これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜

涙乃(るの)

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泣き笑いをしながらサラはカイルの顔をみる。

カイルの紫色の瞳は真っ直ぐにサラの瞳を見つめていた。

その瞳を見ていると、サラの視界は端から白いもやが現れていくように霞んでいく。

何も見えなくなった途端、サラの意識はぷつりと途絶えた。


「最高の研究材料が手に入った。アベル、これで借りは返したからね」


カイルの意味深な呟きと共に、白い空間からサラの身体は転移した。


◇  ◆  ◇

「サラ、起きてください、サラ」


「んん……アベルさま?」

目を覚ましたサラは何も見えない状況に混乱していた。

目を触ると眼鏡をしていない。そして……

「きゃーーーーーーーーーーー」


「大丈夫です、サラ、落ち着いてください、私がいますから! 一生、私があなたの目となります!」



「アベル様……目が……」


子供のように泣きじゃくるサラを優しく宥めるようにアベルは抱きしめる。


「サラ、昨日伝えなくてすみません。これは嘘でもなく、王命なども関係ありません
サラ、あなたを愛しています!サラ、これからは自由です。ですが、どうかこれからもずっと、守らせてください!
今まで行けなかった分、色々な所に行きましょう。それなりに稼いでいるので、苦労はさせません。サラの気に入った場所に家を建てましょう。
何も怖がることはありません、あなたの目となり、手となり、足となり、何不自由ない生活を約束しますから!」

「アベル様……?」


「今は、まだ、混乱していますよね……大丈夫ですから」



自分の状況が分からず混乱するサラを、アベルは付きっきりで支えた。

ずっと恋していたアベルと一緒に過ごしているので、サラも気持ちを抑えることができなかった。

昼夜問わず二人は濃密な時間を過ごす。

しばらくして落ち着いたサラは、カイル様が助けてくれたのだと理解した。


呪いの瞳は強大だったが、カイルが瞳を除去することに成功した為、サラは自由の身になった。

先の戦争でアベルは、カイルを庇い片目を負傷していた。

それ以来カイルはいつかアベルに恩を返したいと思っていた。

そんな時に陛下に呼び出され、サラと対面し、サラの人となりを見て、原因の瞳の除去を試みたのだ。もちろんサラに言ったことは嘘ではなく、サラの瞳から魔力を抽出して多くの命を救っている。

けれど、もう1つの瞳は魔力を抽出した後に、アベルへと移植されている。


「もしもまた呪いの力が宿った時に、苦しむのは私でありたい」

誠心誠意を込めて断言するアベルだったが、カイルはアベルの心の内をみすかしている。

「かっこつけてるけど、本当はサラ嬢と一つになりたいとか思ってるんでしょ?」

「うるさい」

アベルの脳内はサラ畑なので、ことの真偽は不明だが、アベル自身の瞳をサラに移植しており、二人とも片目のみ見える状態になっている。

自分のものを受け入れてくれたと、にやけるアベルは少し精神的に病んでいるのかもしれない。


けれど、幸せそうに寄り添う天使のようなサラの姿を見ると、そんなことどうでもよくなってくる。

リシャール国民皆で二人の幸せをずっと見守っている。




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