27 / 29
24話 インタビューにて
しおりを挟む
その後、迷宮から帰還した俺たちは、カイトたちの元へと訪れた。
カイト達にはテノールが既に死んでいたと伝え、テノールの装備品を形見として渡した。
その時、カイト達は悲しげな表情をしていたが、俺にはそれが演技であることがすぐにわかった。
あれから数日後、俺たちはとある豪華な建物の一室にいる。
カイト達は約束通り、インタビューで俺たちを呼んだのだ。
しかし、こんな豪華な建物でインタビューを受けるなんて……腹が立つな。
「アルガ、時間よ」
「さぁ、行きましょう」
「あぁ、そうだな」
俺たちはインタビュー室へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「──と、いうわけでディシート迷宮に挑んだんですけれど、……あ、来ましたね」
俺たちがインタビュー室にやってくると、既にインタビューは始まっていたようだ。
カイト、ケン、ネルカが豪華な赤い椅子にふんぞり返っている。
そんな彼らにインタビューをしているのは、黒いスーツを纏った記者。
彼女の後ろには、カイト達の言葉を一言一句ノートに写している記者もいる。
「あの、こちらの方は……?」
と、疑問をぶつける記者。
なんだ、事前に俺たちが訪れることを伝えていないのか?
「えぇ、紹介します。ディシート迷宮で敗北を喫した俺たちを、救ってくれたアルガさん達です!!」
別にお前たちを救ったわけではないのだがな。
「アルガ……あぁ、獣人と追放聖女をパーティに加えている、変人パーティ達ですよね? え、こんな人たちが、カイトさん達を救ったんですか?」
なんて口の悪い記者なんだ。
俺たちの実力も知らない分際で蔑みやがって、これだからマスゴミは嫌いなんだ。
「えぇ、まだ話の途中でしたけれど……実は俺たち、ディシート迷宮で敗北したんですよ」
「は、敗北ですか!? 今を時めく、あのカイトパーティが!?」
「ディシート迷宮のボスはミノタウロスの特殊個体でした。通常個体なら何とか勝てたでしょうが、特殊個体になると……やはり勝利は難しかったです」
「なるほど……あ、そういえばさっきから気になってはいたんですが、テノールさんはどこにいるんですか?」
「実は……テノールは死んでしまいました」
「え、えぇえええええええええええ!!」
「ディシート迷宮のミノタウロスに、殺されてしまったんです」
よくもそんなウソを吐けるな。
自分たちが捨てたというのに、本当に腐った連中だ。
「こ、こ、殺された……んですか?」
「はい。本当なら俺たちの手で復習したかったんですが、残念なことに俺たちではミノタウロスには手も足も出ませんでした。そこで復讐の代行を募集したんです」
「代わりにミノタウロスを倒してくれる、自分たちの復讐を代行してくれる人を募集したんですね」
「えぇ、その復讐代行が……このアルガさん達です」
「え、アルガ……さんたちが?」
おい、今呼びすてにしようとしただろ。
それになんだ、その疑うような眼差しは。
人を見かけや世間の評価で判断するなよ。
記者だったら、公平に判断しろ。
「アルガさん達はスゴイですよ!! なんでも、あのミノタウロスを一撃で討伐したらしいです!!」
「カイトさん達が手も足もでなかった、あのミノタウロスをですか!? それが本当なら……スゴイ話ですけれど……」
……気分が悪いな。
ピリカは露骨に眉間にシワを寄せている。
ラブリに至っては、今にも噛みつきそうな雰囲気だ。
「そんなスゴイアルガさんを……今日、この場を借りて勧誘しようと思います!!」
「お、おぉ!!」
「……はぁ」
どうせ、そんなことを言うとは思っていた。
カイトはズル賢いから、断りにくいこういう場で勧誘をしてくるのだ。
今回のインタビューでも、絶対に勧誘をしてくることは予見していた。
「アルガさん、アナタがテノールの友人であることは聞いています。魔法学院時代にテノールと競い合い、互いを高めあったライバル同士だったのでしょう?」
「……で?」
「テノールも苦しかったでしょう、悔しかったことでしょう!! もっと強く、もっと高みへとたどり着きたかったでしょう!! アルガさん!! そんなテノールの想いを、引き継ぎませんか!!」
「……はぁ」
「改めて言いましょう!! アルガさん!! 俺たちのパーティに加入してください!! テノールの想いを、受け継ぎましょう!!」
なんというか……滑稽だな。
テノールうんぬんなど、微塵も思っていないだろう。
カイトが考えていることは、テノールがいなくなったことの穴埋めだ。
