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第六章──信(たより)の愛し人、裏切りを超えて
83話
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外では蒼真の鬨の声が聞こえ、軍声が入り乱れる。しかし、清には聞こえない。
線香花火の灯火を護る、花灯ノ籠ノ番人花右手が護る中、蒼真の声が聞こえる度に火花が強く反応する。その度に死に逝く秋架の顔はほころぶ。
花天照から派生した真白の蕾が順次に開き、花護人が現れ、己の信念の舞いを披露していく。
鏡の世界で花枝弐の花水鏡が蕾の舞を舞い、花枝参の花翅が花園の世界で牡丹の舞を舞う。そして、大地に根を生やした森林の世界で花枝肆の花根孖の双子、根音と根子が松葉の舞を舞う。各々の世界で花火線香の火花を模した舞いが軽やかに、それは秋架の『信』を体現するように厳かに披露する。
霧がかった世界で花枝伍の花霧が柳の舞を舞う。それは各々の世界で与えられた使命を全うし、秋架を導く。そして一際厳格な社が現れそこから巫女姿の花枝陸、花誓が登場し、散り菊の舞を舞った。誓いを記録する花契筆ノ詞綴を掲げながら、終演が近くなることを知らせる。
しかし、一方で秋架の『怨』の感情を刺激する舞いも行われていた。
「姉さまの気配が致す……」
清は舞いながら静を感じていた。
──近くで姉さまが舞うておられる──
舞いに集中しながらも、あの忌まわしい花化従の道中下駄の音だけは清の耳に届いていた。
「相も変わらず妾に対しては敏きことよ……ほんに哀れなる奴よ、やっと人の貌を得たか? やっと舞が花仕舞師らしくなりしや? されど、なお足らぬ……足らぬのじゃ……この……でき損ないが……」
漆黒の蕾から現れる花傀儡たちも、順に舞いを舞っている最中、静が感情を露にしようとしていた。面から覗く静の目が霞みぼやけている。
「静さま……! それはあきまへんえ! お止めなされませ! 何のための面、花断にてござりましょう!」
珍しく、静に対し花化従が声を強めた。静は目を伏せ、再び目を開けた。霞が消えた。
「……すまぬな、花化従。妾は花断をかぶり、総てを絶つ身なれば……」
「それでこそ……静さまでありんす……」
殿の花傀儡、花墨が舞い終わると、花化従が面を外し、魅入る目で秋架のいる方を見る。
「さぁ……お逝きなされ……未練に抗うことなく……」
仇花霊々の舞いの終わりを告げる静の花尽。
──『怨』は『信』の裏返し。愛ゆえに、許せぬ。その怨、尽きることなく、心を蝕む、想い強いがゆえに──
「此にて花尽──これにてお膳立ては成り申した……」
そして、清も花霊々の舞の終わりを告げる花結を唱えていた。
──裏切りに沈む夜を越え、なお灯り続けるものがある。それが『信』ならば、我は何度でも手を伸ばす──
「此にて花結、締結──届け──花文!」
すべてが静けさに包まれ、秋架の想いが清に跳ね返る。
花灯ノ籠ノ番人右手に預けた線香花火の灯火が消えぽとりと落ちた。
「秋架殿……確かに『信』の心、受け取り申した……それに、これは……?」
微かな想いも一輪の花が咲くように添えられていた。
「承知仕った……必ずや、託け申す……」
清は秋架の心を受け取った。
線香花火の灯火を護る、花灯ノ籠ノ番人花右手が護る中、蒼真の声が聞こえる度に火花が強く反応する。その度に死に逝く秋架の顔はほころぶ。
花天照から派生した真白の蕾が順次に開き、花護人が現れ、己の信念の舞いを披露していく。
鏡の世界で花枝弐の花水鏡が蕾の舞を舞い、花枝参の花翅が花園の世界で牡丹の舞を舞う。そして、大地に根を生やした森林の世界で花枝肆の花根孖の双子、根音と根子が松葉の舞を舞う。各々の世界で花火線香の火花を模した舞いが軽やかに、それは秋架の『信』を体現するように厳かに披露する。
霧がかった世界で花枝伍の花霧が柳の舞を舞う。それは各々の世界で与えられた使命を全うし、秋架を導く。そして一際厳格な社が現れそこから巫女姿の花枝陸、花誓が登場し、散り菊の舞を舞った。誓いを記録する花契筆ノ詞綴を掲げながら、終演が近くなることを知らせる。
しかし、一方で秋架の『怨』の感情を刺激する舞いも行われていた。
「姉さまの気配が致す……」
清は舞いながら静を感じていた。
──近くで姉さまが舞うておられる──
舞いに集中しながらも、あの忌まわしい花化従の道中下駄の音だけは清の耳に届いていた。
「相も変わらず妾に対しては敏きことよ……ほんに哀れなる奴よ、やっと人の貌を得たか? やっと舞が花仕舞師らしくなりしや? されど、なお足らぬ……足らぬのじゃ……この……でき損ないが……」
漆黒の蕾から現れる花傀儡たちも、順に舞いを舞っている最中、静が感情を露にしようとしていた。面から覗く静の目が霞みぼやけている。
「静さま……! それはあきまへんえ! お止めなされませ! 何のための面、花断にてござりましょう!」
珍しく、静に対し花化従が声を強めた。静は目を伏せ、再び目を開けた。霞が消えた。
「……すまぬな、花化従。妾は花断をかぶり、総てを絶つ身なれば……」
「それでこそ……静さまでありんす……」
殿の花傀儡、花墨が舞い終わると、花化従が面を外し、魅入る目で秋架のいる方を見る。
「さぁ……お逝きなされ……未練に抗うことなく……」
仇花霊々の舞いの終わりを告げる静の花尽。
──『怨』は『信』の裏返し。愛ゆえに、許せぬ。その怨、尽きることなく、心を蝕む、想い強いがゆえに──
「此にて花尽──これにてお膳立ては成り申した……」
そして、清も花霊々の舞の終わりを告げる花結を唱えていた。
──裏切りに沈む夜を越え、なお灯り続けるものがある。それが『信』ならば、我は何度でも手を伸ばす──
「此にて花結、締結──届け──花文!」
すべてが静けさに包まれ、秋架の想いが清に跳ね返る。
花灯ノ籠ノ番人右手に預けた線香花火の灯火が消えぽとりと落ちた。
「秋架殿……確かに『信』の心、受け取り申した……それに、これは……?」
微かな想いも一輪の花が咲くように添えられていた。
「承知仕った……必ずや、託け申す……」
清は秋架の心を受け取った。
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