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第十章──畏(かしこみ)の祈り、神を信じた巫女
157話
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人知れず荘厳に立ちはだかる社。ある本懐のために訪れし者。そこに対峙するは巫女姿を借りし花仕舞師の本源。導かれしは禁忌を犯し、縋る想いで辿りつく。その者、経緯を話し三つ指をつき、これから行う行為に赦しを乞う。神の器である巫女は話を聞き、頷き、語りかける。それ、すなわち神の声と等し。この者の唯一頭を下げる者なり。
「花匣……筆を重ねし数、十四に及び候。道を紡ぎ、十四の心を以て綴るとき、そこに徳、芽生えなん。所謂、人として返る道しるべなり。汝、茨の道を歩む覚悟あらば、これを授けようぞ。然らば、その者の心の臓に埋め込み給え。汝の本懐へ至る道、自ずと開かれん。されども、肝に銘ぜよ。汝が求むる本懐は、久遠獄の扉、開くなり」
震えながら受け取る。手に取ると、その重みに耐えられなさそうになる。
「ここは花仕舞師、総本社、天器ノ匣社……されど時を経て、空匣社と呼ばれし有様。人の信仰とは、まことにあやふやなるものなり。……されど、そちはやり遂げられるや……否や?」
ふっと笑う。
「ここに参りしは、すべて覚悟の上にて候」
「左様か。ならば……汝の本懐、さらに強固なるものと致してしんぜよう。此れを……」
「これなるは『花切ノ契所作』……加えてこの簪、名を『時留の花飾り』と申す。死へ向かう刻を、緩やかにすべく創られしものなり。これを三本、汝に授ける。思うがままに使うがよい」
手をかざされ、光が包み込む。
「汝、封ぜられし花仕舞師の力、いま一度授けようぞ。されど、それは……『仇花』なり」
目の前に根源成す大樹現れ、漆黒の蕾が五つなる。一つ、現るは青い瞳と髪、涙雫の衣を纏う花雫。二つ、現るは黒い瞳に濡れたような髪、陽の射しようで青く光る蒼鱗の衣を纏う花徒影。三つ、現るは背を向けし、顔見せることなく、得も言えぬ色した喪色の衣を纏う反花。四つ、赤い目と逆立つ髪を持ち、焔の衣、化焔の衣纏う花焔。五つ、焼き尽くされた灰の如くの色の瞳と髪を持ち、水墨模様の無明幽墨織纏う花墨。そして大樹より、最後に出でしは絢爛紫耀ノ華衣に身を纏い、道中下駄履き鳴らす筆頭、花化従。
「これらの者ら、汝が僕たる存在……名を『花傀儡』と呼ぶ。汝が本懐、助けるものどもなり、そして汝が舞うは、もはや花霊々の舞にあらず。名づけて『仇花霊々の舞』──」
花化従をはじめ花傀儡たちは、みな頭を垂れ、膝をつく。
「すべからく、汝の本懐の道、ここより始まるなり。されど、忘るるなかれ……いざ過ちあらば、花神威ノ命の御名において、われが汝を裁かん。ゆめゆめ……胸に刻み置け」
これは、二年前に遡りし、出来事なり。すでに九徳は花匣に収まり、残は五徳──
すべからく花神威ノ命より授かりし者の名は──宿静。
「花匣……筆を重ねし数、十四に及び候。道を紡ぎ、十四の心を以て綴るとき、そこに徳、芽生えなん。所謂、人として返る道しるべなり。汝、茨の道を歩む覚悟あらば、これを授けようぞ。然らば、その者の心の臓に埋め込み給え。汝の本懐へ至る道、自ずと開かれん。されども、肝に銘ぜよ。汝が求むる本懐は、久遠獄の扉、開くなり」
震えながら受け取る。手に取ると、その重みに耐えられなさそうになる。
「ここは花仕舞師、総本社、天器ノ匣社……されど時を経て、空匣社と呼ばれし有様。人の信仰とは、まことにあやふやなるものなり。……されど、そちはやり遂げられるや……否や?」
ふっと笑う。
「ここに参りしは、すべて覚悟の上にて候」
「左様か。ならば……汝の本懐、さらに強固なるものと致してしんぜよう。此れを……」
「これなるは『花切ノ契所作』……加えてこの簪、名を『時留の花飾り』と申す。死へ向かう刻を、緩やかにすべく創られしものなり。これを三本、汝に授ける。思うがままに使うがよい」
手をかざされ、光が包み込む。
「汝、封ぜられし花仕舞師の力、いま一度授けようぞ。されど、それは……『仇花』なり」
目の前に根源成す大樹現れ、漆黒の蕾が五つなる。一つ、現るは青い瞳と髪、涙雫の衣を纏う花雫。二つ、現るは黒い瞳に濡れたような髪、陽の射しようで青く光る蒼鱗の衣を纏う花徒影。三つ、現るは背を向けし、顔見せることなく、得も言えぬ色した喪色の衣を纏う反花。四つ、赤い目と逆立つ髪を持ち、焔の衣、化焔の衣纏う花焔。五つ、焼き尽くされた灰の如くの色の瞳と髪を持ち、水墨模様の無明幽墨織纏う花墨。そして大樹より、最後に出でしは絢爛紫耀ノ華衣に身を纏い、道中下駄履き鳴らす筆頭、花化従。
「これらの者ら、汝が僕たる存在……名を『花傀儡』と呼ぶ。汝が本懐、助けるものどもなり、そして汝が舞うは、もはや花霊々の舞にあらず。名づけて『仇花霊々の舞』──」
花化従をはじめ花傀儡たちは、みな頭を垂れ、膝をつく。
「すべからく、汝の本懐の道、ここより始まるなり。されど、忘るるなかれ……いざ過ちあらば、花神威ノ命の御名において、われが汝を裁かん。ゆめゆめ……胸に刻み置け」
これは、二年前に遡りし、出来事なり。すでに九徳は花匣に収まり、残は五徳──
すべからく花神威ノ命より授かりし者の名は──宿静。
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