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「そんなに緊張せずともよい」

「旦那様、子供相手にそういう話し方は…」

「別に普通に話しているだけだが」

「威圧感がありますので…怖がらせてしまうかと」

「この私が?私が怖いか?」

ずいっと子供の正面から立ったまま話しかける。必然的に見下ろした体勢となり、男の子は被っていた帽子を脱いで胸の前で握ると泣きそうなのを堪えている様子だった


「旦那様、質問させてくださいませ。」

ここは私の邸だから私の管轄だとか、
何か言っている旦那様を押し退けて、
男の子の目線に合わせるように屈む。
  

「こんにちは」

ニコッと微笑んでからゆっくりと尋ねた

まぁ、知らない私から笑いかけてもすぐには緊張が解けないわよね
男の子が私の微笑みを見てビクッとしていたことは気にしない


「このお花は僕がいつも持ってきてくれてるの?」


男の子は黙って頷く

「私に?」

男の子は頷いた

「えっと、どうして?あなたとどこかで会ったことあるかしら?
あ、怒っている訳ではないのよ、とても嬉しいわ。ただ、気になって…」

私は男の子を傷つけないように慎重に言葉を探した。

男の子は、怒られるわけではないと知ると、ほっとしたのか話し始めた。

「た、頼まれたの。このお屋敷の女性に…渡すようにって。お、お姉さん、エリーって名前で合ってる?エリーさんに渡してくれって」

「私に?」

「うん。いいお小遣い稼ぎなんだ。お駄賃もくれるし、いつも花をお姉さんに渡すようにって。

でも、俺、ちょっとずるしちゃって、

玄関に置いて帰ってたんだ。えへへ。

だから、いつもきちんと渡さなかったから、てっきりそれがばれて怒られるかと…」



男の子はバツが悪そうにしていた

「誰に頼まれたんだ?」

旦那様が横から口を挟む

「んっと、俺が下働きしている宿屋の旦那さんからだよ。」

「宿屋の?ほぉーそうか。随分と命知らずの奴だな」


「ん?なんだよおっさん。うちの旦那さんはすげーんだ。俺みたいなもんでも働かせてくれるし、奥さんだってご飯いっぱいくれるし優しいんだ」


「奥方がいるのか?結婚しておきながら、人様の妻に花を…どこの宿屋だ?案内しろ」


「ただではやだよ」

「図々しいガキだな」

文句を言いつつも男の子に金貨を渡す旦那様
「わぁっこんなに!着いてきて」


最初とは打って変わって、男の子と砕けた言い合いをする旦那様の様子はまるで同じ子供同士みたいだ

それにしても先程…妻…って私のことよね


もしかして旦那様は嫉妬を……

ううん、まさかそんなはずはないわ。

男の子の名前はレオというそうだ。

レオの後ろを旦那様と一緒について行く。


その後ろにこっそりともう1人…





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