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第12章〜僕、魔女になります‼︎〜
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試験終了後、僕と桐崎さん、月兎先生は姉さんたちの試験が終わるのを待っていた。
「試験についてだけど、後で確認はするけど、時間もあることだし本人たちの口から説明してもらっても良いかな?最後の何処だけで良いから。」
月兎先生が試験で最後にどのような行動をしたのか尋ねてきた。
その質問に対して、ペアを代表して僕が説明をする。
「分かりました。先ず、僕らは1回目の試験を終えた時点で、月兎先生の魔法属性とある程度の行動パターンを把握してました。」
「へー、行動パターンは兎も角、魔法属性についても目星は付いてたんだ?一応、聴いておくけど私の魔法属性は何だと思ったの?」
「月兎先生の魔法属性は『音』ですよね。」
「その根拠は?」
「根拠になったのは試験中の月兎先生の僕たちの位置を何かしらの方法で感知していたと言うことと、学校説明の時に行った月兎先生の行動なんですの2つですかね。」
「あー、あの日のことかぁ。何かあったけ?」
冗談ではなく本気で心当たりがなさそうな月兎先生の様子に、僕は呆れながらも説明を続ける。
「ほら、月兎先生が遅刻しそうになって、窓から入ってきた時ですよ。あの時、稲葉先生は月兎先生が窓から入ろうとするのを知っているかのように窓を開けました。つまり、稲葉先生が窓を開ける前に月兎先生が何かしらの方法で稲葉先生にそのことを伝えたと考えるのが自然です。」
「ふむふむ、なるほどね♪」
「そして、試験の時には常に僕たちの位置を把握しているように立ち回り、衝撃波系統の魔法を使ってましたから、月兎先生の魔法属性が複数ではない限り『音』の魔法属性だと推測出来ました。」
「おー!素晴らしい推理力だね♪その通り!私の魔法属性は『音』だよ♪まさか、こんな早くに見破られているとは、ちょっと予想外だね♪」
月兎先生は素直に驚いき、感想を述べた後、僕に説明を続けるように促す。
「それで、私の行動パターンについてはどれくらい把握出来たの?」
「あくまでも大まかな感じですけど、月兎先生は試験の課題のためか逃げに徹することはしないのが1つ目ですね。」
「まぁ、そうしないと試験の意味が無くなっちゃうもんね♪」
実際、月兎先生が最初から最後まで逃げ徹していたら、課題の達成は不可能に等しいだろう。
「それで次なんですが、可能な限り僕ら2人を同時に相手しないように立ち回るように意識しているように見えました。だから、最初の1回目以降は魔法を使っても足止め程度の威力にして魔力の消費量を最低限に抑えてましたよね。」
1回目の試験の時は最初に魔法を受けた時のダメージのせいでそれ以降の魔法に必要以上に警戒し過ぎてしまったが、おそらくこれは月兎先生の思惑通りになってしまったのだろう。
「要するに、月兎先生は撤退するのは最終手段で、尚且つ僕の足止めのために魔法を用いるのが基本的な行動パターンだと考えました。」
「ほうほう、その情報から今回の作戦を考えた訳だね?玲ちゃん自身が1回目の試験での足止めに使っていた魔法に対抗策を用意することで、私が玲ちゃんに使う魔法の威力を上げるように誘導することで桐崎さんの魔法無効化した時に得るリターンを大きくした訳だよね?」
「はい、そうすることで桐崎さんに魔法が効かないことをより印象的にすることが、今回の作戦での要でしたからね。」
「なるほどね~。それで肝心の最終作戦の内容は?」
「先ず、月兎先生を戦闘フィールドに設置されていた壁と壁の間に移動させて、行動を制限させた後、僕たちが月兎先生の魔法属性に気付いているのを悟られないために、殆ど月兎先生には効果がない大音量と本命の閃光を放つクリスタルを魔法で創り出して、クリスタルが破裂するタイミングでその音に紛れながら僕と桐崎さんは立ち位置を移動しながら、お互いに変身したということです。」
