刻下の古代魔法師 〜魔法の才能がないので公爵家から追放された俺は、大賢者に弟子入りして最強の【古代魔法】を習得した〜

志鷹 志紀

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19話 報告

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「よぉ……一週間ぶりだな」

 数分後、俺は父の元へとやってきた。
 もちろん、窓から侵入して。

「……アルカ、か」

「なんだ、元気がないな。もっと口汚く罵れよ」

 椅子に座る父の姿は、まるで生気を感じられない。
 一週間前よりも白髪が圧倒的に増え、魂が抜けたように呆然とした表情を浮かべている。

「……なんのようだ」

「伝えに来たんだよ。お前の倅が死んだことを」

 俺は影からカイナの死骸を取り出し、床にペシッと叩きつけた。
 相変わらず死臭が凄まじく、思わず鼻を詰むんでしまう。

「カイナは俺に敗れた。教育が悪いのか、傲慢にふるまう割には弱かったな」

「……そうか、ここまで凄惨に敗れたのか」

「……うろたえないんだな」

「……その気力さえ、ワシには残っておらんよ」

 ムカつくな。
 かつてはあれほど恐れ、怯えた対象である父が……こうも弱っている姿は。
 嗚咽を漏らし、口汚く罵ってくれた方が、何倍もよかった。
 その方が……おもしろいから。

 弱って生気を失った男が落ちぶれても、何もおもしろくない。
 そういう男は元気もなく、抵抗もせずに死んでいく。
 父もきっと、そういう最期を送るのだろう。
 そう、このままでは、そういった最期になってしまう。

「……それだけは避けたいよな」

「何か言ったか?」

「いいや、何も」

 父には無様に死んでほしい。
 泣き言を言い、この世を憎みながら死んでほしい。
 俺に地獄を与えた男なのだから、同じように地獄を味合わせてやりたいのだ。

「なぁ父よ、これから何が起きるかわかるか?」

「……100万の民衆が暴徒と化し、ワシを殺しに来るのじゃろ?」

「あぁ、そうだ。お前は四肢を裂かれ、身体を焼かれるだろう」

「……何故じゃろうな。ワシはただ、無能を追い出しただけだというのに」

「その無能が民衆の心を救っていたことに気付けなかった、お前の落ち度だ」

 俺の存在そのものが、民衆の救いになっていたらしい。
 リレリオン領に暮らす民衆は、暴政に苦しんでいた。
 高い税に傲慢な貴族、そんな暮らしに辟易としていたらしい。
 貴族に対する不平不満が募っている中、俺が現れたのだ。

 俺も自覚はないが、民衆は俺に感謝していた。
 貴族連中の中で、唯一俺だけが優しかった、と。
 話を聞いてくれて、現状への対策を練ってくれた、と。
 貴族はゴミばかりだが、俺だけは違う、と。
 民衆たちは、そう語ってくれた。

「ワシは何も間違っていないハズじゃ。ただ……周りが愚かだった、それだけじゃ」

「救えないな。まぁ、救ってやる気もないが」

 ため息を吐く。
 自分が一番愚かだということに、父は気づけていない。
 どこまでも滑稽で、どこまでも救えない。

「どうせ地獄を見るはめになるんだ。先に体験しておかないか?」
 
「……何を言っている?」

「お前が味わう地獄を、先に体験させてやるよ」

 そう言い、無詠唱で魔法を発動する。
 発動したのは、《下級の火球ファイア・ボール》。
 そう、カイナを焼いた魔法だ。

「なんと……無詠唱とは。さすがは我が息子、隠された才能があったとはな」

「なんだ、今さら褒めて。命乞いか?」

「そうではない。ただ……貴様さえよければ、もう一度やり直さないか? 貴様が行きたがっていた学院にも、入らせて──」

「【黙れ】」

 言葉の魔法を使用し、強制的に黙らせる。
 もう……聞きたくない。

「今さらお前のことを許すハズがないだろう?」

 父にされた仕打ちは、全て鮮明に覚えている。
 鞭で叩かれたこと、社交界でバカにされたこと。
 学校にロクに通わせてもらえなかったこと。
 何よりも……俺へのイジメを容認し、推奨したこと。

 だからこそ、今さら許すハズがない。
 どんな言葉をかけられても、父の元へは戻らない。
 謝罪をされたとしても、許すハズがない。
 父には苦しみ悶え、息絶えて欲しいのだから。
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