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第三章──礼(うやまい)の尊き僧侶、静かなる教え
28話
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「清さま、も少しゆるりとお歩みあそばされませぬか?」
根子が寄り添いながら心配そうな顔をする。
「案ずるな……もとより、痛みを覚ゆることもなし……血の滲むこともあらず……礼申すぞ、根子よ……」
「されど……」
清は大丈夫と言い、根子を嗜める。
「おいらとて、清さまを案じておるのだ……今もこうして、歩幅を合わせておるゆえな」
根音が根子の気遣いが気に入らないのか口を挟む。
「相も変わらずガキじゃ……根音は……まったく」
やれやれと言った表情を浮かべる根子。
「跳ねっ返りのくせして、何を猫かぶりいたしておる」
いつものように根音が応戦する。
「こら、二人ともやめよ……根音、常より礼を申すぞ」
根音の頭に手を置き、優しく撫でる。撫でられると根音はおとなしくなった。
灰音郷の出来事から数日が経っていた。静と対峙した時の清の表情を思い浮かべると、今の清の柔らかさは想像できない。これも『花切ノ契』の力かと二人は肩を落とした。もし契りを交わさなければ寄り添う道はあったのかと二人は口に出さずとも共通する想いだった。
その時、不穏な声が三人に聞こえる。
「さて……そのような歩みで、追い付け申すかのう?」
それは、根音の影から声がする。
「な、何じゃと?」
根音が立ち止まり自身の影を見る。見ると影がゆらゆらと動き、そこからぬるりと人の姿が現れる。
「そ、そなたは花傀儡の花徒影か!? いかにしてここへ……」
清が叫ぶ。
身体をゆらゆらと動かしながらぬめり、陽に照らされると青く輝くような衣を羽織り、じっとりとした表情で清を見つめる。
「その生温き心持ちにて、静さまを仕舞わんと申すか……なるほど、静さまがそなたをでき損ないと呼ばれるも道理……されど、急がれよ……盲目の僧のもとには、すでに静さまがお着きあそばしておる……時すでに遅しか……今ごろは『傲』に堕ちておられるやもしれぬ……くくくっ……くくくっ……」
花徒影はそう言い残すとまた影になり、するするっとあらゆる影に入り込み姿をくらました。
「根音、根子……急ぎ案内せよ……また姉さまが立ち塞がるゆえ……」
先程まで穏やかだった清の表情が憎悪で一変する。
「心得ましてございます」
根子が返事をする。根子と根音は二人の憎悪は避けられない運命なのだとさらに悟り、清を盲目の僧侶の元まで急ぎ案内することを決意した。
「急がねばならぬ……相も変わらず下劣なる姉さまよ……一体何を企むおつもりか……姉さま……」
身体の奥底から沸き立つものがある。血は滲まぬが、それよりも確かなもの──憎悪がこの身に刻まれ、清は急ぎながらその想いを一層膨らませた
根子が寄り添いながら心配そうな顔をする。
「案ずるな……もとより、痛みを覚ゆることもなし……血の滲むこともあらず……礼申すぞ、根子よ……」
「されど……」
清は大丈夫と言い、根子を嗜める。
「おいらとて、清さまを案じておるのだ……今もこうして、歩幅を合わせておるゆえな」
根音が根子の気遣いが気に入らないのか口を挟む。
「相も変わらずガキじゃ……根音は……まったく」
やれやれと言った表情を浮かべる根子。
「跳ねっ返りのくせして、何を猫かぶりいたしておる」
いつものように根音が応戦する。
「こら、二人ともやめよ……根音、常より礼を申すぞ」
根音の頭に手を置き、優しく撫でる。撫でられると根音はおとなしくなった。
灰音郷の出来事から数日が経っていた。静と対峙した時の清の表情を思い浮かべると、今の清の柔らかさは想像できない。これも『花切ノ契』の力かと二人は肩を落とした。もし契りを交わさなければ寄り添う道はあったのかと二人は口に出さずとも共通する想いだった。
その時、不穏な声が三人に聞こえる。
「さて……そのような歩みで、追い付け申すかのう?」
それは、根音の影から声がする。
「な、何じゃと?」
根音が立ち止まり自身の影を見る。見ると影がゆらゆらと動き、そこからぬるりと人の姿が現れる。
「そ、そなたは花傀儡の花徒影か!? いかにしてここへ……」
清が叫ぶ。
身体をゆらゆらと動かしながらぬめり、陽に照らされると青く輝くような衣を羽織り、じっとりとした表情で清を見つめる。
「その生温き心持ちにて、静さまを仕舞わんと申すか……なるほど、静さまがそなたをでき損ないと呼ばれるも道理……されど、急がれよ……盲目の僧のもとには、すでに静さまがお着きあそばしておる……時すでに遅しか……今ごろは『傲』に堕ちておられるやもしれぬ……くくくっ……くくくっ……」
花徒影はそう言い残すとまた影になり、するするっとあらゆる影に入り込み姿をくらました。
「根音、根子……急ぎ案内せよ……また姉さまが立ち塞がるゆえ……」
先程まで穏やかだった清の表情が憎悪で一変する。
「心得ましてございます」
根子が返事をする。根子と根音は二人の憎悪は避けられない運命なのだとさらに悟り、清を盲目の僧侶の元まで急ぎ案内することを決意した。
「急がねばならぬ……相も変わらず下劣なる姉さまよ……一体何を企むおつもりか……姉さま……」
身体の奥底から沸き立つものがある。血は滲まぬが、それよりも確かなもの──憎悪がこの身に刻まれ、清は急ぎながらその想いを一層膨らませた
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