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第四章──智(さとし)の学び舎、深き迷いの医学者
46話
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「これぞ……導きのための舞なりけり……」
孤風は身体の痛みが和らいでいくのがわかる。屋内だというのに唐傘、花傘を差し、花化従が面、花断を着けたまま、舞う。あの重い道中下駄をいとも簡単に履き慣らし舞う姿……物の怪と例える以外に言いようがない。そしてあの美しき立ち振舞い……男の性というものか……知識の高揚とはまた別の何かさえも欲情させる。ただ孤風はそれをまるで試させれていると思い、押さえ込もうとする。しかし、惑わされる心。
「否、断じてこれは思ひにあらず……これは色を募らせ、試むるものなり」
「先生ぇ……その抗ひよる御姿……いとおしゅうて……わちき、胸ん中が焼けるようどすわ……」
花化従は舞の最中、孤風の惑う姿に情欲を募らせる。
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
道中下駄を鳴らし終わると花化従の身体から枝が伸びる。
「あゝ……先生ぇ……その惑ひ、もっと、もっと纏うて……わちきを、情欲の底まで沈ませておくんなまし……」
枝が勢いよく床に突き刺さり、そして床を突き破り黒い蕾が天を指して伸び上がる。漆黒の蕾が五つ実を結ぶ。屋内に雫げぽとりぽとりと降りだす。孤風の迷いはすでに現し世も幽世も打壊した。雨が容赦なく孤風を撃ち抜いた。
「これは……何なることぞ……」
漆黒の蕾が花開く。水滴のようにゆらぐ青い髪と青い瞳が舞出す。揺らぐような舞は袖が振られるたび、孤風の未練や欲望をさらに煽る。
「これほどまで私が未練……手に取るがごとく覚ゆ……あの揺らめく舞は……なにゆゑ、私は斯くも生に執着するや……」
「我、花雫と成り……緋蕾の舞にて己が未練を曝け出さん……」
ゆらめき舞が孤風の未練を炙り出す。
「この未知の理をさらに知りたし……願ふならばすべてを智とし、私が身と成さん……」
そして二つ目の蕾が花開き、ぬるりと花徒影が孤風の影に忍び込んだ。
「絡牡丹の舞にて、その欲を身に纏はせよ……」
まるで全身を這われるような感覚。孤風の身体に纏わりつく花徒影。違う、それは錯覚に陥た孤風の心。全身に智を巡らせる。身体中で花仕舞師たちのすべてを知りたいという欲。その欲は身体から溢れだしている。
「知りたし……知りたし……知りたし……」
三つ目の花が開く。そこに現るは背を向けたままの花傀儡。
「何ゆゑ、そなたは背を向く……否……これは……天と地、転じたるか……これは……」
空間さえ歪む。今までは掻き立てるような舞を目撃してきたが、今は静かだ。
「我は反花……逆松葉の舞にて、そなたが抗ふ罪を溶かさん……」
背中を向けた姿の得も言えぬ喪色の衣は花が逆さに咲いた姿を模している。まるでその舞は型を崩すように不安定だ。美しさとは違う。逆に背徳感を漂わせ惑いの感情が心の奥から奥から溢れだす。
「否、これぞ、抗ひの果てに咲く、美しきものにて候ふ……」
孤風は身体の痛みが和らいでいくのがわかる。屋内だというのに唐傘、花傘を差し、花化従が面、花断を着けたまま、舞う。あの重い道中下駄をいとも簡単に履き慣らし舞う姿……物の怪と例える以外に言いようがない。そしてあの美しき立ち振舞い……男の性というものか……知識の高揚とはまた別の何かさえも欲情させる。ただ孤風はそれをまるで試させれていると思い、押さえ込もうとする。しかし、惑わされる心。
「否、断じてこれは思ひにあらず……これは色を募らせ、試むるものなり」
「先生ぇ……その抗ひよる御姿……いとおしゅうて……わちき、胸ん中が焼けるようどすわ……」
花化従は舞の最中、孤風の惑う姿に情欲を募らせる。
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
道中下駄を鳴らし終わると花化従の身体から枝が伸びる。
「あゝ……先生ぇ……その惑ひ、もっと、もっと纏うて……わちきを、情欲の底まで沈ませておくんなまし……」
枝が勢いよく床に突き刺さり、そして床を突き破り黒い蕾が天を指して伸び上がる。漆黒の蕾が五つ実を結ぶ。屋内に雫げぽとりぽとりと降りだす。孤風の迷いはすでに現し世も幽世も打壊した。雨が容赦なく孤風を撃ち抜いた。
「これは……何なることぞ……」
漆黒の蕾が花開く。水滴のようにゆらぐ青い髪と青い瞳が舞出す。揺らぐような舞は袖が振られるたび、孤風の未練や欲望をさらに煽る。
「これほどまで私が未練……手に取るがごとく覚ゆ……あの揺らめく舞は……なにゆゑ、私は斯くも生に執着するや……」
「我、花雫と成り……緋蕾の舞にて己が未練を曝け出さん……」
ゆらめき舞が孤風の未練を炙り出す。
「この未知の理をさらに知りたし……願ふならばすべてを智とし、私が身と成さん……」
そして二つ目の蕾が花開き、ぬるりと花徒影が孤風の影に忍び込んだ。
「絡牡丹の舞にて、その欲を身に纏はせよ……」
まるで全身を這われるような感覚。孤風の身体に纏わりつく花徒影。違う、それは錯覚に陥た孤風の心。全身に智を巡らせる。身体中で花仕舞師たちのすべてを知りたいという欲。その欲は身体から溢れだしている。
「知りたし……知りたし……知りたし……」
三つ目の花が開く。そこに現るは背を向けたままの花傀儡。
「何ゆゑ、そなたは背を向く……否……これは……天と地、転じたるか……これは……」
空間さえ歪む。今までは掻き立てるような舞を目撃してきたが、今は静かだ。
「我は反花……逆松葉の舞にて、そなたが抗ふ罪を溶かさん……」
背中を向けた姿の得も言えぬ喪色の衣は花が逆さに咲いた姿を模している。まるでその舞は型を崩すように不安定だ。美しさとは違う。逆に背徳感を漂わせ惑いの感情が心の奥から奥から溢れだす。
「否、これぞ、抗ひの果てに咲く、美しきものにて候ふ……」
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