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26話 仕返 1/2
それから数十分。
大会開催の挨拶や選手宣誓が終了し、俺は控え室にいた。
「スキルもよし、身体の調子も良し」
軽くストレッチをして、柔軟性を上げる。
ついでに炭酸抜き砂糖水と雑炊、バナナも摂取する。
「オイオイオイ」
「死ぬ気か、アイツ」
周りの出場者が茶化してくるが、意に介さない。
彼らはかわいそうなことに、無知なのだ。
「へぇ、炭酸抜き砂糖水ね。大したモノじゃない」
振り向くと、そこには茶髪の美少女。
「あ、ベル」
「炭酸抜き砂糖水はエネルギー効率が極めて高いから、迷宮攻略前に愛飲する冒険者もいるらしいわよね」
「よく知っているね」
「なんだ、絶好調じゃないの。そういえば、相手のことは知っているの?」
「まぁね、いとこだから」
「え、そうなの!? ……アンタの家系って、バケモノばかりなのね」
確かに言われてみると、その通りだ。
イリカも父も、いとこのハゲも全員が何かしらの異名を有している。
「で、勝算はあるの?」
「愚問だな」
勝算……しかない。
あんな奴相手に、負ける気がしない。
「ふふ、それならいいわ。圧勝してきてね」
「ああ。行ってくるよ」
「ふ、ふん! でも別に……応援なんかしてないんだからね!!」
「唐突なツンデレ」
少し呆れながら、俺はコロッセオに向かった。
……これが俺の、快進撃の始まりだ!
「……アルカ」
◆
「レディィイイイイイスエンジェントルメェエエエン! さぁ始まりました第20043回 剣魔武闘大会! 実況はワタクシ、キョウジ・ツ・タクシが! そして!!」
「解説はわたくし、セツ・カ・イオウが送ります」
「さぁ、ついに始まってしまいました第20043回 剣魔武闘大会! 季節は3月! まだまだ寒いというのに、試合場は熱気に包まれております」
「そうですね」
「今回の参加者は8名と例年通りかなり少ないですが、セツさんは誰が今回優勝すると思いますか?」
「わたくしは──」
「おっと! さっそく入場してきたのは!! 北門から入場! 身長190センチ! 体重120キロ! 誰が呼んだか『鈍く煌めく猛虎』!! サイワ・ル・ブレイブだ!!」
「……恥ずかしすぎるだろ」
サイワの入場口とは逆の入場口で待機しているが……あの紹介に震えざるを得ない。
実況に紹介されて入ってきたサイワは、嬉しそうに腕を上げてアピールしているが。
「……これ、本当に必要ですか? 俺、あんな紹介されたくないんですけれど」
大会のスタッフに質問とお願いをする。
「規則ですので。実況席の彼らも、あの紹介をしないと減給なのです」
「シビア」
極めて萎えていると、サイワを讃える観客達の歓声が聞こえてきた。
「ナイスバルク!」
「デカいよ! 圧がスゴい!!」
「腹筋ちぎりパンかよ!!」
「バリバリ筋肉ナンバーワン!!」
……なんだ、その歓声。
全部筋肉を讃える歓声なのだが。
「さぁ、アルカ様。出番ですよ」
「マジかぁ……でも、俺の筋肉はモヤシみたいな感じですよ?」
「大丈夫です、褒める専門のスタッフも紛れていますので」
「サクラを用意する必要あるか?」
いやいやながら、俺もコロッセオに向かう。
はぁ、気分が重い。
「続いて南門から入場! 身長163センチ! 体重42キロ! 実力ダークホースこと!! アルカ・ル・ファレトだ!!」
恥ずかしい説明を受け、トボトボとコロッセオの中心へと向かう。
「マジカルマッスル!!」
「ダーク筋肉みせてくれ!!」
