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5話 口下手賢者、ペロペロ迷宮に挑む 2/2
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「──と、と、い、言う訳だ、だ」
俺はピリカに、自分のことを教えた。
魔力が生まれつき多く、魔法の才能が溢れすぎていたこと。
普通に話しただけで魔法が発動してしまうため、わざと口下手になっていること。
以上のことが主な原因で、ヨルトのパーティから追放されたこと。
それらをいつも通りドモりながら、ピリカに伝えた。
「ふ、普通に話しただけで魔法が発動するんですか!?」
「う、うん」
「なるほど、だからさっき『死ね』ってアルレ様が仰った後に、ゴブリンたちが死んだんですね!!」
「う、うん」
「いやいや、そんなの規格外ですよ!! 常識の範囲を遥かに超えています!!」
興奮した様子のピリカに説明をしたが、規格外と言われてしまった。
まぁ、確かに。自分でもそう思う。
放った言葉が全て現実になるほど強い魔法の才能なんて、そんなの規格外と言われても反論できない。
「なるほど、それほどまでに強いからこそ、数々の伝説を残せたのですね。アルレ様の伝説はほとんど読み漁りましたが、詳細について記載されているモノは少なかったので……恥ずかしながら知らなかったです」
「あ、あはは。は、恥じる必要は、な、無いよ」
「なんというか……驚愕を通り越して、呆れちゃいますね!!」
「あ、あはは……」
そんな軽快に呆れられても、どう反応をすればいいのかわからない。
とりあえず笑ったが、これで合っているのだろうか?
「それにしても、そんな経緯で追放されたんですね……」
悲しいような、嬉しいような、複雑な表情を浮かべるピリカ。
彼女の心境は、女性経験皆無な俺には伺えない。
「でも……アルレ様がいくら口下手でも、言ったことが全て現実に変わるほど強力な賢者様なんですよね? そんな偉大な人を追放するなんてヨルトさんはよっぽどのアホなんですね」
「そ、それは仕方ない。よ、ヨルトたちが、つ、強すぎて、お、俺の出番なんか、な、なかったから」
「ですけれど、それはこれまでの話ですよね?」
「……?」
「いくらこれまで魔法に頼らなくても大丈夫だったとしても、ヨルトさん達がこれから挑むのは……あのデトルト迷宮ですよ?」
確かにピリカの言うとおりだ。
これまでヨルトたちは俺の微弱な魔法程度でも、余裕で迷宮を攻略できていた。
しかし、彼らが挑むのは人類未踏の最高難易度を誇る大迷宮、デトルト迷宮だ。
これまでの物理一辺倒な攻略では、通用しない魔物が出現する可能性だって十二分に考えられる。
「もし彼らが攻略に失敗して、またアルレ様の手を貸してほしいって言われたら……アルレ様はどうするのですか?」
……そんなこと、考えたこともなかった。
だが、その回答は考えるまでもない。
「……た、た、助けないよ」
ギルドからの除籍、俺への誹謗中傷。
E級の冒険者に成り下がってしまったのは、全てヨルト達のせいだ。
俺の今の苦労は、全てヨルト達のせいだ。
そんな彼らに再び手を貸すなど、俺には……とてもできない。
俺は聖人君子ではない。
勇者でもなく、聖女でもない。
ただの……最強の賢者なのだから。
「ふふ、さすがです」
ピリカはニコッと微笑む。
その表情は俺がこれまで見てきた彼女の中で、一番の笑顔だった。
「あ、それと……ごめんなさい。言い忘れていたことがあります」
「?」
ピリカはピシっと気を付けのポーズをして、そのまま90度腰を曲げた。
「先ほどはありがとうございます。わたしはまだまだ……未熟なようです」
ピリカの声は震えている。
これまで底抜けに明るいと思っていた彼女だけど、やはり先ほどの経験は……堪えたのだろう。
自分が何もできず、ただただ無能だったと感じる瞬間ほどツラいものはないからな。
「……『応援している』」
「はい!!!!」
俺はドモらずに、ピリカを応援した。
◆
その後も迷宮を下っていき、数時間後に俺たちは最深層の5層にやってきた。
5層に降りたった時、一番初めに目に映ったモノのは……巨大な扉だ。
「これは……もしかして、“ボス部屋”ですか?」
「……そ、そ、その通りだ」
迷宮は一般的に5の倍数の層と、最深層に“ボス部屋”と呼ばれる特殊な部屋が設置されている。
ボス部屋の中には道中に出会った魔物よりも、格段に強い魔物が1~5体存在する。
そしてボス部屋の魔物を倒した時、帰還用のゲートと下の階層へと下る階段が出現するのだ。
もちろん、最深層の場合は基本的には帰還用のゲートだけだが。
「確か、ボスを倒したら特殊なアイテムをドロップすることがあるんですよね?」
「あ、あ、ああ。そ、それが冒険者の狙いだ」
「なるほど……、あ、アルレ様。1つだけいいですか?」
「?」
「その……ボスはわたし1人で挑んでもいいですか?」
ピリカの眼差しは、真剣そのものだ。
1層でゴブリンに日和ってからというもの、彼女は積極的に魔物と戦っている。
なれない得物を武器に、必死にゴブリンやスライムと奮闘する姿は……思わず手助けしたくなるモノだった。
だが、俺が手助けをすれば、彼女の為にはならない。
そのため、俺は必死に応援をするしかなかった。
「……う、うん。わ、わかった」
今日初めて迷宮に挑み、初めて魔物の討伐をした彼女がこうも言っているんだ。
……それを断るほど、俺も腐ってはいない。
「あ、危なくなったら、た、助けるよ」
「はい!!」
そしてピリカは、扉に手をかける。
「さぁ、行きますよ!!」
開かれた扉の先にいたのは────
俺はピリカに、自分のことを教えた。
魔力が生まれつき多く、魔法の才能が溢れすぎていたこと。
普通に話しただけで魔法が発動してしまうため、わざと口下手になっていること。
以上のことが主な原因で、ヨルトのパーティから追放されたこと。
それらをいつも通りドモりながら、ピリカに伝えた。
「ふ、普通に話しただけで魔法が発動するんですか!?」
「う、うん」
「なるほど、だからさっき『死ね』ってアルレ様が仰った後に、ゴブリンたちが死んだんですね!!」
「う、うん」
「いやいや、そんなの規格外ですよ!! 常識の範囲を遥かに超えています!!」
興奮した様子のピリカに説明をしたが、規格外と言われてしまった。
まぁ、確かに。自分でもそう思う。
放った言葉が全て現実になるほど強い魔法の才能なんて、そんなの規格外と言われても反論できない。
「なるほど、それほどまでに強いからこそ、数々の伝説を残せたのですね。アルレ様の伝説はほとんど読み漁りましたが、詳細について記載されているモノは少なかったので……恥ずかしながら知らなかったです」
「あ、あはは。は、恥じる必要は、な、無いよ」
「なんというか……驚愕を通り越して、呆れちゃいますね!!」
「あ、あはは……」
そんな軽快に呆れられても、どう反応をすればいいのかわからない。
とりあえず笑ったが、これで合っているのだろうか?
