これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜

涙乃(るの)

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まるで、何かのスイッチが入ったかのように、アベルはサラを求める。

「嬉しいです、サラの初めてが私で……サラの……」


最初で最後の人になりたいという言葉を、アベルはぐっと飲み込む。

くそっ! 

アベルは考えることを放棄し、サラに愛情を注いだ。

◇   ◆   ◇

ずーんと重い感覚がしてサラは目を覚ました。

「あれ?」

真っ白な空間に、サラの寝ているベッドのみあるという状況に動揺する。

目隠しが!

慌てて、目を触ると眼鏡をしていうことにほっと安堵する。

「アベルさま……?」

横に寝ているはずのアベルの姿はなかった。

夢でも見たのだろうかと、ふと胸元へ視線を向けると夜着の隙間から沢山の紅いあとが見える。

アベルさま

夢でなくて良かったと、自身を抱きしめるようにサラは両腕をさすった。

昨夜のアベルの熱い身体の感覚が甦る。

「やぁ、目が覚めた?」

場違いなほど朗らかな声で呼びかける人物がサラを見つめていた。

「‼︎」

サラは咄嗟に、シーツを掴み目を隠す。

「あぁ、大丈夫だよ、眼鏡はしていてね。目隠しは必要ない、僕もそれなりに魔力もってるから、えっと……何から説明しようかな…僕はカイル、聞いたことある?」


「カイル魔術師団長様?え⁉︎」

サラは慌ててベッドから飛び降りると、カーテシーをする。

「こ、こんな格好で申し訳ありません」


サラはシーツを夜着の上から羽織ると、カイルと目線を合わせないように足もとを見た。

「はは、気にしないで楽にして。陛下から呼び出しを受けたのはいいけど、僕も時間がなくてね。」

「カイル様が、私を……?」

サラは遂にその時がきたのだと悟った。
万が一のことが起こらないように、ここへ連れてこられたのだろう。
この国で最高の魔力量をもつカイル魔術師団長は、その力を求められて他国へ呼ばれることも多いと聞いている。

「うーん、僕、あんまりこういう説明苦手なんだけどね、サラ嬢、君の魔力は貴重だ。それで、こういう時に酷なことを言うけど、君の亡きあと、君の魔力を提供してもらえないかな?」

「魔力を……?」

サラは、とある文献の内容を思い出した。
亡くなった直後は、魔力がまだその身体に宿っている。その魔力を、病気で魔力不足症になったものに提供することで、病気を治すことができる。
そんなの黙ってすればいいのに、わざわざ同意を得ようとするなんて、カイル魔術師団長様は律儀な人だなとサラは思った。

「どうぞ、私の魔力でお役に立てるならお好きになさってください。お尋ねくださるなんて、カイル様は真面目な方ですね」


にこにことしていたカイルの顔つきが急に険しくなり、サラを食い入るように見つめている。

カイルの足元をみていたサラはその表情の変化に気づかない。

「なるべく新鮮なうちがよくて…生きているうちでも提供できる?」


サラは言われた意味が分からずに、答えることができなかった。

生きているうちにということは、痛みを伴うのかもしれない。


「はは!ごめんごめん、こわがらせちゃったね、魔力は血液に多く含まれているんだけど……ねぇ、サラ嬢、その瞳……すごい魔力量だ。きっとそこから多くの魔力を抽出して、多くの病気の人を救えるはずだ。二度と見ることが出来なくなるけど、その瞳を提供してくれる?」


「カイル様、私は……この目のせいで、ずっと苦しんできました。母も、乳母も私が命を奪ったのです……それなのにのうのうと生きていて……
でも、陛下やリシャール国の皆さんには感謝しています。こんな恐ろしい私なんかを、今まで殺さずに育ててくださったのですから。感謝しかありまえん。ですから、もしも、少しでも誰かの命を救えるのなら、カイル様のお好きになさってください。ただ……最後にアベル様を……いいえ、なんでもありません。できれば痛くないといいのですけれど」


ボロボロと堪えていた感情が溢れでるように、大粒の涙が頬をつたう。

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