テノールと同じく魔法職であり、尚且つテノールよりも強い俺のことを、どうしても仲間に引き入れたいのだろう。
……度し難いな。もう、救えないな。
「……カイト」
「はい!! で、お返事は!!」
「返事の前に、カイトに話がある人がいるんだ」
「……え?」
「入ってくれ」
と、俺は扉の前にいる人物に入室を許可する。
扉が開き、そこにいたのは──
「……は?」
「やぁ、カイト」
──テノールだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺はテノールを救出した際に、1つ命令を下した。
それは、本日のインタビューで真実を話すこと。
テノールはそれを了承し、本日やってきたという訳だ。
「て、テノール!! なんでテメェがこんなところにいるんだ!?」
「そうよ!! アンタは……死んだハズでしょ!!」
「そ、そうだ!! お前は……ミノタウロスに殺されたハズだ!!」
と、慌てふためくカイト達。
死者が現れたのだから、その反応も当然だ。
「……記者さん、俺の話を聞いてもらえますか?」
「あ、え、あぁ……。え、えっと……アナタは本当にテノールさん……ですか?」
「えぇ、僕はテノール・ヴァルガス。種族はエルフで得意魔法は火炎魔法、女神歴2022年に魔法学院を首席で卒業したテノールです。疑わしいのでしたら、他にも個人情報を話しましょうか?」
「い、いえ、だ、大丈夫です……。ですが、ど、どうして……この場に? あ、あなたは……死んだハズでは?」
「見ての通り、ピンピンしていますよ。ですが……死んだ方が彼らにとっては、都合がよかったのでしょう」
テノールはカイト達を、睨みつけた。
「記者さん、僕の話を聞いてくれますか?」
「え、あ、は、はい」
そして、テノールは語りだそうとするが──
「て、テノール!! 余計なことは言うなよ!!」
「そ、そうだ!! テメェ、殺してやるぞ!!」
「貴方、わかっていますわよね!!」
当然のように、カイト達はそれを妨害しようとしてくる。
真実が語られれば、カイト達の評判は著しく下がってしまうからな。
「《最上級の沈黙》《最上級の光束輪》」
「「「……!!」」」
だが、そんな彼らは俺の支援魔法で黙らせる。
今回だけは、テノールの味方だ。
「それでは記者さん、僕の……真実を聞いてください」
そこからテノールは、真実を語り始めた。
ディシート迷宮で捨てられたこと。
生死を彷徨い、助けを求め続けていたこと。
そんな中、自分を助けてくれたのは俺たちだということ。
カイト達は自分の死を望んでいて、自分の装備だけを回収したがっていたこと。
その他、様々なことを語っていく。
闇賭博への参加や、違法魔道具の密売を行っていること。
これまでに幾人もの冒険者を勧誘し、無能と判断した段階で解雇を繰り返していること。
裏の依頼で殺人などの犯罪を、いくつも請け負っていたこと。
カイト達の情報を、数々流していく。
記者はテノールが話すたびに、愕然とした表情になる。
「──以上が、僕の知る真実です」
テノールが語り終えると、室内にはシーンと静まり返る。
テノールの語った全てが、あまりにも衝撃的過ぎたのだろう。
「……な、なるほど……ですが、ニワカには信じられないですね」
「ですが、全て真実です。特に解雇された被害者は、この場にもいますよ?」
「……え?」
テノールはニコッと、俺に微笑む。
バトンタッチという訳だな。
「その被害者の1人が俺です」
「もう1人が私よ」
ズイッと、俺たちは前に出た。
記者はビクッとしたが、マスゴミに配慮する必要はない。
「ひ、被害者……ですか?」
「えぇ、俺たちはカイト達に追放されました」
「こいつの都合で勧誘されて、不要だからって捨てられたのよ」
「な、なるほど……ちなみに追放された被害者って……まだいますか?」
「えぇ、何人もいるハズよ」
「カイト達は優秀な冒険者には、片っ端から勧誘していたので恐らく……最低でも10人はいると思いますよ」
実際、正史では現時点でも十数人は被害にあっていた。
追放された彼らに会うことはなかったが、恐らく……酷い人生を送ったことだろう。
そんな彼らの為にも、ここでカイト達の真実を語る必要がある。
これから生まれるかもしれない被害者の為にも、ここで真実を語る必要がある。
「なるほど……それは……言葉が出ませんね。あまりにも……凄惨ですね」
「えぇ、彼らは人畜無害な表情をした、ただの悪魔です。一刻も早く、彼らの冒険者の称号を剥奪すべきだと思いますよ」