僕の変化魔法は消費魔力量が増えるが質量の増減も可能なため、お互いに体重まで入れ替えて変身させることが出来る。そうすることで、足音で入れ替わりがバレる可能性を大きく減らすことが出来る。
「はぁ~。私が足音で2人の場所を認識できる優位性を逆に利用して訳だね♪でも、なんで桐崎さんに変身魔法を掛けることが出来たの?」
「それはただ単に、桐崎さんが放出する魔力量を日常生活ぐらいに戻したからです。桐崎さんの魔法無効化は桐崎さんが放出する魔力濃度が一定以上になって効果を現すようになってますから。」
「つまり、桐崎さんがあの白銀のオーラを纏わないと魔法無効化はしないということ?」
「その通りです。だから、閃光を使って月兎先生の視界を封じることが重要だったんですよ。」
もし、月兎先生が桐崎さんに変身していた僕を見たらオーラを纏っていないことを不審に思い、そこから入れ替わっていることを見抜かれる可能性があった。
「そう聞くと、中々綱渡りな作戦だった訳だね♪どこか1つでもミスがあったら失敗していた可能性が高そうだもん。」
「それについては否定出来ませんね。」
事実、ちょっとしたタイミングのズレや、月兎先生の魔法属性『音』だけでなく、複数の魔法属性を持っていたり、クリスタルによる閃光が効果無かった場合には課題を達成するのは難しかっただろう。
「それにしても、桐崎さんも良くこんな失敗する可能性が高そうな作戦に協力したね?」
月兎先生が桐崎さんにそう尋ねると、今まで静かに僕と月兎先生のやり取りを見ていた彼女はその質問に答える。
「他に良い案が無かったのも理由ですが、…大切な仲間が考えてくれた作戦ですから、きっと上手くいくと信じていました。」
そう告げる桐崎さんの横顔は気のせいか、恥ずかしそうに薄っすらと赤くなっているように見えた。
その言葉に月兎先生は笑顔を浮かべた。
「そっか、そっか。どうやら、私の予想以上に仲良くなれたみたいだね♪いや~、先生としても喜ばしい限りだよ♪」
そんなことを言っているとタイミング良く、姉さんたちが僕らの所に合流してくる。
「姉さん、それに朱莉さんもお疲れ。」
姉さんたちの結果は聴かなくても分かる。時計の時刻と姉さんたちの表情を見れば一目瞭然だ。
「玲も咲夜ちゃんもお疲れ。結果は聴くまでもなさそう?」
若干、疲労の色を見せながらも笑顔でこちらの結果を聴いてきた。
「一応、最善は尽くせたと思うよ。」
僕は姉さんに軽く答える。
ふと横を見ると桐崎さんと朱莉さんが何やら楽しそうに話し合っていた。
そこに稲葉先生が僕たちに声をかけてくる。
「みなさん。今日の試験、お疲れ様でした。事前に月兎先生が説明していた通り、今回の試験で最優秀の成績を取ったパーティには学園長からの賞品が贈られます。もし、最優秀に選ばれた場合には、今週の土曜日に『デバイス』で通達します。」
(ーーなんとか課題は達成できたけど、まだ最優秀と決まった訳ではないし、後は結果を待つだけか。)
稲葉先生に続いて、月兎先生が説明を続ける。
「後、学生寮についてだけど4月1日の正式な入学までにパーティ毎の部屋割りを決めておくから、直ぐに部屋を変更できるように準備しておいてね♪それと、4月からの講義も再開するから、ちゃんと準備しておくように♪何か質問はあるかな?」
僕ら4人はお互いに顔を見合わせた後、僕が代表して応える。
「いえ、特にはありません。」
「それだったら、本日は解散してもらっても大丈夫だよ。お疲れ様♪」
この月兎先生の言葉で僕たちの実戦試験はその幕を下ろした。
その日の夜。
僕は桐崎さんから『デバイス』で呼び出しを受けたため、桐崎さんと朱莉さんの部屋を訪れていた。
僕は部屋の扉の前に立ち止まると、軽くノックをする。
「あ、今開けます。」
中から桐崎さんの返事が聴こえ、暫くすると扉がガチャと音を立てて、中から桐崎さんが顔を見せる。
「わざわざ呼び出してしまい、すみません。どうぞ中に。」
桐崎さんはそう言うと、僕を部屋の中へと招き入れる。
「あれ?朱莉さんは今、居ないの?」
部屋に入り卓袱台くらいの小さいテーブルに案内され、そこに腰を下ろした後、ふと気になり部屋の中を見渡しても朱莉さんの姿が見えなかった。