「それにしても、そんな経緯で追放されたんですね……」
悲しいような、嬉しいような、複雑な表情を浮かべるピリカ。
彼女の心境は、女性経験皆無な俺には伺えない。
「でも……アルレ様がいくら口下手でも、言ったことが全て現実に変わるほど強力な賢者様なんですよね? そんな偉大な人を追放するなんてヨルトさんはよっぽどのアホなんですね」
「そ、それは仕方ない。よ、ヨルトたちが、つ、強すぎて、お、俺の出番なんか、な、なかったから」
「ですけれど、それはこれまでの話ですよね?」
「……?」
「いくらこれまで魔法に頼らなくても大丈夫だったとしても、ヨルトさん達がこれから挑むのは……あのデトルト迷宮ですよ?」
確かにピリカの言うとおりだ。
これまでヨルトたちは俺の微弱な魔法程度でも、余裕で迷宮を攻略できていた。
しかし、彼らが挑むのは人類未踏の最高難易度を誇る大迷宮、デトルト迷宮だ。
これまでの物理一辺倒な攻略では、通用しない魔物が出現する可能性だって十二分に考えられる。
「もし彼らが攻略に失敗して、またアルレ様の手を貸してほしいって言われたら……アルレ様はどうするのですか?」
……そんなこと、考えたこともなかった。
だが、その回答は考えるまでもない。
「……た、た、助けないよ」
ギルドからの除籍、俺への誹謗中傷。
E級の冒険者に成り下がってしまったのは、全てヨルト達のせいだ。
俺の今の苦労は、全てヨルト達のせいだ。
そんな彼らに再び手を貸すなど、俺には……とてもできない。
俺は聖人君子ではない。
勇者でもなく、聖女でもない。
ただの……最強の賢者なのだから。
「ふふ、さすがです」
ピリカはニコッと微笑む。
その表情は俺がこれまで見てきた彼女の中で、一番の笑顔だった。
「あ、それと……ごめんなさい。言い忘れていたことがあります」
「?」
ピリカはピシっと気を付けのポーズをして、そのまま90度腰を曲げた。
「先ほどはありがとうございます。わたしはまだまだ……未熟なようです」
ピリカの声は震えている。
これまで底抜けに明るいと思っていた彼女だけど、やはり先ほどの経験は……堪えたのだろう。
自分が何もできず、ただただ無能だったと感じる瞬間ほどツラいものはないからな。
「……『応援している』」
「はい!!!!」
俺はドモらずに、ピリカを応援した。
◆
その後も迷宮を下っていき、数時間後に俺たちは最深層の5層にやってきた。
5層に降りたった時、一番初めに目に映ったモノのは……巨大な扉だ。
「これは……もしかして、“ボス部屋”ですか?」
「……そ、そ、その通りだ」
迷宮は一般的に5の倍数の層と、最深層に“ボス部屋”と呼ばれる特殊な部屋が設置されている。
ボス部屋の中には道中に出会った魔物よりも、格段に強い魔物が1~5体存在する。
そしてボス部屋の魔物を倒した時、帰還用のゲートと下の階層へと下る階段が出現するのだ。
もちろん、最深層の場合は基本的には帰還用のゲートだけだが。
「確か、ボスを倒したら特殊なアイテムをドロップすることがあるんですよね?」
「あ、あ、ああ。そ、それが冒険者の狙いだ」
「なるほど……、あ、アルレ様。1つだけいいですか?」
「?」
「その……ボスはわたし1人で挑んでもいいですか?」
ピリカの眼差しは、真剣そのものだ。
1層でゴブリンに日和ってからというもの、彼女は積極的に魔物と戦っている。
なれない得物を武器に、必死にゴブリンやスライムと奮闘する姿は……思わず手助けしたくなるモノだった。
だが、俺が手助けをすれば、彼女の為にはならない。
そのため、俺は必死に応援をするしかなかった。
「……う、うん。わ、わかった」
今日初めて迷宮に挑み、初めて魔物の討伐をした彼女がこうも言っているんだ。
……それを断るほど、俺も腐ってはいない。
「あ、危なくなったら、た、助けるよ」
「はい!!」
そしてピリカは、扉に手をかける。
「さぁ、行きますよ!!」
開かれた扉の先にいたのは────
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