婚約者を寝取った妹と浮気した婚約者に命懸けの復讐をしようと思います〜その後待っていたのは溺愛でした〜

涙乃(るの)

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流行る気持ちを抑えて、カイルの立ち去った方向へと歩き出す。


もし、もしも、カイルがイリナと愛し合っていたら……


カイルのいない世界ではもう生きている意味なんてない……

絶望感に苛まれて足取りも重くなる。

その時、指輪が熱くなるのと同時に、背中にすごい衝撃を感じた。

(お姉様許さない! 死ね! 呪いをかけた者が死ねば呪いが解けるはずよ! 死ね死ね!)


「きゃーーーー」
「人が、人が、刺された!すぐに騎士団を!」

何が……起こったの…

地面に倒れていくときに、銀髪の男性が遠くに見えた。 朦朧としているので、男性が二人いるように見える。


もう……私……だめなのね……



カイルがイリナと愛しあっている所を見なくてすむのだから、良かったのかもしれない


あなたのいない生活なんて……もう考えられないから……

もう………死んでもいいわ……



「ユリア‼︎  ユリア!くそっ!あばずれでもやはり聖女か! 聖女の力には私の防御でも防げないのか! 」





✳︎✳︎✳︎

「ユリア? ユリア?」


「んん……?」

「あぁ、ユリア良かった!良かった!」


深い眠りから目が覚めて、まだぼんやりとしていると、ガバリと上体を起こされて抱きしめられた。

「え? カイル?カイル! 戻ってきてくれたのね!うぅ…カイル……私、あなたがイリナと……うぅ……夢だったのね…カイル…もうどこにも行かないで!」

カイルの首に手を回して力の限り抱きしめる。

もう、絶対に放さない


「ユリア……どこも、なんともないですか? 」


トントンと優しく背中をさすってくれるカイル。

カイルの温もりを感じて、現実なのだと実感する。

「えぇ、大丈夫。なんだか長い夢を見ていたみたい……心配かけてごめんなさいカイル」

両肩に手を置いて心配そうに顔を覗きこんでくるカイル。

サファイアのような瞳が、揺れている。 

どうしたの?

そんな表情をするのはどうして?
あれは夢ではなかったの?


「ユリア……(許してください) 愛しています」

「私の方が愛しているわ!」


空白の日数を埋めるように、二人は、何度も何度も求めあい気持ちを確かめあった。


✳︎✳︎ユリアが寝静まったころ✳︎✳︎

水晶に手をかざし、カイルはぶつぶつと何やら呟いている。

「ユリア……純粋な貴方に嘘をつく私を許してください……
まさか、この私の防御魔法が効かないなんて……

そういうことも想定して計画しておいたのですが。

あの女にもまだ信奉者がいる。油断できない。あっという間にユリアの居場所を突き止め、私との関係まで調べるとは、なかなかに手強い。

私の髪に似せたウイッグまで魔法で作り、信奉者に協力させたか。
私に色目を使っても無駄だからな。

ユリアとの仲を引き裂こうとするくらいかと思ったが、まさか殺しにくるとは予想外だった。

信奉者がこの国の上部にもいるのが厄介だ。聖女の要望は断れない。私指名の遠方の仕事をぶっ込んでくるとはな。

ユリア……貴方を傷つけてしまった私を許してください。

貴方の能力にはまだ謎が多いですね。

あれだけ大勢の目に触れたんだ。騎士団も来てしまった。

あの女が聖女でなければ始末できるものを……。

だが、超回復したユリアの能力に気づく者も出てくる可能性がある。

記憶操作は急いでしたが、問題は、あのあばずれ聖女だ。

だが、バカルドが、意外と可能性があるかもしれないな……

ユリア……もう、決して貴方を一人にはしませんからね」


上部を一掃し、自分がトップに立とうと決意したカイルは、今日も水晶を覗き、誰かを監視している。






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