そんな僕の疑問に桐崎さんがいつもより少し早口で答えてくれる。
「ええ、朱莉には少しの間、席を外して貰ってます。」
僕の気のせいかもしれないが、僕が朱莉さんの名前を口にした時に、桐崎さんの体がピクッと震えた気がする。
(ーーまぁ、細かいことだし、気のせいということしておこう。)
そんなことを考えていると、桐崎さんが言葉を続ける。
「それで話したいことについてですが、2つ程あります。先ず最初に御礼を言わせて下さい。今日の試験であの結果を出す事が出来たのは、間違いなく貴方のおかげです。本当にありがとうございます。」
「別に礼を言われる程ではないよ。桐崎さんが協力してくれ無ければ、あの結果は出せなかったはずだよ。それに桐崎さんの願いを実現するって約束したからね。」
僕は桐崎さんの言葉をやんわりと否定する。
「そうだとしても、改めて感謝させて下さい。私は貴方にキツく接していたのに、貴方は私に手を差し伸べてくれたんですから。」
(ーーあまり、御礼を無下にするのも桐崎さんに失礼かもしれないな…。)
「わかった。でも、それだったら僕も、僕の作戦を信じてくれてありがとうということでお互い様にしようか?」
桐崎さんの意志に根負けした僕は妥協案を示す。
その案を聴いた桐崎さんは少し考えるような仕草をした後、最初会った時には想像もつかない柔らかな笑顔で応える。
「そうですね。お互い様ということにしましょうか。」
「そ、そうだね。」
桐崎さんの笑顔に見惚れてしまった僕は今更ながら少し緊張してきた。
(ーー落ち着け自分!今更、緊張する理由なんてないだろ!)
「それで、もう一つの話したいことって何かな?」
それを桐崎さんに悟られないように、若干早口になってしまったが話題を変えようと試みた。
「ああ、それはですね。何と言いますか、お願いがあるのですが…。」
「お願い?」
桐崎さんは何処緊張した面持ちで言葉を口にする。
「えっと、私のことも出来れば名前で呼んで欲しいのですが…。流石にいつまでも私だけ名前で呼ぶのもおかしい気がしますし…。」
桐崎さんと朱莉さんは出会った当初から僕と姉さんは呼び分けるために名前で呼んでいた。
(ーー流石に僕も桐崎さんだけ名字で呼ぶのは、なんか違和感があるし…。)
「うん。咲夜さんがそれで良いんだったら、これからは名前で呼ばせてもらうね。」
「いえ、出来れば呼び捨てで呼んでくれませんか?」
「いや、それは流石に、何と言うか…。」
咲夜さんの予想外の要求に僕は言葉を詰まらせていた。
そんな僕に咲夜さんはお互いの身長差のせいで若干上目使いになりながら、口を開く。
「ダメ、ですか?」
(ーーうう、断ってしまうと何故か朱莉さんの時とは比較にならない罪悪感を覚える気がする。)
元々、かなりハイレベルな容姿を咲夜さんの上目使いは僕にとっては破壊力が高すぎる。
結局、またも根負けした僕は小さく息を吐いて、自分を落ち着かせ言葉を口にする。
「わかった。これからはそう呼ぶよ、咲夜。」
「はい!お願いしますね!」
咲夜はその名前とは真逆の明るい太陽のように眩しい笑顔で応える。
(ーー落ち着け自分!ここで取り乱したら完全に不審者認定される。)
僕は可能な限り自分を落ち着かせながら口を開く。
「それで話はこれだけかな?」
「えっと、後1つだけ確認しても良いですか?」
「うん。何かな?」
咲夜の雰囲気が急に変わったので、僕も幾分か冷静さを取り戻すことが出来た。
「改めてなんですが、私の願いに協力してくれますか?」
彼女の瞳にある一抹の不安を感じ取った僕はその不安を拭い去るために彼女に応える。
「もちろんだよ。僕、姉さん、朱莉さん、そして咲夜の4人全員が『魔女』になれるように協力する!そう言う約束だからね。」
その言葉を聴いて、咲夜は嬉しいそうに笑顔を浮かべながら応える。
「約束…。そうですね。それでは、これからも宜しくお願いします…、玲。」
「了解。」
この言葉を残して、僕は咲夜たちの部屋を後にして姉さんが待っているはずの自室へ向かった。
(ーーん?そう言えば、咲夜が最後に僕のことを玲って呼んでた気がするけど…。これからは、お互い呼び捨てにしようって事なのかな?)
