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第七章──孝(いつくしみ)の若き子、親を忘れし心
104話
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根音と根子が静かに姿を消していく。独り立つ清。袖から線香花火を取り出す。
──ここでまた舞うとは……しからばあの日の屈辱に決別を……──
「お朱鷺さま……幸吉殿の最期の温もり、しっかとその御手にて感じられよ」
清の厳粛な言葉に朱鷺の幸吉の手を握り締める手に力が入る。温もりが伝わる。
「いざ、花霊々の舞にて候。花護人筆頭、花天照此れに」
清の言葉に一瞬で闇が広がり頭上に光が灯る。その光が目映く闇を包み込むと羽を広げた花天照がゆっくりと舞い降りてくる。
「花天照よ……必ずや幸吉殿を天へと導け」
「御意……」
花天照が線香花火に息をふっと吹き掛ける。柔らかく灯る火。地が揺れる。笠をかぶりし屈強の男、花灯ノ籠ノ番人右手が地より現れる。清から花火を受け取ると線香花火に左手を添えるように灯火を護る。花天照がそれを見届けると頭上に舞い翼を一気に開く。目を見開いた瞬間、花天照の身体から枝が地表に突き刺さり、真白の蕾が五つ、灯るように膨らむ。
清が舞の始まりを告げる詞、花告をこの場にいるすべての者の心に響かせる。
──『孝』は、血より愛深く、詞より心に響き、命を紡ぐ──
そして一つ目の蕾が花咲く瞬間、花水鏡が現れ、水鏡に包まれた空間に幸吉の迷いを映し出す。そして揺らぎを与え迷いを打ち消すように舞う花水鏡。
「蕾の舞──」
線香花火が火花を散らす前の火玉を膨らませ舞の序章。線香花火がパチパチと音を立てはじめると二つ目の蕾が花咲く。蝶の如く飛び出す影一つ。世界が花に埋め尽くされた花園の世界に変わり、そこを自由に蝶のように舞う存在、花翅が姿を現した。
「牡丹の舞──」
舞うごとにそよぐような風に幸吉の想いを乗せて飛ばす。花翅の翅が幸吉の想いを巻き上げ一面に飛ばす。
「成熟の時至れり……幸吉殿の想い、いざ……」
花翅が祈るように舞うと第三の蕾が開きはじめる。世界は新緑の木々に囲まれている。そこに木漏れ日が射すような柔らかな世界。そしてその舞台に登場したのは、そこには鎖に繋がれた根音と根子。根のようなものが大地を掴まえるように絡まっている。鎖がちぎれる。
「幸吉さま……われら花根孖の双子。その想い、いま大地に根を張らせ申す……」
根音が合図するように詞をかけると、根子が舞う。
「牡丹の舞──」
根子が幸吉に寄り添い、根音が影に寄り添う。すべてを根ずかせるように……
「この御子ら……人ならぬ御方……?」
朱鷺は言葉を漏らす。
──だから、われに稚児がいるのがわかったのか……──
精悍な顔つきの二人の舞に見とれる朱鷺。しかし、温もりを忘れないためにしっかりと幸吉の手は握り締めたまま……。
そして、一瞬に幸吉が霧に包まれた。第四の蕾が開く。姿形がぼやけた花霧がゆらゆらと現れる。
「柳の舞──」
「迷い断たれよ……そなたの望み、その奥に光りて待つ」
花霧が指差す朱鷺の腹が温もりを覚え輝きだす。
「命、尽きるは此れ、人の運命なり。されど、それは霧晴るるがごとく継がれる……」
霧がはれていくと壮大な社が姿を現し、殿の蕾が花咲く。社から優雅の冠を頭に施した巫女姿の花誓がゆっくりと舞ながら幸吉に歩み寄る。花契筆ノ詞綴を掲げている。
「殿、散り菊の舞──」
──ここでまた舞うとは……しからばあの日の屈辱に決別を……──
「お朱鷺さま……幸吉殿の最期の温もり、しっかとその御手にて感じられよ」
清の厳粛な言葉に朱鷺の幸吉の手を握り締める手に力が入る。温もりが伝わる。
「いざ、花霊々の舞にて候。花護人筆頭、花天照此れに」
清の言葉に一瞬で闇が広がり頭上に光が灯る。その光が目映く闇を包み込むと羽を広げた花天照がゆっくりと舞い降りてくる。
「花天照よ……必ずや幸吉殿を天へと導け」
「御意……」
花天照が線香花火に息をふっと吹き掛ける。柔らかく灯る火。地が揺れる。笠をかぶりし屈強の男、花灯ノ籠ノ番人右手が地より現れる。清から花火を受け取ると線香花火に左手を添えるように灯火を護る。花天照がそれを見届けると頭上に舞い翼を一気に開く。目を見開いた瞬間、花天照の身体から枝が地表に突き刺さり、真白の蕾が五つ、灯るように膨らむ。
清が舞の始まりを告げる詞、花告をこの場にいるすべての者の心に響かせる。
──『孝』は、血より愛深く、詞より心に響き、命を紡ぐ──
そして一つ目の蕾が花咲く瞬間、花水鏡が現れ、水鏡に包まれた空間に幸吉の迷いを映し出す。そして揺らぎを与え迷いを打ち消すように舞う花水鏡。
「蕾の舞──」
線香花火が火花を散らす前の火玉を膨らませ舞の序章。線香花火がパチパチと音を立てはじめると二つ目の蕾が花咲く。蝶の如く飛び出す影一つ。世界が花に埋め尽くされた花園の世界に変わり、そこを自由に蝶のように舞う存在、花翅が姿を現した。
「牡丹の舞──」
舞うごとにそよぐような風に幸吉の想いを乗せて飛ばす。花翅の翅が幸吉の想いを巻き上げ一面に飛ばす。
「成熟の時至れり……幸吉殿の想い、いざ……」
花翅が祈るように舞うと第三の蕾が開きはじめる。世界は新緑の木々に囲まれている。そこに木漏れ日が射すような柔らかな世界。そしてその舞台に登場したのは、そこには鎖に繋がれた根音と根子。根のようなものが大地を掴まえるように絡まっている。鎖がちぎれる。
「幸吉さま……われら花根孖の双子。その想い、いま大地に根を張らせ申す……」
根音が合図するように詞をかけると、根子が舞う。
「牡丹の舞──」
根子が幸吉に寄り添い、根音が影に寄り添う。すべてを根ずかせるように……
「この御子ら……人ならぬ御方……?」
朱鷺は言葉を漏らす。
──だから、われに稚児がいるのがわかったのか……──
精悍な顔つきの二人の舞に見とれる朱鷺。しかし、温もりを忘れないためにしっかりと幸吉の手は握り締めたまま……。
そして、一瞬に幸吉が霧に包まれた。第四の蕾が開く。姿形がぼやけた花霧がゆらゆらと現れる。
「柳の舞──」
「迷い断たれよ……そなたの望み、その奥に光りて待つ」
花霧が指差す朱鷺の腹が温もりを覚え輝きだす。
「命、尽きるは此れ、人の運命なり。されど、それは霧晴るるがごとく継がれる……」
霧がはれていくと壮大な社が姿を現し、殿の蕾が花咲く。社から優雅の冠を頭に施した巫女姿の花誓がゆっくりと舞ながら幸吉に歩み寄る。花契筆ノ詞綴を掲げている。
「殿、散り菊の舞──」
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