花仕舞師

RISING SUN

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第九章──忍(しのび)の想い、秘めし愛の守り手

146話

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「いかなる形にせよ……妾が夜月の命をこの手にて絶ち申した……」
 紅花はすべてを洗いざらい清に告白した。それは少しだけ心が軽くなる瞬間だった。
「そののち、里へ戻ること能うたは、ひとえに緋美の存在あればこそ。見隠みがくれの党首に緋美を譲り受くる旨を告げし折は、渋りに渋られ……遂には見隠ある東洲とうしゅうノ国の領主、鷹司弓定たかつかさゆみさださまへ直訴仕り候。まこと、あの折は緋美のため、死すら恐れず……ただ守らんとする一念のみなりき。幸いにも|鷹司弓定さまの温情を賜り、道は開け申した。あのお方は話のわかる御仁にて、代々慈悲深き御家柄、これぞ見隠が仕えし所以にて候」
鷹司家たかつかさけ……にてございますか……」
 清はある人物の名を思い出していた。
「それより里を抜けるを許され、緋美を抱きて流れ流れし末、この千種座の前身、旅芝居座千種に拾われ、女方として芸に身を投じ、今に至る。座元、市三朗殿にはある程度の素性を明かし、認めていただいた。それを仁義と心得たゆえ。されど、夜月の真心ばかりは……胸奥に秘め通したままにて候……」
 紅花は深いため息をついた。
「そして、『花死奇談』の終幕の後、次なる演目『花死奇談、真綴まことのつづり端女はしめノ姫、信物語たよりものがたり』が控えておる。そこで、緋美が端女の姫を演ずる。されど……それが吉か凶か、もはやわからぬ……本来ならば晴れの初舞台、喜ばしきことなれど……」
「『端女ノ姫、信物語』……にございまするか」
 清にはすべからず運命を感じ始める。

 ──端女の姫があの方を指すのならば……緋美殿を救い出すことができるやもしれず──

「紅花殿……『真綴、端女ノ姫、信物語』と申されましたな?」
「左様。されど座元がいずこより台帳を得たかは知れぬ。急遽、決まり申した次第にて」
 清はそれを聞き根子に問う。
「根子……この『真綴』とやら、そなたは知っておるか?」
「いえ……初耳にてございまする。『花死奇談』は、我ら花仕舞師を下敷きにした御伽話にございます。されど『真綴』なるもの、存じませぬ」
 根子もきょとんとした表情を浮かべる。
「根子の知識にそれがなきは、遠き事柄にあらずということか……それと、紅花殿、ひとつ伺いとうございまする」
「なんぞ……?」
「|鷹司弓定さまは、ご存命にて?」
「いや……弓定ゆみさださまは既に亡くなられ、今はご子息が跡を継がれたと聞き及んでおる」
「ならば、今のお殿さまは?」
「確か……文綱ふみつなさまにてあらせられるはず……」
「……左様でございますか」

 ──『真綴』……それは誰がしたためたかはわからぬ。しかしながら、もしわれの憶測が正しければ……──

「紅花殿……よろしければ、その台帳を拝見つかまつりたく存じまする。緋美殿、そして紅花殿に、加護がもたらされるやもしれませぬ。紅花殿が勇気をもって語られたおかげにて……」
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