「あら?玲ちゃん?もう話は終わったの?」
部屋に戻る途中、偶然にも朱莉さんと出会った。
(ーーまぁ、部屋は同じ階にあるから出会っても不思議ではないか…。)
「うん。もう部屋に帰る途中だよ。」
そんなことを考えながら、僕は朱莉さんの質問に答える。
「そう、思ったより早かったわね。」
朱莉さんは僕の言葉にそんな感想を述べると、言葉を続ける。
「それにしても、今回は咲夜ちゃんのこと、本当にありがとうね。玲ちゃんに任せて良かったわ。」
そんな朱莉さんの言葉に僕も言葉を返す。
「僕がやりたくて彼女に勝手に協力しただけだよ。それにパーティなんだから協力するは当然でしょ?」
僕の言葉に納得してくれたのか、朱莉さんは軽く頷いた後、口を開く。
「そうね。お互いにこれからも宜しくお願いね。」
「こちらこそ。」
こうして、僕と朱莉さんは軽く握手をした後、お互いの部屋に向かうため、その場を後にした。
「試験についてだけど、後で確認はするけど、時間もあることだし本人たちの口から説明してもらっても良いかな?最後の何処だけで良いから。」
月兎先生が試験で最後にどのような行動をしたのか尋ねてきた。
その質問に対して、ペアを代表して僕が説明をする。
「分かりました。先ず、僕らは1回目の試験を終えた時点で、月兎先生の魔法属性とある程度の行動パターンを把握してました。」
「へー、行動パターンは兎も角、魔法属性についても目星は付いてたんだ?一応、聴いておくけど私の魔法属性は何だと思ったの?」
「月兎先生の魔法属性は『音』ですよね。」
「その根拠は?」
「根拠になったのは試験中の月兎先生の僕たちの位置を何かしらの方法で感知していたと言うことと、学校説明の時に行った月兎先生の行動なんですの2つですかね。」
「あー、あの日のことかぁ。何かあったけ?」
冗談ではなく本気で心当たりがなさそうな月兎先生の様子に、僕は呆れながらも説明を続ける。
「ほら、月兎先生が遅刻しそうになって、窓から入ってきた時ですよ。あの時、稲葉先生は月兎先生が窓から入ろうとするのを知っているかのように窓を開けました。つまり、稲葉先生が窓を開ける前に月兎先生が何かしらの方法で稲葉先生にそのことを伝えたと考えるのが自然です。」
「ふむふむ、なるほどね♪」
「そして、試験の時には常に僕たちの位置を把握しているように立ち回り、衝撃波系統の魔法を使ってましたから、月兎先生の魔法属性が複数ではない限り『音』の魔法属性だと推測出来ました。」
「おー!素晴らしい推理力だね♪その通り!私の魔法属性は『音』だよ♪まさか、こんな早くに見破られているとは、ちょっと予想外だね♪」
月兎先生は素直に驚いき、感想を述べた後、僕に説明を続けるように促す。
「それで、私の行動パターンについてはどれくらい把握出来たの?」
「あくまでも大まかな感じですけど、月兎先生は試験の課題のためか逃げに徹することはしないのが1つ目ですね。」
「まぁ、そうしないと試験の意味が無くなっちゃうもんね♪」
実際、月兎先生が最初から最後まで逃げ徹していたら、課題の達成は不可能に等しいだろう。
「それで次なんですが、可能な限り僕ら2人を同時に相手しないように立ち回るように意識しているように見えました。だから、最初の1回目以降は魔法を使っても足止め程度の威力にして魔力の消費量を最低限に抑えてましたよね。」
1回目の試験の時は最初に魔法を受けた時のダメージのせいでそれ以降の魔法に必要以上に警戒し過ぎてしまったが、おそらくこれは月兎先生の思惑通りになってしまったのだろう。