「覚醒したらマッスルベルノー賞!」
「バリバリ暗黒ナンバーワン!!」
もはや意味がわからない。
褒めるところが見当たらないなら、褒めないで欲しい。
無理してまで褒められると、惨めになる。
「……はぁ」
「テメェ! 今から死ぬのに、ため息だなんて良い度胸だな!!」
「……気分下がるだろ。お前が相手な上、無理して褒められて」
「なら、観客の本音を聞いてみろ! 耳を澄ませ!!」
サクラが褒める時間が過ぎ、観客の本音が良く聞こえる。
……徹底的な誹謗中傷の声が。
「確かアイツって、ファレト公爵家の”劣等生”だよな?」
「聞いたことあるぜ。魔力数がたったの5しかないんだろ?」
「それに身体が病弱で、激しい運動も苦手だって聞いたぜ?」
「じゃあ、なんでアイツこの大会に来たんだ?」
「どうせ、貴族の道楽だろ? 思い出受験みたいなもんだ」
「なんだと!? 神聖な剣魔武術大会を……侮辱しやがって!!」
「カ・エ・レ!!」
「カ・エ・レ!!」
「カ・エ・レ!!」
そこから繰り広げられる、カエレコール。
慣れた物なので、別に気にはならない。
「で、でもよぉ。俺、この目でハッキリ見たぜ。天才って言われたあいつの兄、イリカを倒す姿を」
「た、確かに……俺もその噂は、聞いたことがあるぜ」
「でも、本当なのか? 賢者を越え、剣聖を凌駕したあのイリカ様だぜ?」
「わからねぇけど……でも、俺はアルカを応援しているぜ」
イリカとの決闘を観戦していた者や、俺がイリカに圧勝したという噂を聞いた者が俺に期待している。
だが、嬉しさは皆無だ。
彼らも以前は、イリカなどと同じく俺を侮蔑していた者。
いくら手の平返しをしても、恨みは消えるはずもない。
「それでわァアア!! 試合を開始します!!」
俺とサイワは指定位置に立つ。
サイワは棍棒を抜き取り、俺は手を広げる。
「素手か? 死にに来たのかよ」
「実力差がありすぎる場合、ハンデは必要だろ?」
「ナメんじゃねェ!! もう一度、ミミズを食わせてやるぜ!!」
「お前の才能を喰ってやるよ」
互いに煽り合い、魂を滾らせる。
「試合ィイイイ! 開始ィイイイイ!!」
刹那、試合が始まったと同時に────
────サイワが血を流した。
大会開催の挨拶や選手宣誓が終了し、俺は控え室にいた。
「スキルもよし、身体の調子も良し」
軽くストレッチをして、柔軟性を上げる。
ついでに炭酸抜き砂糖水と雑炊、バナナも摂取する。
「オイオイオイ」
「死ぬ気か、アイツ」
周りの出場者が茶化してくるが、意に介さない。
彼らはかわいそうなことに、無知なのだ。
「へぇ、炭酸抜き砂糖水ね。大したモノじゃない」
振り向くと、そこには茶髪の美少女。
「あ、ベル」
「炭酸抜き砂糖水はエネルギー効率が極めて高いから、迷宮攻略前に愛飲する冒険者もいるらしいわよね」
「よく知っているね」
「なんだ、絶好調じゃないの。そういえば、相手のことは知っているの?」
「まぁね、いとこだから」
「え、そうなの!? ……アンタの家系って、バケモノばかりなのね」
確かに言われてみると、その通りだ。
イリカも父も、いとこのハゲも全員が何かしらの異名を有している。
「で、勝算はあるの?」
「愚問だな」
勝算……しかない。
あんな奴相手に、負ける気がしない。
「ふふ、それならいいわ。圧勝してきてね」
「ああ。行ってくるよ」
「ふ、ふん! でも別に……応援なんかしてないんだからね!!」
「唐突なツンデレ」
少し呆れながら、俺はコロッセオに向かった。
……これが俺の、快進撃の始まりだ!
