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兄と
しおりを挟む私の心は昏い底に沈んでいくようでした。
底が見えない気持ちを私は知りました。
「お前、顔色が悪いぞ?」
兄が私の様子がおかしいことに気付いてしまいまた。
侯爵夫人としてあるまじき恥ずべきことです。
そう言って気遣ってくれるのは有難いのですが、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
「あいつはお前が具合いが悪いのは知っているのか?
もしかして ... おめでたか?」
兄の言葉に傷ついたような顔をしてはなりません。
私達は夫婦の契りは一度だけなのです。
それも、年単位で前のことです。
「ちがいますわ。そんなに顔色悪く見えますか?」
精一杯の虚勢を張ってみます。感づかれてはいけません。
「ああ、 見えるね。
そうだ、私が最近建てた別荘にいくのはどうだ? 温泉という温かい水が出るところだが、それは大層体に良いらしい。尤も私はまだ入ったことはないのだがな」
兄の中で、私の顔色が悪いのは決定事項のようです。
少しここを離れるのも良いでしょうか
「興味深いですわね、その温かい水... 温泉でしたわね。
主人に行っても良いかきいてみます。」
「そうすると良い。 アクラムも行けたら良いが、忙しいのだろう?」
兄はどこまで知っているのだろうか。
私とアクラム様が一緒にいたことなんて数えるほどしかない。
夜会も必要最低限だし、エスコートして頂いてもすぐに
別の場所で、仕事の話をしている。夫婦でいる時間なんて夜会の時ぐらいです。
それ以外は愛するあの人の元へ行っているのでしょう。
「えぇ、忙しいみたいですわ。」
当り障りない答えにしましょう。不必要に心配をかけなくても良いでしょう。
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