お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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27話 仕返 2/2

「え! サイワが口から血を流しているわ!!」

「どうなっているんだ! あのモヤシも何かした様子はねェぞ!」

「おいおい、サイワしっかりしろ! 二日酔いか?」

「酒を飲みすぎて、胃袋が裂けただけだろ! お前の筋肉魂マッスルソウル見せてくれ!!」

 観客達は、見当違いな考察を続ける。
 当然ながら、胃袋に穴が開いたわけではなく、筋肉如きで解決できるわけもなく。

「ぐッ、ガハッ!!」

 眼球から、鼻から、耳から、口から。
 顔中の穴という穴から、血を流すサイワ。

「き、貴様……何をした!!」

「ただ応えるのも、つまらないだろ? だから……質問をしよう」

「ふざけるな! さっさと……ぐはッ!!」

「この世で一番強力な猛毒は、何だと思う?」

 腕を組み、質問を投げる。
 今の俺はきっと、良い表情をしているだろう。

「クソ……それに答えれば……これをやめてくれるのか!?」

「相手に状況の改善を懇願するだなんて、情けないな。だが、いいぞ。その毒を消してやる」

「わ、わかった……。考える……」

「早くしたほうが良いぞ? 頭がボーッとしてきただろ? 後数分で、あの世逝きだからな」

「うるさい! ちょっとは……ぐふッ! わ、わかった! ボツリヌス菌だ!!」

「お前、案外頭良いんだな。そんなの知っているだなんて」

「どうだ、正解だろ!!」

「残念、外れだ」

「な、なら! ノロウィルス! サリン! テトロドトキシン!!」

「全部違う」

「クソッ! さっさと……グフッ!! ガハッ!!」

 サイワの顔色が、どんどん青ざめていく。
 このまま衰弱していく姿を見るのもいいが……。

「このまま勝っても、映えないな」

 サイワにかけてあった“毒”を、解毒してやる。

「ぐ、ハァハァ……どういうつもりだ?」

「このままお前を倒しても、つまらないからな」

「……せっかくだ、正解を教えろ」

「答えは『酸素』だ。人間というのは不思議な生き物でな、酸素がなければ生きていられないのに、酸素が多すぎたり少なすぎたりすると、すぐに死んでしまうんだ」

「……酸素を操っただと? そんな魔術、聞いたことがないぞ!!」

「簡単なことだ。『風属性』の魔術さえ扱えれば、誰でもできる」

 イリカの取り巻きやムカつく同級生から数々の魔術を奪盗うばい、いくつかの風属性魔術を手に入れた。
 そして、風属性魔術を得た刹那、脳内に前世の記憶が流れた。
 それは風属性魔術を応用して、酸素を操っている様子。
 前世を思い出した俺は、【魔術スキル:酸素操作】を得たというわけだ。

「風も所詮は空気にすぎない。ならば、空気に含まれる成分を操れても、何らおかしくはないだろう?」

「だが、それは……賢者もできないほどの緻密なコントロールが必要なはずだろ!!」

「数千年も生きていれば、緻密なコントロールなど容易いことだ」

「訳わからんことを言うな!!」

 サイワは魔術を展開しようとしてくる。
 つまらない男だ。

奪盗術クリアネス

【汎用スキル:棍棒術を習得しました】
【特殊スキル:太陽閃光サンシャインを習得しました】
【魔術スキル:中級の岩槍ロックランスを習得しました】
【魔術スキル:上級の鉄壁アイアンウォールを習得しました】

