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第三章──礼(うやまい)の尊き僧侶、静かなる教え
36話
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瓦礫が積もった後……
カラカラカラッ……
小石溢れる。
そして瓦礫が弾けると花天照をはじめ、八人の花護人が清を庇うように護っていた。
「清さま……」
ツゥ──ポトリッ……ツゥ──ポトリ……
根子が言葉をかけようとしたが、ぎょっとする。屋根を支えて崩れた垂木が一本、清の胸をぐさりと貫いていた。赤い雫が垂木を伝わり、ポトリ、ポトリと雫を垂らす。
「清さま……御胸に……御胸に──!」
根音が叫ぶ。掠れた声で清が囁く。
「案ずるな……そなたらがおるゆえ……痛みは覚えぬ……そ、それより零闇殿は如何に……」
「あちらに……清さま……見事にてござります……無事、仕舞い終えられ申した……」
「左様か……良う……ござった……」
涙ながらに根子が清に声をかける。
「清さま……舞の最中、零闇殿よりこれを託され申した……」
「これは……何ゆえ……?」
いくつもの鮮やかな花で飾られた髪飾り……。
「これは時留の花飾りにてございまする……」
花天照が答えた。
「時留の花飾り……? 何ゆえ零闇殿は……」
「それよりも清さま……この花飾りには零闇殿の御想い、なお残りおり申す……無理は承知……急ぎ花文を……」
花天照が囁いた。
「左様か……ならば、届け──花文──!」
振り絞る力で清が花文を唱える。色鮮やかな花々をあしらった光が零闇の想いの籠る花飾りに届き、それに応えるが如く光が清の心に返ってきた。
──十四の心に従え……その時、望む心ひらかれん……それが吉か凶かは己が心にて定むるべし……我が『礼』、そなたに託さん───
言葉と一緒に零闇の『礼』の徳が清の心に吸い込まれた。
「清さま……零闇殿の御想い、確かに芽吹き申した! 届きましたぞっ……」
耳元で花天照が囁いた
「そうか……良きかな……案ずるな……我はいまだ果てぬ……我が願い、これよりぞ……」
がくりと頭を垂れ、意識を失う清。
「「清さま──」」
根音と根子が叫ぶ──。その声が木霊して成り行きを見届ける者に届いた。
「相も変わらず……よのう……」
静が呟く。
「行くぞ……花化従……」
そう言い残すと振り返りその場を去ろうとした。しかし……足がもつれる。
「がはっ──」
静は吐血し大量の血が地面に滴る。そこに広がるは深く赤い血溜まり。
「静さま──大丈夫でありんすか!?」
花化従が静を抱える。
「心配無用……されど、ちと堪えた……今一度ばかり、休ませてもらおうぞ……」
静は目を瞑る。
「──花雫……いでませ……涙雫の衣を以て静さまを包み……護り奉れ……」
花雫が現れ、涙雫の衣を静に纏わせる。
花化従は振り返り、キッと瓦礫に包まれ崩れた本堂の側で横たわる清を遠くから睨んだ。
「よもや……ここまでとは……でき損ないの身にて……静さまを何と心得るか……」
花化従の美しい顔は歪み、清に対して怒りを滲ませていた。
──第三章 終幕──
瓦礫が積もった後……
カラカラカラッ……
小石溢れる。
そして瓦礫が弾けると花天照をはじめ、八人の花護人が清を庇うように護っていた。
「清さま……」
ツゥ──ポトリッ……ツゥ──ポトリ……
根子が言葉をかけようとしたが、ぎょっとする。屋根を支えて崩れた垂木が一本、清の胸をぐさりと貫いていた。赤い雫が垂木を伝わり、ポトリ、ポトリと雫を垂らす。
「清さま……御胸に……御胸に──!」
根音が叫ぶ。掠れた声で清が囁く。
「案ずるな……そなたらがおるゆえ……痛みは覚えぬ……そ、それより零闇殿は如何に……」
「あちらに……清さま……見事にてござります……無事、仕舞い終えられ申した……」
「左様か……良う……ござった……」
涙ながらに根子が清に声をかける。
「清さま……舞の最中、零闇殿よりこれを託され申した……」
「これは……何ゆえ……?」
いくつもの鮮やかな花で飾られた髪飾り……。
「これは時留の花飾りにてございまする……」
花天照が答えた。
「時留の花飾り……? 何ゆえ零闇殿は……」
「それよりも清さま……この花飾りには零闇殿の御想い、なお残りおり申す……無理は承知……急ぎ花文を……」
花天照が囁いた。
「左様か……ならば、届け──花文──!」
振り絞る力で清が花文を唱える。色鮮やかな花々をあしらった光が零闇の想いの籠る花飾りに届き、それに応えるが如く光が清の心に返ってきた。
──十四の心に従え……その時、望む心ひらかれん……それが吉か凶かは己が心にて定むるべし……我が『礼』、そなたに託さん───
言葉と一緒に零闇の『礼』の徳が清の心に吸い込まれた。
「清さま……零闇殿の御想い、確かに芽吹き申した! 届きましたぞっ……」
耳元で花天照が囁いた
「そうか……良きかな……案ずるな……我はいまだ果てぬ……我が願い、これよりぞ……」
がくりと頭を垂れ、意識を失う清。
「「清さま──」」
根音と根子が叫ぶ──。その声が木霊して成り行きを見届ける者に届いた。
「相も変わらず……よのう……」
静が呟く。
「行くぞ……花化従……」
そう言い残すと振り返りその場を去ろうとした。しかし……足がもつれる。
「がはっ──」
静は吐血し大量の血が地面に滴る。そこに広がるは深く赤い血溜まり。
「静さま──大丈夫でありんすか!?」
花化従が静を抱える。
「心配無用……されど、ちと堪えた……今一度ばかり、休ませてもらおうぞ……」
静は目を瞑る。
「──花雫……いでませ……涙雫の衣を以て静さまを包み……護り奉れ……」
花雫が現れ、涙雫の衣を静に纏わせる。
花化従は振り返り、キッと瓦礫に包まれ崩れた本堂の側で横たわる清を遠くから睨んだ。
「よもや……ここまでとは……でき損ないの身にて……静さまを何と心得るか……」
花化従の美しい顔は歪み、清に対して怒りを滲ませていた。
──第三章 終幕──
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