「要するに、月兎先生は撤退するのは最終手段で、尚且つ僕の足止めのために魔法を用いるのが基本的な行動パターンだと考えました。」
「ほうほう、その情報から今回の作戦を考えた訳だね?玲ちゃん自身が1回目の試験での足止めに使っていた魔法に対抗策を用意することで、私が玲ちゃんに使う魔法の威力を上げるように誘導することで桐崎さんの魔法無効化した時に得るリターンを大きくした訳だよね?」
「はい、そうすることで桐崎さんに魔法が効かないことをより印象的にすることが、今回の作戦での要でしたからね。」
「なるほどね~。それで肝心の最終作戦の内容は?」
「先ず、月兎先生を戦闘フィールドに設置されていた壁と壁の間に移動させて、行動を制限させた後、僕たちが月兎先生の魔法属性に気付いているのを悟られないために、殆ど月兎先生には効果がない大音量と本命の閃光を放つクリスタルを魔法で創り出して、クリスタルが破裂するタイミングでその音に紛れながら僕と桐崎さんは立ち位置を移動しながら、お互いに変身したということです。」
僕の変化魔法は消費魔力量が増えるが質量の増減も可能なため、お互いに体重まで入れ替えて変身させることが出来る。そうすることで、足音で入れ替わりがバレる可能性を大きく減らすことが出来る。
「はぁ~。私が足音で2人の場所を認識できる優位性を逆に利用して訳だね♪でも、なんで桐崎さんに変身魔法を掛けることが出来たの?」
「それはただ単に、桐崎さんが放出する魔力量を日常生活ぐらいに戻したからです。桐崎さんの魔法無効化は桐崎さんが放出する魔力濃度が一定以上になって効果を現すようになってますから。」
「つまり、桐崎さんがあの白銀のオーラを纏わないと魔法無効化はしないということ?」
「その通りです。だから、閃光を使って月兎先生の視界を封じることが重要だったんですよ。」
もし、月兎先生が桐崎さんに変身していた僕を見たらオーラを纏っていないことを不審に思い、そこから入れ替わっていることを見抜かれる可能性があった。
「そう聞くと、中々綱渡りな作戦だった訳だね♪どこか1つでもミスがあったら失敗していた可能性が高そうだもん。」
「それについては否定出来ませんね。」
事実、ちょっとしたタイミングのズレや、月兎先生の魔法属性『音』だけでなく、複数の魔法属性を持っていたり、クリスタルによる閃光が効果無かった場合には課題を達成するのは難しかっただろう。
「それにしても、桐崎さんも良くこんな失敗する可能性が高そうな作戦に協力したね?」
月兎先生が桐崎さんにそう尋ねると、今まで静かに僕と月兎先生のやり取りを見ていた彼女はその質問に答える。
「他に良い案が無かったのも理由ですが、…大切な仲間が考えてくれた作戦ですから、きっと上手くいくと信じていました。」
そう告げる桐崎さんの横顔は気のせいか、恥ずかしそうに薄っすらと赤くなっているように見えた。
その言葉に月兎先生は笑顔を浮かべた。
「そっか、そっか。どうやら、私の予想以上に仲良くなれたみたいだね♪いや~、先生としても喜ばしい限りだよ♪」
そんなことを言っているとタイミング良く、姉さんたちが僕らの所に合流してくる。
「姉さん、それに朱莉さんもお疲れ。」
姉さんたちの結果は聴かなくても分かる。時計の時刻と姉さんたちの表情を見れば一目瞭然だ。
「玲も咲夜ちゃんもお疲れ。結果は聴くまでもなさそう?」