「な、何……!? 何故、魔術がでない!!」

「俺が奪ったからな」

「何を言っている! 論理的に話せ!!」

「お前、見た目とは違って、相当頭良いだろう」

 魔術陣を展開する。
 先ほど、サイワから奪った魔術を。

「でも、頭が固い。ハゲだからか?」

「ハゲは関係ねェ!!」 

「ともかく、頭は良いがバカだな」

 ──《中級の岩槍ロックランス》発動。

「ぐ、ぐぁあああああ!!」

 岩槍が飛んでいき、サイワを突き刺す。
 腹部が完全に貫通しているが、サイワは倒れない。
 筋肉で痛覚を遮断しているのだろう。
 マッスルコントロールという奴だ。

「痛みはないだろうが、そのままでは出血多量で死ぬぞ。降参したらどうだ?」

「ふざけるな!! 何故オレの魔術を使える!! クソッ!!」

 サイワは再度、魔術を発動させようとする。
 だが、不発。

「何故だ!! 《中級の岩槍ロックランス》!! 《中級の岩槍ロックランス》!!」 

「無駄なことだ」

「クソッ!! どうなっている!!」

「棍棒を使うのはどうだ?」

「そうか! ……って、助言アドバイスしたこと後悔するなよ!」

 サイワは棍棒を持ち、俺に襲いかかろうとするが……。

「う、うぁあああああ!! お、重い!!」

 棍棒を持ち上げることができずに、棍棒の下敷きになった。

「え、ウソ! サイワ!! その筋肉は見せかけなの!?」

「なんだよ、棍棒くらい持ち上げて見せろ!!」

「お前、偽筋か?」

「偽りの筋肉で、俺たちを騙していたのか!!」

「見損なったぞ、ペテン師野郎!!」

 観客のブーイング。
 だが、棍棒の下敷きとなったサイワには聞こえていない。

「う、動けん!! どうなっている! 棍棒が重すぎる!!」

「お前の才能は、俺が奪ったからな」

「何を言っている! 意味がわからん!!」

「自分の理解の範疇を超えると、思考を停止する。知識はあるが知能はないな」

「適当なことを抜かすな!! オレは賢い! イリカにはない頭脳を持って、アイツを補ってきた! それなのに……お前が!!」

「はいはい、そうだな」

 サイワを押しつぶす棍棒を持ち上げる。

「お、おい!! どうなっているんだ!!」

「あの華奢な身体に、あの棍棒を持ち上げる筋肉があっただと!!」

「ふぉっふぉふぉ、ワシは最初から見抜いて追ったよ」

「長老!!」

「あれは姿無き筋肉ステルスマッスルじゃ」

「ま、まさか……彼にも筋肉の遺伝子が流れているのか!!」

 そんな物、流れていない。
 観客達は、適当なことを言わないで欲しい。

「な、なんだ……? 助けたつもりか? それに……お前の華奢な肉体のどこに、棍棒を持ち上げる膂力パワーがある!?」

「お前、ミミズは好きか?」

「嫌いに決まっているだろ! テメェにミミズを食わせたのは、人間がミミズを食えばどうなるか知りたかったからだ!!」

「そうか。クズ野郎め」

 棍棒を振り翳す。

「ま、待て! その棍棒は10トンある! オレの筋肉があっても耐えられる自信はねェ!!」

「ミミズの気持ちを知るチャンスをやるよ」

 グチャっという音と共に、サイワは地面に深く突き刺さった。
 トンカチに叩かれた釘のように、直立で深々と。

「地面に刺さって、ミミズのことを一層知れただろ。感謝しろ」

 棍棒を放り投げ、俺はコロッセオを後にした。



「素晴らしい決闘! 見たことのない魔術の攻防! 勝者は!! アルカ選手だァアアアアアアア!!」

 
「スゴかったぜ!! アルカ!!」

「俺、見直したぜ!! 筋肉じゃどうにもならないこともあるんだな!!」

「ナッシングマッスルでも、勝てるんだな!!」

「ナイスファイト!!」

「見えないが、筋肉を感じたぞ!!」

 観客の謎の筋肉コール。
 こいつら、何故そこまで筋肉推しなんだ?
 それに……こいつらも手の平クルクルかよ。

「なんか、釈然としないな」

 モヤッとした気持ちが、俺の心に渦巻いた。
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