「ホント、コイツ等って救えないわ。自分たちもそれほど優秀ではないのに、それを棚に上げて他の人には無能のレッテルを張り付けるんだから」
「それはひどい話ですね……」
よし、こんなものでいいだろう。
このインタビューが世間に広まれば、カイト達は終わるからな。
「それでは言いたいことは全部言い終わりましたので、俺たちはここでお暇します」
「え、そうですか……? もしよければ、もっとお話をお聞かせ願いませんか?」
「続きは本人たちから聞いてください」
俺はカイト達にかけた魔法を解く。
「あ、アルガ!! て、て、テノール!! な、何を言っているんだ!!」
「そ、そうだぜェ!! お、俺たちが、そ、そ、そんなこと、す、す、するハズないだろ!!」
「そ、そ、そ、そうですわ!! う、ウソを吐くのも、や、や、やめて欲しいですわね!!」
「動揺しすぎだぞ」
態度で答えを表している彼らを冷笑しながら、俺たちは部屋を後にした。
「アルガ!! お前は絶対に……許さないからな!!」
「テノール!! テメェは必ず……殺してやる!! ウソ吐き野郎!!」
「ラブリ!! 獣人の女!! あることないこと言って、卑怯者ですわよ!!」
後ろからは、醜い抗議の声が響いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後、俺たちは建物の入り口までやってきた。
「ありがとうアルガ、僕の……言いたいことを言わせてくれて」
「感謝は良い。それよりもカネを出せ」
「う、うん……あと、これも貰ってくれるかい?」
テノールは金貨数十枚と自身の装備を渡してきた。
「『ホワイトスパイダーのコート』と『水龍の杖』か」
「それは僕の最強装備だ。是非キミに使ってほしくてね」
「そうか、だが俺には不要だ」
『ホワイトスパイダーのコート』を破り捨て、『水龍の杖』を握り折る。
テノールは一瞬驚愕の表情を浮かべたが、すぐさま元の疲れきった表情に戻った。
「お前の施しなど、必要ない。俺はお前とは違って、強いからな」
「そうか……それなら仕方ないね。……ねぇ、アルガ。実は僕……冒険者を引退しようと思っているんだ」
「ほぉ?」
だろうな、と思った。
心が折れたテノールは、引退するだろうと予想していたからな。
「僕はもう……これ以上は──」
「──それ以上は続けるな。お前の理由なんて、どうでもいい」
長くなりそうなので、遮る。
テノールの独白など、誰も聞きたくない。
「そうだね……うん、ごめん」
「用は済んだか? さっさと失せろ」
「うん……じゃあね、アルガ。これまで……ごめんね」
「謝罪をしてスッキリするのは、自分だけだぞ。俺は一生、お前を許さないからな」
「うん……でも、ごめんね」
そうして、テノールはトボトボと去っていった。
彼の背中は異様に小さく、情けなく見えた。
「……いいの? あのまま帰らせて」
「一生癒えない傷を負わせないんですか? あの人って、アルガさんが恨んでいた人ですよね?」
「あぁ、構わない。既に一生癒えない傷は与えたからな」
テノールは今後、無様な一生を送ることだろう。
拠り所にしていたパーティに見捨てられ、俺という見下していた存在に敗北した。
プライドの高いテノールには、あまりにも大きな傷だ。
与えられた傷は今後一生、癒えないだろう。
「……ざまぁみろ」
小さくなるテノールの背中に、俺は小さく呟いた。
カイト達にはテノールが既に死んでいたと伝え、テノールの装備品を形見として渡した。
その時、カイト達は悲しげな表情をしていたが、俺にはそれが演技であることがすぐにわかった。
あれから数日後、俺たちはとある豪華な建物の一室にいる。
カイト達は約束通り、インタビューで俺たちを呼んだのだ。
しかし、こんな豪華な建物でインタビューを受けるなんて……腹が立つな。
「アルガ、時間よ」
「さぁ、行きましょう」
「あぁ、そうだな」
俺たちはインタビュー室へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「──と、いうわけでディシート迷宮に挑んだんですけれど、……あ、来ましたね」
俺たちがインタビュー室にやってくると、既にインタビューは始まっていたようだ。
カイト、ケン、ネルカが豪華な赤い椅子にふんぞり返っている。
そんな彼らにインタビューをしているのは、黒いスーツを纏った記者。
彼女の後ろには、カイト達の言葉を一言一句ノートに写している記者もいる。
「あの、こちらの方は……?」
と、疑問をぶつける記者。
なんだ、事前に俺たちが訪れることを伝えていないのか?
