対して、清水さんは『魔力障壁』を自身の目の前にに展開する。そうする事で僕の次に行うであろう攻撃を防ごうとしたのだろう。
 しかしながら、僕は清水さんのその行動も予想済みだったので冷静に行動を起こす。
 僕は清水さんの『魔力障壁』の目の前で急停止すると、僕の前方の地面つまり清水さんの足元を中心に魔方陣を展開させて脚に集めていた分の魔素を魔方陣に流し込み変化させる。
 すると、僕の魔法陣から結晶の塊が勢いよく出現する。
 「っ⁉︎」
 そして、前方からの攻撃のみに対処していた清水さんは不意を突かれて碌に防御できず、僕の魔法に被弾した。
 「うぅ…。」
 諸に魔法を受けた清水さんは大きく吹き飛んで地面に落ちた後、軽く呻いて直ぐに意識がなくなった。おそらく、気を失ったのだろう。
 (ーーさて、これで清水さんは戦闘不能。姉さんの方は未だ決着してない感じかな。)
 そんなことを考えていると姉さんから合図を聞いた。
 「玲!今っ!」
 その合図を聞いて、僕はある魔法を解除させる。
 すると、矢野さんの足元に巨大な雷が現れ矢野さんを襲った。
 「キャアアっ!」
 強力な電撃を受けた矢野さんは悲鳴をあげた後、意識を失いその場に崩れ落ちる。
 そうして、今回の戦闘での勝利したペアと敗北したペアが決まった。

 姉さんと矢野さんの戦闘で何があった説明しよう。
 時間を少し戻して、僕が清水さんに向かって行った後、姉さんは自身が創り出したガラスの壁を盾にしながら、自分の左右に魔方陣を同時に2つ展開する。
 「砂の巨腕。」
 姉さんがそう唱えると、左右の魔法陣から砂でできた巨大な左右の腕が現れ、姉さんの腕の動きに合わせて左右に弧を描きながら矢野さんを両手で握り潰そう襲い掛かる。
 この姉さんの攻撃に対して、矢野さんは砂の腕に押し潰される直前に真上に大きく飛び上がった。
 だが姉さんは攻撃の手を緩めない。回避されることも想定済みで、展開している魔法陣を改変して矢野さんに追撃を試みる。
 術式が改変された事で2つの砂の腕はお互いに合体した後、真上にいる矢野さんへと襲い掛かる。
 そんな追撃にも、矢野さんは動じず行動を起こす。
 真下に大量の水を創り出し砂の腕にぶつける。
 すると、水を含んだ砂の腕はその重みで制御を失い、ただの泥になる。
 そんな泥の真ん中に着地した矢野さんは着地と同時に魔法の発動させようとする。
 その行動を確認した姉さんは僕へ合図を出す。
 「玲!今っ!」
 その合図を聞いた僕が最初に清水さんの魔法を結晶に変化させた魔法を解除する。
 実は砂の腕の中に僕が手渡した結晶を紛れさせ、矢野さんの近くに気付かず移動させたのである。
 ちなみに、姉さんに渡された結晶には僕が渡す前に魔力を注ぎ込んである。この状態で変化の魔法を解除するとどうなるかと言うと、結晶に注ぎ込んだ分だけ威力が増して魔法が再発動する。
 再発動した雷魔法はほぼ暴発に近い形で泥に含まれている水の中を駆け巡る。
 そして、泥に触れていた矢野さんに襲い掛かり意識を奪ったのである。

 こうして、今回の戦闘は決着した。
 
 戦闘終了後、仮想世界から現実世界に意識が戻ってきた僕ら4人は技術職員の案内に従って『揺り籠』から出て、月兎先生や稲葉先生、他の生徒たちに合流しようと歩みを進める。
 その途中で、清水さんと瑞樹さんに話しかけられる。
 「今回は私たちの完敗です。でも、次は負けませんからね。」
 「お2人とも、とても強かったですね。私たちももっと強くならないといけませんね。」
 そんな風に話しかけてきた2人に姉さんが代表して応える。
 「そっちもかなり強かったわよ。魔法属性の相性も良さそうだったし、これからどれくらい強くなるのか楽しみね。」
 お世辞なのか本心なのかは分からないが姉さんの2人に対する評価は高いようだ。
 「魔法属性の相性と言えば、確認したいのですがお2人の魔法属性は『結晶』と『砂』で合ってますか?そうだとすれば、あの人の血筋らしい魔法属性ですね。」
 瑞樹さんが僕と姉さんの魔法属性について尋ねてきた。おそらく、姉さんがガラスの壁を出したのは砂魔法を派生させたからと考えるからだろう。
 ちなみにだが、親子等の血縁で魔法属性が似ていることは割とあることらしい。もちろん、全く別の魔法属性になることもあるけど。
 「魔法属性についてはそちらの想像にお任せするわ。」
 瑞樹さんの問いにお茶を濁した回答をした姉さん。
 そんなことを話していると、月兎先生が僕たち4人に労いの言葉をかけてくる。
 「4人ともお疲れ~。いや~、将来が楽しみな戦いぶりだったよ。他の生徒たちへの良いお手本になったんじゃない?」
 「ありがとうございます、月兎先生。」
 月兎先生の言葉に4人を代表して姉さんが答え、僕たち4人は他の生徒たちと合流する。
 それを確認した月兎先生は講義を締める。
 「それじゃあ、今日の講義はここまでにします。明日からは各自利用申請さえすれば、大抵の場合はこの『夢の箱庭』を利用できるので存分に活用するように♪以上!」
 講義の終了を聴いて、僕ら生徒たちは各々行動に移そうとする。
 もちろん、僕と姉さんも学生寮に帰ろうとする。
 しかし、月兎先生の発言でその行動は遮られる。
 「あー、そうだ。紲名玲さんと明日花さんは学長室に来てもらうね♪」
 「えっ?どうしてですか?」
 (ーー何か呼び出されるようなことをした記憶はないんだけど。)
 そんなことを考えながら、僕は月兎先生に質問した。
 すると、僕の想像を超えた理由が月兎先生から帰ったきた。
 「だって、紲名玲さんが午前中の講義で許可なく魔力を用いた行動をしたでしょ?だから、学園長が連れて来るように言ってたからだよ?」
 (ーー嘘だろ?そんなことある?)
 なんとか口に出さずに済んだが、正直驚きは隠せない。
 月兎先生の言っている魔力を用いた行動と言うのは、月兎先生が清水さんへ投げたペンを僕が『魔力障壁』で防いだことを言っているのだろう。
 「えっと、あれは不可抗力みたいなものでは?たしかに『魔力障壁』は使いましたけど…。それに、月兎先生も『身体活性化』を使ってましたし…。」
 僕は無駄かもしれないと感じながらも、一応月兎先生に抗議をしてみる。
 すると、月兎先生がそっと僕の耳元で囁く。
 「学園長が用事があると2人を呼んでるの。魔力の使用云々は建前だよ♪」
 僕の耳元から離れると月兎先生は意地の悪い笑みを浮かべる。
 どうやら、拒否権はないらしい。
 (ーー学園長は一体何の為に呼び出したんだろう。嫌な予感がする…。)
 そんなことを考えながら、姉さんと共に月兎先生と稲葉先生に連れられ学長室へと向かう。

 そして、この時の僕にはこの呼び出しが、僕と姉さんの学園生活に大きな影響を与えることになることを知る由も無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...