花仕舞師

RISING SUN

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第五章──忠(まごころ)の誓い、戦に生きた侍

59話

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「此処こそ、まさしく城にてござりまする……清さま……」
 根子の言葉に頷く。清は距離を置いて高くそびえ立つ天守閣を見つめていた。近くにいて遠い。無力感に力が抜ける。
「このままにては近づき難し。中に囚わるるものと見ゆるが……」
 清は焦りを見せる。根音の話しによると花紋様の痣を持つものは死期が近いと言う。
「われらには特別なる力もなし……戦の手練に敵わんは自明……いかに為すべきや……」

 カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
 カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……

 あの音が聞こえる。
「相も変わらず……耳障りなる音よ……」
 清が振り向くと場違いな身なりの姿。絢爛紫耀ノ華衣けんらんしようのはなごろもはあまりにも荘厳艶やかさ。
「何ゆえ此処へ参った、花化従はなげしょう? 相も変わらず邪魔立てばかり致しおる……」
 高笑いが響く。
「どうなされたでありんす? 相も変わらず間抜けにてござんすな……あぁ、憐れなり静さま……このようなでき損ないの妹君をお持ちとは、さぞや……静さまもお哀れにござんす。なぁ、花識はなしき、然様に思わぬか?」
「何者ぞ……花識と申すか……?」
 黒い頭巾を纏った男に声を掛ける花化従。顔はわからない。花識の存在どこか異様だが、何かを感じる清。花識と呼ばれた男は黙って頷く。
「花化従……其方が連れる者、花傀儡にはあらぬな? 何ゆえそのような者と共におる……?」
 花化従は鼻を鳴らし、下げすさんだ目で清を見る。
「そちは知るに及ばず……それよりもよいのかや? 静さまはすでに会われたぞ……花紋様浮かぶ者と……力なきは、誠に哀れ……無知とは、これほどまでに哀れなり……」
 花化従は踵を返し背を向ける。
「何がし、でき損ないは花護人はなもりびとを従えるか……花護人は戦に向かぬ者なれど……人ならざるものなり。思案せずば先はなかろうに……誠に、静さまが哀れ……哀れにてござんす……」
 花化従と花識は清の元を去っていく。花化従の道中下駄が響き遠ざかる。影は滲みやがて消えていく。
「何ゆえ……花化従……何を意味する……?」
 叫ぶ声は届かず、ただ跪く清。
「姉さまは、いかにして辿り着かれしや……」
 頭の中で巡らせるが、解を得ることができない。
「清さま……花霧はなきりここに……私ら花護人……清さまに仕えし、人ならざる者にて候……」
 清が振り向くとそこには花天照はなあまてらすと花霧が膝を折り、清を見上げていた。 
「花天照……」
 清は言葉を詰まらせた。
「何も、私らは舞を補佐するのみならず……舞を遂行せしむるため、花紋様を持つ者の許へ導く役を担う者にて候。清さまを花仕舞師として舞わせるため……刻は、すでに迫り申す……」
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