若干、疲労の色を見せながらも笑顔でこちらの結果を聴いてきた。
「一応、最善は尽くせたと思うよ。」
僕は姉さんに軽く答える。
ふと横を見ると桐崎さんと朱莉さんが何やら楽しそうに話し合っていた。
そこに稲葉先生が僕たちに声をかけてくる。
「みなさん。今日の試験、お疲れ様でした。事前に月兎先生が説明していた通り、今回の試験で最優秀の成績を取ったパーティには学園長からの賞品が贈られます。もし、最優秀に選ばれた場合には、今週の土曜日に『デバイス』で通達します。」
(ーーなんとか課題は達成できたけど、まだ最優秀と決まった訳ではないし、後は結果を待つだけか。)
稲葉先生に続いて、月兎先生が説明を続ける。
「後、学生寮についてだけど4月1日の正式な入学までにパーティ毎の部屋割りを決めておくから、直ぐに部屋を変更できるように準備しておいてね♪それと、4月からの講義も再開するから、ちゃんと準備しておくように♪何か質問はあるかな?」
僕ら4人はお互いに顔を見合わせた後、僕が代表して応える。
「いえ、特にはありません。」
「それだったら、本日は解散してもらっても大丈夫だよ。お疲れ様♪」
この月兎先生の言葉で僕たちの実戦試験はその幕を下ろした。
その日の夜。
僕は桐崎さんから『デバイス』で呼び出しを受けたため、桐崎さんと朱莉さんの部屋を訪れていた。
僕は部屋の扉の前に立ち止まると、軽くノックをする。
「あ、今開けます。」
中から桐崎さんの返事が聴こえ、暫くすると扉がガチャと音を立てて、中から桐崎さんが顔を見せる。
「わざわざ呼び出してしまい、すみません。どうぞ中に。」
桐崎さんはそう言うと、僕を部屋の中へと招き入れる。
「あれ?朱莉さんは今、居ないの?」
部屋に入り卓袱台くらいの小さいテーブルに案内され、そこに腰を下ろした後、ふと気になり部屋の中を見渡しても朱莉さんの姿が見えなかった。
そんな僕の疑問に桐崎さんがいつもより少し早口で答えてくれる。
「ええ、朱莉には少しの間、席を外して貰ってます。」
僕の気のせいかもしれないが、僕が朱莉さんの名前を口にした時に、桐崎さんの体がピクッと震えた気がする。
(ーーまぁ、細かいことだし、気のせいということしておこう。)
そんなことを考えていると、桐崎さんが言葉を続ける。
「それで話したいことについてですが、2つ程あります。先ず最初に御礼を言わせて下さい。今日の試験であの結果を出す事が出来たのは、間違いなく貴方のおかげです。本当にありがとうございます。」
「別に礼を言われる程ではないよ。桐崎さんが協力してくれ無ければ、あの結果は出せなかったはずだよ。それに桐崎さんの願いを実現するって約束したからね。」
僕は桐崎さんの言葉をやんわりと否定する。
「そうだとしても、改めて感謝させて下さい。私は貴方にキツく接していたのに、貴方は私に手を差し伸べてくれたんですから。」
(ーーあまり、御礼を無下にするのも桐崎さんに失礼かもしれないな…。)
「わかった。でも、それだったら僕も、僕の作戦を信じてくれてありがとうということでお互い様にしようか?」
桐崎さんの意志に根負けした僕は妥協案を示す。
その案を聴いた桐崎さんは少し考えるような仕草をした後、最初会った時には想像もつかない柔らかな笑顔で応える。
「そうですね。お互い様ということにしましょうか。」
「そ、そうだね。」
桐崎さんの笑顔に見惚れてしまった僕は今更ながら少し緊張してきた。
(ーー落ち着け自分!今更、緊張する理由なんてないだろ!)