「……アルカ」
◆
「レディィイイイイイスエンジェントルメェエエエン! さぁ始まりました第20043回 剣魔武闘大会! 実況はワタクシ、キョウジ・ツ・タクシが! そして!!」
「解説はわたくし、セツ・カ・イオウが送ります」
「さぁ、ついに始まってしまいました第20043回 剣魔武闘大会! 季節は3月! まだまだ寒いというのに、試合場は熱気に包まれております」
「そうですね」
「今回の参加者は8名と例年通りかなり少ないですが、セツさんは誰が今回優勝すると思いますか?」
「わたくしは──」
「おっと! さっそく入場してきたのは!! 北門から入場! 身長190センチ! 体重120キロ! 誰が呼んだか『鈍く煌めく猛虎』!! サイワ・ル・ブレイブだ!!」
「……恥ずかしすぎるだろ」
サイワの入場口とは逆の入場口で待機しているが……あの紹介に震えざるを得ない。
実況に紹介されて入ってきたサイワは、嬉しそうに腕を上げてアピールしているが。
「……これ、本当に必要ですか? 俺、あんな紹介されたくないんですけれど」
大会のスタッフに質問とお願いをする。
「規則ですので。実況席の彼らも、あの紹介をしないと減給なのです」
「シビア」
極めて萎えていると、サイワを讃える観客達の歓声が聞こえてきた。
「ナイスバルク!」
「デカいよ! 圧がスゴい!!」
「腹筋ちぎりパンかよ!!」
「バリバリ筋肉ナンバーワン!!」
……なんだ、その歓声。
全部筋肉を讃える歓声なのだが。
「さぁ、アルカ様。出番ですよ」
「マジかぁ……でも、俺の筋肉はモヤシみたいな感じですよ?」
「大丈夫です、褒める専門のスタッフも紛れていますので」
「サクラを用意する必要あるか?」
いやいやながら、俺もコロッセオに向かう。
はぁ、気分が重い。
「続いて南門から入場! 身長163センチ! 体重42キロ! 実力ダークホースこと!! アルカ・ル・ファレトだ!!」
恥ずかしい説明を受け、トボトボとコロッセオの中心へと向かう。
「マジカルマッスル!!」
「ダーク筋肉みせてくれ!!」
「覚醒したらマッスルベルノー賞!」
「バリバリ暗黒ナンバーワン!!」
もはや意味がわからない。
褒めるところが見当たらないなら、褒めないで欲しい。
無理してまで褒められると、惨めになる。
「……はぁ」
「テメェ! 今から死ぬのに、ため息だなんて良い度胸だな!!」
「……気分下がるだろ。お前が相手な上、無理して褒められて」
「なら、観客の本音を聞いてみろ! 耳を澄ませ!!」
サクラが褒める時間が過ぎ、観客の本音が良く聞こえる。
……徹底的な誹謗中傷の声が。
「確かアイツって、ファレト公爵家の”劣等生”だよな?」
「聞いたことあるぜ。魔力数がたったの5しかないんだろ?」
「それに身体が病弱で、激しい運動も苦手だって聞いたぜ?」
「じゃあ、なんでアイツこの大会に来たんだ?」
「どうせ、貴族の道楽だろ? 思い出受験みたいなもんだ」
「なんだと!? 神聖な剣魔武術大会を……侮辱しやがって!!」
「カ・エ・レ!!」
「カ・エ・レ!!」
「カ・エ・レ!!」
そこから繰り広げられる、カエレコール。
慣れた物なので、別に気にはならない。
「で、でもよぉ。俺、この目でハッキリ見たぜ。天才って言われたあいつの兄、イリカを倒す姿を」
「た、確かに……俺もその噂は、聞いたことがあるぜ」
「でも、本当なのか? 賢者を越え、剣聖を凌駕したあのイリカ様だぜ?」
「わからねぇけど……でも、俺はアルカを応援しているぜ」
イリカとの決闘を観戦していた者や、俺がイリカに圧勝したという噂を聞いた者が俺に期待している。
だが、嬉しさは皆無だ。
彼らも以前は、イリカなどと同じく俺を侮蔑していた者。
いくら手の平返しをしても、恨みは消えるはずもない。
「それでわァアア!! 試合を開始します!!」
俺とサイワは指定位置に立つ。
サイワは棍棒を抜き取り、俺は手を広げる。
「素手か? 死にに来たのかよ」
「実力差がありすぎる場合、ハンデは必要だろ?」
「ナメんじゃねェ!! もう一度、ミミズを食わせてやるぜ!!」
「お前の才能を喰ってやるよ」
互いに煽り合い、魂を滾らせる。
「試合ィイイイ! 開始ィイイイイ!!」
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────サイワが血を流した。
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