「えぇ、紹介します。ディシート迷宮で敗北を喫した俺たちを、救ってくれたアルガさん達です!!」
別にお前たちを救ったわけではないのだがな。
「アルガ……あぁ、獣人と追放聖女をパーティに加えている、変人パーティ達ですよね? え、こんな人たちが、カイトさん達を救ったんですか?」
なんて口の悪い記者なんだ。
俺たちの実力も知らない分際で蔑みやがって、これだからマスゴミは嫌いなんだ。
「えぇ、まだ話の途中でしたけれど……実は俺たち、ディシート迷宮で敗北したんですよ」
「は、敗北ですか!? 今を時めく、あのカイトパーティが!?」
「ディシート迷宮のボスはミノタウロスの特殊個体でした。通常個体なら何とか勝てたでしょうが、特殊個体になると……やはり勝利は難しかったです」
「なるほど……あ、そういえばさっきから気になってはいたんですが、テノールさんはどこにいるんですか?」
「実は……テノールは死んでしまいました」
「え、えぇえええええええええええ!!」
「ディシート迷宮のミノタウロスに、殺されてしまったんです」
よくもそんなウソを吐けるな。
自分たちが捨てたというのに、本当に腐った連中だ。
「こ、こ、殺された……んですか?」
「はい。本当なら俺たちの手で復習したかったんですが、残念なことに俺たちではミノタウロスには手も足も出ませんでした。そこで復讐の代行を募集したんです」
「代わりにミノタウロスを倒してくれる、自分たちの復讐を代行してくれる人を募集したんですね」
「えぇ、その復讐代行が……このアルガさん達です」
「え、アルガ……さんたちが?」
おい、今呼びすてにしようとしただろ。
それになんだ、その疑うような眼差しは。
人を見かけや世間の評価で判断するなよ。
記者だったら、公平に判断しろ。
「アルガさん達はスゴイですよ!! なんでも、あのミノタウロスを一撃で討伐したらしいです!!」
「カイトさん達が手も足もでなかった、あのミノタウロスをですか!? それが本当なら……スゴイ話ですけれど……」
……気分が悪いな。
ピリカは露骨に眉間にシワを寄せている。
ラブリに至っては、今にも噛みつきそうな雰囲気だ。
「そんなスゴイアルガさんを……今日、この場を借りて勧誘しようと思います!!」
「お、おぉ!!」
「……はぁ」
どうせ、そんなことを言うとは思っていた。
カイトはズル賢いから、断りにくいこういう場で勧誘をしてくるのだ。
今回のインタビューでも、絶対に勧誘をしてくることは予見していた。
「アルガさん、アナタがテノールの友人であることは聞いています。魔法学院時代にテノールと競い合い、互いを高めあったライバル同士だったのでしょう?」
「……で?」
「テノールも苦しかったでしょう、悔しかったことでしょう!! もっと強く、もっと高みへとたどり着きたかったでしょう!! アルガさん!! そんなテノールの想いを、引き継ぎませんか!!」
「……はぁ」
「改めて言いましょう!! アルガさん!! 俺たちのパーティに加入してください!! テノールの想いを、受け継ぎましょう!!」
なんというか……滑稽だな。
テノールうんぬんなど、微塵も思っていないだろう。
カイトが考えていることは、テノールがいなくなったことの穴埋めだ。
テノールと同じく魔法職であり、尚且つテノールよりも強い俺のことを、どうしても仲間に引き入れたいのだろう。
……度し難いな。もう、救えないな。
「……カイト」
「はい!! で、お返事は!!」
「返事の前に、カイトに話がある人がいるんだ」
「……え?」
「入ってくれ」
と、俺は扉の前にいる人物に入室を許可する。
扉が開き、そこにいたのは──
「……は?」
「やぁ、カイト」
──テノールだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺はテノールを救出した際に、1つ命令を下した。
それは、本日のインタビューで真実を話すこと。
テノールはそれを了承し、本日やってきたという訳だ。
「て、テノール!! なんでテメェがこんなところにいるんだ!?」