「それで、もう一つの話したいことって何かな?」
それを桐崎さんに悟られないように、若干早口になってしまったが話題を変えようと試みた。
「ああ、それはですね。何と言いますか、お願いがあるのですが…。」
「お願い?」
桐崎さんは何処緊張した面持ちで言葉を口にする。
「えっと、私のことも出来れば名前で呼んで欲しいのですが…。流石にいつまでも私だけ名前で呼ぶのもおかしい気がしますし…。」
桐崎さんと朱莉さんは出会った当初から僕と姉さんは呼び分けるために名前で呼んでいた。
(ーー流石に僕も桐崎さんだけ名字で呼ぶのは、なんか違和感があるし…。)
「うん。咲夜さんがそれで良いんだったら、これからは名前で呼ばせてもらうね。」
「いえ、出来れば呼び捨てで呼んでくれませんか?」
「いや、それは流石に、何と言うか…。」
咲夜さんの予想外の要求に僕は言葉を詰まらせていた。
そんな僕に咲夜さんはお互いの身長差のせいで若干上目使いになりながら、口を開く。
「ダメ、ですか?」
(ーーうう、断ってしまうと何故か朱莉さんの時とは比較にならない罪悪感を覚える気がする。)
元々、かなりハイレベルな容姿を咲夜さんの上目使いは僕にとっては破壊力が高すぎる。
結局、またも根負けした僕は小さく息を吐いて、自分を落ち着かせ言葉を口にする。
「わかった。これからはそう呼ぶよ、咲夜。」
「はい!お願いしますね!」
咲夜はその名前とは真逆の明るい太陽のように眩しい笑顔で応える。
(ーー落ち着け自分!ここで取り乱したら完全に不審者認定される。)
僕は可能な限り自分を落ち着かせながら口を開く。
「それで話はこれだけかな?」
「えっと、後1つだけ確認しても良いですか?」
「うん。何かな?」
咲夜の雰囲気が急に変わったので、僕も幾分か冷静さを取り戻すことが出来た。
「改めてなんですが、私の願いに協力してくれますか?」
彼女の瞳にある一抹の不安を感じ取った僕はその不安を拭い去るために彼女に応える。
「もちろんだよ。僕、姉さん、朱莉さん、そして咲夜の4人全員が『魔女』になれるように協力する!そう言う約束だからね。」
その言葉を聴いて、咲夜は嬉しいそうに笑顔を浮かべながら応える。
「約束…。そうですね。それでは、これからも宜しくお願いします…、玲。」
「了解。」
この言葉を残して、僕は咲夜たちの部屋を後にして姉さんが待っているはずの自室へ向かった。
(ーーん?そう言えば、咲夜が最後に僕のことを玲って呼んでた気がするけど…。これからは、お互い呼び捨てにしようって事なのかな?)
「あら?玲ちゃん?もう話は終わったの?」
部屋に戻る途中、偶然にも朱莉さんと出会った。
(ーーまぁ、部屋は同じ階にあるから出会っても不思議ではないか…。)
「うん。もう部屋に帰る途中だよ。」
そんなことを考えながら、僕は朱莉さんの質問に答える。
「そう、思ったより早かったわね。」
朱莉さんは僕の言葉にそんな感想を述べると、言葉を続ける。
「それにしても、今回は咲夜ちゃんのこと、本当にありがとうね。玲ちゃんに任せて良かったわ。」
そんな朱莉さんの言葉に僕も言葉を返す。
「僕がやりたくて彼女に勝手に協力しただけだよ。それにパーティなんだから協力するは当然でしょ?」
僕の言葉に納得してくれたのか、朱莉さんは軽く頷いた後、口を開く。
「そうね。お互いにこれからも宜しくお願いね。」
「こちらこそ。」
こうして、僕と朱莉さんは軽く握手をした後、お互いの部屋に向かうため、その場を後にした。
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