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一章 入学旅行一日目

1-07a 赤い瞳のアデル 1

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 霧のすぐそばに、印象的な少女が立っていた。
 ツインテールにしたサラサラの長い髪は、まるで純白の絹糸のよう。そばかすの浮いた肌はとても白く、丸い眼鏡の奥に覗く瞳は赤い。それは彼女の意志の強さを物語るように見開かれ、キラキラと輝いていた。
 彼女は霧と同様にホルダーに収めた辞典を斜め掛けし、紺色こんいろのショートケープを身に着けている。ボトムスには緋色ひいろのキュロットスカートを履き、その下には濃紺色のスパッツに包まれた細い脚がしなやかに伸びていた。
 恐らく、15歳かそれぐらいだろう。とても若く、身長は150㎝程度、小柄で華奢きゃしゃだ。
 少女はその造形の美しさもさることながら、どこか目の離せない不思議な魅力を具えている。
 しかしその可憐な見た目とは裏腹な態度で、彼女は霧を見てさぞ軽蔑したように鼻を鳴らし、言った。

「フン、入学を許可される生徒の質が、年々低下しているって本当だったのね。ガスティオールに続いて二例目じゃない」

 何やらひどいことを言われたような気がするが、霧の関心事かんしんじは他にあった。特徴的な少女の外見に、霧の胸がざわざわと胸が騒ぎだす。

(え……うそ。この子、アデルじゃない?! アデル、だよね? 物語の中よりちょっと年齢が上だけど……この外見、どう見てもアデルだわ! うはぁ~! 生アデル、見参! なんちゅう大迫力! すっごい美少女だな!えええ、アニメのアデルもきゃわいかったけど、なんというかリアルアデルはもう、生まれてきてくれてありがとうというか、存在自体が尊い! は~、目のご馳走、最高かよ!)

 アデルというのは、主人公チェカの養子だ。
 初登場は5巻、いや6巻か――と、霧は記憶を探った。
 魔法士学園を卒業し、正式に辞典魔法士となったチェカは、孤児となったアデルを引き取る。彼女はその当時5歳だった。
 アデルは悲しい事件で両親を亡くし、その並外れた魔法力から大人たちに厄介者扱いされていたが、唯一温かい手を差し伸べてくれたチェカと暮らし始め、徐々に心を開いていく。それらはカタルシスに満ちた心温まるエピソードで、多くの読者を惹きつけた。アデルの華やかな外見やツンデレぶりにファンが激増し、そのおかげで5巻あたりでちょっと落ちていた人気が6巻で再燃したほどだ。
 確か7巻の最後では、アデルは12歳だったはず――と、霧は思い起こした。

(でもこのアデル、15歳以上、ってことだよな? 魔法士学園は15歳以上じゃないと入学できないはずだし……う~ん、それにしても、可愛い! もっとそばで見たいなぁ)

 そんな風に思いながら霧が彼女のそばに近寄った時だった。
 いきなりピカッと何かが光り、驚いた二人は同時に声を上げる。

「えっ……うわ!」
「何っ?!」

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