「そうよ!! アンタは……死んだハズでしょ!!」
「そ、そうだ!! お前は……ミノタウロスに殺されたハズだ!!」
と、慌てふためくカイト達。
死者が現れたのだから、その反応も当然だ。
「……記者さん、俺の話を聞いてもらえますか?」
「あ、え、あぁ……。え、えっと……アナタは本当にテノールさん……ですか?」
「えぇ、僕はテノール・ヴァルガス。種族はエルフで得意魔法は火炎魔法、女神歴2022年に魔法学院を首席で卒業したテノールです。疑わしいのでしたら、他にも個人情報を話しましょうか?」
「い、いえ、だ、大丈夫です……。ですが、ど、どうして……この場に? あ、あなたは……死んだハズでは?」
「見ての通り、ピンピンしていますよ。ですが……死んだ方が彼らにとっては、都合がよかったのでしょう」
テノールはカイト達を、睨みつけた。
「記者さん、僕の話を聞いてくれますか?」
「え、あ、は、はい」
そして、テノールは語りだそうとするが──
「て、テノール!! 余計なことは言うなよ!!」
「そ、そうだ!! テメェ、殺してやるぞ!!」
「貴方、わかっていますわよね!!」
当然のように、カイト達はそれを妨害しようとしてくる。
真実が語られれば、カイト達の評判は著しく下がってしまうからな。
「《最上級の沈黙》《最上級の光束輪》」
「「「……!!」」」
だが、そんな彼らは俺の支援魔法で黙らせる。
今回だけは、テノールの味方だ。
「それでは記者さん、僕の……真実を聞いてください」
そこからテノールは、真実を語り始めた。
ディシート迷宮で捨てられたこと。
生死を彷徨い、助けを求め続けていたこと。
そんな中、自分を助けてくれたのは俺たちだということ。
カイト達は自分の死を望んでいて、自分の装備だけを回収したがっていたこと。
その他、様々なことを語っていく。
闇賭博への参加や、違法魔道具の密売を行っていること。
これまでに幾人もの冒険者を勧誘し、無能と判断した段階で解雇を繰り返していること。
裏の依頼で殺人などの犯罪を、いくつも請け負っていたこと。
カイト達の情報を、数々流していく。
記者はテノールが話すたびに、愕然とした表情になる。
「──以上が、僕の知る真実です」
テノールが語り終えると、室内にはシーンと静まり返る。
テノールの語った全てが、あまりにも衝撃的過ぎたのだろう。
「……な、なるほど……ですが、ニワカには信じられないですね」
「ですが、全て真実です。特に解雇された被害者は、この場にもいますよ?」
「……え?」
テノールはニコッと、俺に微笑む。
バトンタッチという訳だな。
「その被害者の1人が俺です」
「もう1人が私よ」
ズイッと、俺たちは前に出た。
記者はビクッとしたが、マスゴミに配慮する必要はない。
「ひ、被害者……ですか?」
「えぇ、俺たちはカイト達に追放されました」
「こいつの都合で勧誘されて、不要だからって捨てられたのよ」
「な、なるほど……ちなみに追放された被害者って……まだいますか?」
「えぇ、何人もいるハズよ」
「カイト達は優秀な冒険者には、片っ端から勧誘していたので恐らく……最低でも10人はいると思いますよ」
実際、正史では現時点でも十数人は被害にあっていた。
追放された彼らに会うことはなかったが、恐らく……酷い人生を送ったことだろう。
そんな彼らの為にも、ここでカイト達の真実を語る必要がある。
これから生まれるかもしれない被害者の為にも、ここで真実を語る必要がある。
「なるほど……それは……言葉が出ませんね。あまりにも……凄惨ですね」
「えぇ、彼らは人畜無害な表情をした、ただの悪魔です。一刻も早く、彼らの冒険者の称号を剥奪すべきだと思いますよ」
「ホント、コイツ等って救えないわ。自分たちもそれほど優秀ではないのに、それを棚に上げて他の人には無能のレッテルを張り付けるんだから」
「それはひどい話ですね……」
よし、こんなものでいいだろう。
このインタビューが世間に広まれば、カイト達は終わるからな。
「それでは言いたいことは全部言い終わりましたので、俺たちはここでお暇します」
「え、そうですか……? もしよければ、もっとお話をお聞かせ願いませんか?」
「続きは本人たちから聞いてください」
俺はカイト達にかけた魔法を解く。
「あ、アルガ!! て、て、テノール!! な、何を言っているんだ!!」
「そ、そうだぜェ!! お、俺たちが、そ、そ、そんなこと、す、す、するハズないだろ!!」
「そ、そ、そ、そうですわ!! う、ウソを吐くのも、や、や、やめて欲しいですわね!!」
「動揺しすぎだぞ」
態度で答えを表している彼らを冷笑しながら、俺たちは部屋を後にした。
「アルガ!! お前は絶対に……許さないからな!!」
「テノール!! テメェは必ず……殺してやる!! ウソ吐き野郎!!」
「ラブリ!! 獣人の女!! あることないこと言って、卑怯者ですわよ!!」
後ろからは、醜い抗議の声が響いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後、俺たちは建物の入り口までやってきた。
「ありがとうアルガ、僕の……言いたいことを言わせてくれて」
「感謝は良い。それよりもカネを出せ」
「う、うん……あと、これも貰ってくれるかい?」
テノールは金貨数十枚と自身の装備を渡してきた。
「『ホワイトスパイダーのコート』と『水龍の杖』か」
「それは僕の最強装備だ。是非キミに使ってほしくてね」
「そうか、だが俺には不要だ」
『ホワイトスパイダーのコート』を破り捨て、『水龍の杖』を握り折る。
テノールは一瞬驚愕の表情を浮かべたが、すぐさま元の疲れきった表情に戻った。
「お前の施しなど、必要ない。俺はお前とは違って、強いからな」
「そうか……それなら仕方ないね。……ねぇ、アルガ。実は僕……冒険者を引退しようと思っているんだ」
「ほぉ?」
だろうな、と思った。
心が折れたテノールは、引退するだろうと予想していたからな。
「僕はもう……これ以上は──」
「──それ以上は続けるな。お前の理由なんて、どうでもいい」
長くなりそうなので、遮る。
テノールの独白など、誰も聞きたくない。
「そうだね……うん、ごめん」
「用は済んだか? さっさと失せろ」
「うん……じゃあね、アルガ。これまで……ごめんね」
「謝罪をしてスッキリするのは、自分だけだぞ。俺は一生、お前を許さないからな」
「うん……でも、ごめんね」
そうして、テノールはトボトボと去っていった。
彼の背中は異様に小さく、情けなく見えた。
「……いいの? あのまま帰らせて」
「一生癒えない傷を負わせないんですか? あの人って、アルガさんが恨んでいた人ですよね?」
「あぁ、構わない。既に一生癒えない傷は与えたからな」
テノールは今後、無様な一生を送ることだろう。
拠り所にしていたパーティに見捨てられ、俺という見下していた存在に敗北した。
プライドの高いテノールには、あまりにも大きな傷だ。
与えられた傷は今後一生、癒えないだろう。
「……ざまぁみろ」
小さくなるテノールの背中に、俺は小さく呟いた。
1
あなたにおすすめの小説
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます
長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました
★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★
★現在4巻まで絶賛発売中!★
「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」
苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。
トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが――
俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ?
※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる