4 / 5
4
しおりを挟む
泣き笑いをしながらサラはカイルの顔をみる。
カイルの紫色の瞳は真っ直ぐにサラの瞳を見つめていた。
その瞳を見ていると、サラの視界は端から白いもやが現れていくように霞んでいく。
何も見えなくなった途端、サラの意識はぷつりと途絶えた。
「最高の研究材料が手に入った。アベル、これで借りは返したからね」
カイルの意味深な呟きと共に、白い空間からサラの身体は転移した。
◇ ◆ ◇
「サラ、起きてください、サラ」
「んん……アベルさま?」
目を覚ましたサラは何も見えない状況に混乱していた。
目を触ると眼鏡をしていない。そして……
「きゃーーーーーーーーーーー」
「大丈夫です、サラ、落ち着いてください、私がいますから! 一生、私があなたの目となります!」
「アベル様……目が……」
子供のように泣きじゃくるサラを優しく宥めるようにアベルは抱きしめる。
「サラ、昨日伝えなくてすみません。これは嘘でもなく、王命なども関係ありません
サラ、あなたを愛しています!サラ、これからは自由です。ですが、どうかこれからもずっと、守らせてください!
今まで行けなかった分、色々な所に行きましょう。それなりに稼いでいるので、苦労はさせません。サラの気に入った場所に家を建てましょう。
何も怖がることはありません、あなたの目となり、手となり、足となり、何不自由ない生活を約束しますから!」
「アベル様……?」
「今は、まだ、混乱していますよね……大丈夫ですから」
自分の状況が分からず混乱するサラを、アベルは付きっきりで支えた。
ずっと恋していたアベルと一緒に過ごしているので、サラも気持ちを抑えることができなかった。
昼夜問わず二人は濃密な時間を過ごす。
しばらくして落ち着いたサラは、カイル様が助けてくれたのだと理解した。
呪いの瞳は強大だったが、カイルが瞳を除去することに成功した為、サラは自由の身になった。
先の戦争でアベルは、カイルを庇い片目を負傷していた。
それ以来カイルはいつかアベルに恩を返したいと思っていた。
そんな時に陛下に呼び出され、サラと対面し、サラの人となりを見て、原因の瞳の除去を試みたのだ。もちろんサラに言ったことは嘘ではなく、サラの瞳から魔力を抽出して多くの命を救っている。
けれど、もう1つの瞳は魔力を抽出した後に、アベルへと移植されている。
「もしもまた呪いの力が宿った時に、苦しむのは私でありたい」
誠心誠意を込めて断言するアベルだったが、カイルはアベルの心の内をみすかしている。
「かっこつけてるけど、本当はサラ嬢と一つになりたいとか思ってるんでしょ?」
「うるさい」
アベルの脳内はサラ畑なので、ことの真偽は不明だが、アベル自身の瞳をサラに移植しており、二人とも片目のみ見える状態になっている。
自分のものを受け入れてくれたと、にやけるアベルは少し精神的に病んでいるのかもしれない。
けれど、幸せそうに寄り添う天使のようなサラの姿を見ると、そんなことどうでもよくなってくる。
リシャール国民皆で二人の幸せをずっと見守っている。
カイルの紫色の瞳は真っ直ぐにサラの瞳を見つめていた。
その瞳を見ていると、サラの視界は端から白いもやが現れていくように霞んでいく。
何も見えなくなった途端、サラの意識はぷつりと途絶えた。
「最高の研究材料が手に入った。アベル、これで借りは返したからね」
カイルの意味深な呟きと共に、白い空間からサラの身体は転移した。
◇ ◆ ◇
「サラ、起きてください、サラ」
「んん……アベルさま?」
目を覚ましたサラは何も見えない状況に混乱していた。
目を触ると眼鏡をしていない。そして……
「きゃーーーーーーーーーーー」
「大丈夫です、サラ、落ち着いてください、私がいますから! 一生、私があなたの目となります!」
「アベル様……目が……」
子供のように泣きじゃくるサラを優しく宥めるようにアベルは抱きしめる。
「サラ、昨日伝えなくてすみません。これは嘘でもなく、王命なども関係ありません
サラ、あなたを愛しています!サラ、これからは自由です。ですが、どうかこれからもずっと、守らせてください!
今まで行けなかった分、色々な所に行きましょう。それなりに稼いでいるので、苦労はさせません。サラの気に入った場所に家を建てましょう。
何も怖がることはありません、あなたの目となり、手となり、足となり、何不自由ない生活を約束しますから!」
「アベル様……?」
「今は、まだ、混乱していますよね……大丈夫ですから」
自分の状況が分からず混乱するサラを、アベルは付きっきりで支えた。
ずっと恋していたアベルと一緒に過ごしているので、サラも気持ちを抑えることができなかった。
昼夜問わず二人は濃密な時間を過ごす。
しばらくして落ち着いたサラは、カイル様が助けてくれたのだと理解した。
呪いの瞳は強大だったが、カイルが瞳を除去することに成功した為、サラは自由の身になった。
先の戦争でアベルは、カイルを庇い片目を負傷していた。
それ以来カイルはいつかアベルに恩を返したいと思っていた。
そんな時に陛下に呼び出され、サラと対面し、サラの人となりを見て、原因の瞳の除去を試みたのだ。もちろんサラに言ったことは嘘ではなく、サラの瞳から魔力を抽出して多くの命を救っている。
けれど、もう1つの瞳は魔力を抽出した後に、アベルへと移植されている。
「もしもまた呪いの力が宿った時に、苦しむのは私でありたい」
誠心誠意を込めて断言するアベルだったが、カイルはアベルの心の内をみすかしている。
「かっこつけてるけど、本当はサラ嬢と一つになりたいとか思ってるんでしょ?」
「うるさい」
アベルの脳内はサラ畑なので、ことの真偽は不明だが、アベル自身の瞳をサラに移植しており、二人とも片目のみ見える状態になっている。
自分のものを受け入れてくれたと、にやけるアベルは少し精神的に病んでいるのかもしれない。
けれど、幸せそうに寄り添う天使のようなサラの姿を見ると、そんなことどうでもよくなってくる。
リシャール国民皆で二人の幸せをずっと見守っている。
44
あなたにおすすめの小説
妖精隠し
棗
恋愛
誰からも愛される美しい姉のアリエッタと地味で両親からの関心がない妹のアーシェ。
4歳の頃から、屋敷の離れで忘れられた様に過ごすアーシェの側には人間離れした美しさを持つ男性フローが常にいる。
彼が何者で、何処から来ているのかアーシェは知らない。
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる