刻下の古代魔法師 〜魔法の才能がないので公爵家から追放された俺は、大賢者に弟子入りして最強の【古代魔法】を習得した〜

志鷹 志紀

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4話 師との出会い

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「少年よ、お前は合格じゃよ」

 シワシワの顔をさらにシワクチャにして、老婆は笑った。

「な、なんですか、その言いぐさは……。まるで自分が上位者であるか、みたいな言い方ですね」

「ワシの正体は少年の願いを叶えてから教えよう。して、少年は何か願いはないのか?」

「……なんでも叶えてくれるんですか?」

「無論、ワシは……おっと、正体は願いを叶えてからじゃぞ?」

「……僕の願いは──」

 願いなんて、ずっと昔から決まっている。
 ソレ・・があれば、父に失望されることはなかった。
 ソレ・・があれば、カイナと比較されることはなかった。
 ソレ・・があれば、ザベラは僕に惚れた。
 ソレ・・があれば、蔑みや嘲笑はされなかった。
 ソレ・・があれば、追放されることはなかった。
 ソレ・・があれば、ピリカと別れることはなかった。

 願いなんて、ずっと昔から決まっている。
 僕は10年間、ずっと求めていたんだ。
 誰よりも得られなくて、誰よりも求めたんだ。

「僕を……強くしてください」

 誰よりも、誰よりも、強くなりたい。
 僕をバカにしたことを、後悔するほど。
 僕と婚約破棄したことを、後悔するほど。
 僕を追放したことを、後悔するほど。
 誰よりも、誰よりも、誰よりも、強くなりたい。

「強さか……ありきたりではあるが、素晴らしい願いじゃの」

「叶えてくれますか……?」

「あぁ、もちろん。じゃが、具体的にはどの程度の強さが欲しいのじゃ?」

「誰にもバカにされないような。そう……世界最強になりたいです」

「ほぉ、大きく出たの。じゃが男の子らしくて、実に素晴らしいの」

 世界最強になれば、誰にも愚弄はされないだろう。
 そのくらい強くなって、見返してやりたい。
 僕を愚弄した、この世界の全てに。

「じゃがその願いを叶えるには、時間が必要じゃ。それにワシの正体を隠したままでは、その願いは叶えられないの」

 そういうと老婆は、光だした。

「え、え……?」

「少年よ、伽話とぎばなしは好きかの?」

「え、えぇ……人並みには」

 老婆は光り輝きながら、質問をしてくる。
 あまりにもシュールで、意味不明だ。
 だが、とりあえず答えておく。

「ならば少年よ、《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》の話は知っておるか?」

「え、えぇ。《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》が魔王や邪神を倒す、快活な物語ですよね……?」

「実はアレ、実話なのじゃよ」

「……は?」

 老婆の発光が収まった。
 そして、そこに老婆はいなかった。
 老婆の代わりに、そこにいたのは──

「ワシが《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》こと、ソプラ・ラーリルドじゃ」

 ──青い髪をした、美人の女性だった。


 ◆


「は、は……はァ!?」

 そこにいたのは、僕が出会ってきた中で一番の美人の女性だった。
 湖の如き深い蒼色の髪は、腰まで伸びて実にセクシーだ。
 透き通るような琥珀色の瞳は、見ているだけでドキドキする。
 背は高く、178センチほど。胸も大きく、ビックだ。

 そこにいたのは、しゃがれた老婆ではない。
 ピチピチの白い肌の、20代に見える美しい女性だった

「ハッハッハ、驚いたか」

「お、驚くも何も……はァ!?」

「ワシの話、聞いたことはあるよな?」

「い、いやいや、え、だって……」

 誰もが知る、《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》の御伽噺おとぎばなし
 確かに《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》は蒼い髪と琥珀色の瞳を持つ、高身長な女性と描写されるが……。それにしたって、信じられない。

「喜べ少年、お前の願いを叶えてやろう!!」

「え、え、え……願いって……」

「なんじゃ、嫌なのか? ならば、ワシは立ち去るが──」

「──ま、待ってください!! か、叶えてください!!」

 とっさに、僕は必死に女性を引き留めた。
 彼女が本当に《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》なのか、それはまだわからない。現にまだ僕は、現実を受け止め切れていない。

 だが仮に真実だとすれば、これ以上ないほどのチャンスはないだろう。
 なんたって、いくつもの伝説を作り上げてきた人物が願いを叶えてくれるのだ。
 このチャンスを逃せば、僕は一生後悔するだろう。

「そうか、では──ワシの弟子にしてやろう!!」

「で、弟子……ですか?」

「うむ、ワシが直々に鍛えぬいてやろう!!」

「ま、マジですか……」

 《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》の弟子、とんでもない光栄だ。
 本当に彼女が《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》なのだったら、僕は間違いなく人類最強になれるだろう。

「では少年よ、さっそく向かおう!!」

「え」

 僕は女性に首根っこを掴まれ、持ち上げられた。
 そして──

「さぁ──《全知全能の大賢者バーバ・ヤーガ》の力の一部、刮目するがよい!!」

 一瞬だけ浮遊感を感じた。 
 思わず瞼を閉じる。
 そして、瞼を開くと──

「……え?」

 先ほどの路地裏は、そこにはなかった。
 木製の壁と床、壁に寄りかかる本棚。
 そう、一般的な部屋に僕たちはいた。
 
「こ、ここは……?」

「ワシの家、『鶏の足の上に建つ小屋バーバ・ヤーガ・ハウス』じゃ!!」

 と、女性は快活に笑いながら告げた。
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