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第四章──智(さとし)の学び舎、深き迷いの医学者
53話
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四つ目の蕾が開き、花霧が霧のように揺らめきながら姿を現わし舞たかと思うと、五つ目の蕾から、花冠をした巫女姿の花誓が蕾から顔を出して誓いの記録を掲げる。神事的な舞を披露する。まるで心までうねりをあげるように。
──清の従者、花護人の一人が誓約書を見せる。その際、必ず頷け。そこまでいけば、後は我が従者の事の成り行きに身を任せろ──
──これで……──
花識の目の前で花誓が花契筆ノ詞綴を掲げる。花識は静かに頷く。誓の書の文字が淡く光り、天へと舞う。花識の智が天へ刻まれる。
花天照が天に指差すと花識は黒く染まり墨がかったように消えていく。花護人たちの舞い終わると清が舞いを締めるように舞始めた。しかし、清は違和感を感じていた。
──なぜ、孤風殿は黒く浄化され、消滅していく。今までとはまるで違う。しかし、今は舞を終わらせる時……──
清は腑に落ちぬまま花結を唱えた。
──問いに答え、答えに惑う。それでも尚、さとし求める歩みは、風のようにしなやかであれ──
花霊々の舞の終わりを迎えた。
「此にて花結、締結──」
花灯の籠の番人が持つ線香花火の玉が静かに落ちた。黒く揺らめく花識の影だけが残る。
「清さま……花文を……」
根子が声をかける。違和感に惑う暇などない。
「届け──花文!」
清が花識の残像に揺らめく影に想いを届けた。
──最後にそなたの心に直に清の感情が流れ込むはず。その際『智の心を届ける』と返せ。そう思うだけでよい。しかし本心で願え。演技と思わせるな。思わせた瞬間、そなたは終わる。しかし、それができればそなた、我が本懐の欠片と成り得る。半死として『花死奇談、真の綴』を綴る資格を得る……──
静の言葉を胸に清の花文が花識の心にずんっと届く。
──これが清殿の直に届く想い……。艱難を凌ぎ、これに勝たんと欲する。これ、偽りなく全身全霊注ぎ込み返すのみ!──
──『智』の心、届けん!──
この時ばかりは花識は本心で清の心に本心をぶつけた。その瞬間、花識は消滅した。
花識の想いが清の心に届く。
「これはまぎれもなく、孤風殿が『智』の御心……しかと、受け取り申した」
「これにて『智』の心も芽吹きしにてございまするな、清さま……」
根子がほっと安堵した表情で清に笑いかけた。
──さるや……まことにこの想ひ、孤風殿のものに相違なし。されども、この舞ひ、何処までも胸奥に棘となりて残るは、いかなる理ゆゑか……──
清は舞終えたあと、違和感だけを残し立ち尽くした。
「根子、根音……われが舞は果たして、まことに彼らを導きおるのか……?」
清の心は晴れぬまま影を落としていた。
「「清さま……」」
その影を落とす姿に哀れみの表情を浮かべる根音と根子だった。
──第四章 終幕──
──清の従者、花護人の一人が誓約書を見せる。その際、必ず頷け。そこまでいけば、後は我が従者の事の成り行きに身を任せろ──
──これで……──
花識の目の前で花誓が花契筆ノ詞綴を掲げる。花識は静かに頷く。誓の書の文字が淡く光り、天へと舞う。花識の智が天へ刻まれる。
花天照が天に指差すと花識は黒く染まり墨がかったように消えていく。花護人たちの舞い終わると清が舞いを締めるように舞始めた。しかし、清は違和感を感じていた。
──なぜ、孤風殿は黒く浄化され、消滅していく。今までとはまるで違う。しかし、今は舞を終わらせる時……──
清は腑に落ちぬまま花結を唱えた。
──問いに答え、答えに惑う。それでも尚、さとし求める歩みは、風のようにしなやかであれ──
花霊々の舞の終わりを迎えた。
「此にて花結、締結──」
花灯の籠の番人が持つ線香花火の玉が静かに落ちた。黒く揺らめく花識の影だけが残る。
「清さま……花文を……」
根子が声をかける。違和感に惑う暇などない。
「届け──花文!」
清が花識の残像に揺らめく影に想いを届けた。
──最後にそなたの心に直に清の感情が流れ込むはず。その際『智の心を届ける』と返せ。そう思うだけでよい。しかし本心で願え。演技と思わせるな。思わせた瞬間、そなたは終わる。しかし、それができればそなた、我が本懐の欠片と成り得る。半死として『花死奇談、真の綴』を綴る資格を得る……──
静の言葉を胸に清の花文が花識の心にずんっと届く。
──これが清殿の直に届く想い……。艱難を凌ぎ、これに勝たんと欲する。これ、偽りなく全身全霊注ぎ込み返すのみ!──
──『智』の心、届けん!──
この時ばかりは花識は本心で清の心に本心をぶつけた。その瞬間、花識は消滅した。
花識の想いが清の心に届く。
「これはまぎれもなく、孤風殿が『智』の御心……しかと、受け取り申した」
「これにて『智』の心も芽吹きしにてございまするな、清さま……」
根子がほっと安堵した表情で清に笑いかけた。
──さるや……まことにこの想ひ、孤風殿のものに相違なし。されども、この舞ひ、何処までも胸奥に棘となりて残るは、いかなる理ゆゑか……──
清は舞終えたあと、違和感だけを残し立ち尽くした。
「根子、根音……われが舞は果たして、まことに彼らを導きおるのか……?」
清の心は晴れぬまま影を落としていた。
「「清さま……」」
その影を落とす姿に哀れみの表情を浮かべる根音と根子だった。
──第四章 終幕──
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