刻下の古代魔法師 〜魔法の才能がないので公爵家から追放された俺は、大賢者に弟子入りして最強の【古代魔法】を習得した〜

志鷹 志紀

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20話 哀れな父

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「苦しめ」

 そして俺は、《下級の火球ファイア・ボール》を放った。

「ぐあぁあああああ!!」

 先ほどまでの暗い雰囲気とは打って変わり、元気な声を上げる父。
 そうだ、それでいい。痛みは人を人らしくさせるからな。

「も、燃える! し、死ぬ!!」

「【死ぬな】」

 言葉の魔法が作用し、父は死ねなくなった。
 この魔法が解除されるまでの24時間、何をしても父は死なない。

「ぐぁあああ!! あ、熱い!!」

「《下級の光刃フォトン・ブレード》」

 次に放ったのは、刃渡り30センチほどの光の刃。
 光の刃は父の右腕を切断した後、霧散した。

「ぐぁあああああ!!」

「元気だな!! 魂が抜けたように思えたが、戻ってきたようで安心したよ!!」

「し、死ぬ!! た、助けてくれ!!」

「いいや、お前はまだ死なない。殺させないさ!!」

 全身が焼かれ、右腕は落ちた。
 地獄のような苦しみが父を襲うだろうが、それでも父は死ねない。
 もちろん、これからさらに苦しみは続くだろうが、父は絶対に死ねない。

「さぁ、次はどうしようか」

 どんな苦しみを与えようか。
 考えるだけで、ワクワクする。


 ◆


「ぐ、ご、ごふ……」

「ついに叫び声も上げれなくなったか」

 数十分後、父は無残な姿に変わった。
 炎に包まれるその姿は、まさしく肉塊。
 四肢は裂かれ、皮膚は焼かれ、残った身体と顔は崩壊。
 今ではただ蠢くだけで、叫び声も上げることができない。
 通常ならば生きていることさえおかしいが、俺の魔法で死ぬことも許されない。

「【元に戻れ】」

 俺がそう呟くと、父の身体は元に戻った。
 数十分前と同じ、傷一つない肉体へと戻った。

「こ、これは……」

「どうだった、先ほどの地獄は」

「き、貴様……な、何をした!?」

「俺が質問をしているんだ。さっさと答えろ」

 父の顔面を殴る。

「が、がはッ……」

 なんとも脆いな。
 ただ殴っただけだというのに、歯が抜けて鼻血が出た。
 汚い。本当に汚い。

「答えろ。どうだった?」

「……さ、最悪だ。貴様は……悪魔だ」

「その言葉、そっくりそのまま返そう」

 10年もの間、息子を痛めつけた男の方が、よっぽど悪魔と呼べるだろう。
 
「そ、それで貴様……ワシに何をした!?」

「簡単な回復を施しただけだ」

「回復……回復魔法か!?」

「まぁ、そうだな」

 正確には違うが。
 まぁ、そっちの方がイメージが湧きやすいだろう。

「貴様が……回復魔法……、あ、あり得ない……」

「そう思うことは勝手だが、現実を見ることをお勧めするぞ」

「な、何故……貴様のような無能が、カイナを越えた……? 何故、貴様は……覚醒した……?」

「お前の教育が悪かったんだろう。だからカイナは死に、俺は追放後に覚醒した」

「つまり……全ての元凶はワシ……と、いうわけか?」

「あぁ。その通りだ」

 ようやく自分の罪を認めたか。
 なんというか、長かったな。

「さぁ、予行練習は終わりだ」

「よ、予行練習……?」

「あぁ、聞こえるだろう?」

 耳を澄ますと、喧騒が聞こえてくる。
 それは民衆たちによる、怒りの声だ。

「出てこい!! 当主!!」

「お前のせいで、俺たちは苦しんだんだ!!」

「アルカ様も追放して、最低だな!!」

「さっさと死ね!!」

「殺してやる!!」

 100万の民衆の足音が、地面を揺らす。
 民衆たちは館のすぐそばまで来ている。
 父に対する怒りを叫び、殺気を漏らして。
 
「さぁ、およびだぞ?」

「わ、ワシは……どうなるのだ?」

「現実逃避はやめろ。さっきと同じ目か、あるいはさらにひどい目に合うだろう」

「い、嫌だ……。こ、今度は……し、死ぬのだろう!?」

「いいや、まだまだ死なないさ」

 言葉の魔法が解けるのは、24時間後。
 魔法をかけてから数十分しか経過していない為、父はさらに苦しむことになるだろう。

「た、頼む!! 逃がしてくれ!!」

「は?」

「あの苦しみよりもツラい苦しみがあるのなら、ワシは耐えきれない!! 貴様ならば、ワシをこの場から逃がせるのじゃろ!?」

「……呆れるな」

「10歳まで育ててやったじゃろ!! 父の願いを貴様は無下にするのか!!」

「あぁ、その通りだ」

 父を持ち上げ、窓から放り投げた。
 
「なッ──貴様ァアアアア!!」

 最期に見えた父の表情は、憤怒に満ちていた。
 ……自分勝手な男だ。

「じゃあな。24時間後に死ね」

 ドサッという音。民衆の怒号。
 そのどちらもが、聞こえた。
 後のことは全て、民衆に任せよう。
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