星のテロメア

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第7話:テロメア-3

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「え? 桜が? 何をバカな事を言ってるんだよ」
「飽くまで噂だ。だが、俺が確証のない噂を敢えてお前に伝える意図があるとしたら、お前はそれを疑うべきだ」
「つまり、確証があるってことか…。豊橋の言葉じゃなければ、全力で否定するんだけれどな」
「すまん、と言いたいところだがな。お前が桜に対して片思いを続けている、という俺の仮説が棄却されない限り、俺はただ、良心に従ってお前に伝える」
「片思いは余計だよ…。でも、その噂は得心がいかないな。大体、高校なんて1回卒業したら充分だろうに。いくら桜だからって、何年も留年しているなんて話は聞かない」
「少なくとも、だ。桜が今までになんらかの理由で複数の学校を転々として来た事は確度が高い。それも、通常の転校ではない。卒業した後に、別の高校に再入学している」
「その仮説に基づくと、桜は僕たちよりも、いくつか歳上という事になってしまう。あの桜が歳上に見えるか?」
「そうだな。だが、歳を取らない方法は存在する」
「テロメア延長のことか? それはないよ。桜はテロメア延長に否定的だったし。そもそも、未成年はテロメア延長できない」
「ふん。未成年は、な」
「な…なんだよ、まるで桜が、僕たちが想像しているよりも、ずっと歳上みたいな口ぶりじゃないか」
「俺は飽くまで仮説の話をしている。さらに言えば、桜が歳上だろうが、最終的な恋愛感情の帰結はお前次第だ」
「他人事と思って、言いたい放題じゃないか」
「実際、他人事だ」
「まあ…返す言葉もないけどさ」
「とにかく、だ。俺は、俺なりに確度が高いと判断した噂について、仮説で以てお前に伝えた。その情報をお前がどう処理するかまでは面倒を見るつもりはないし、興味もない。それだけだ」
「興味はあるだろ。なかったらそもそも僕にそんな事を伝えない」
「…ふん。そうかもな」
「豊橋が、噂と言いながら、そこまで言ったんだ。噂の発生源も明確なはずだ」
「ほう、それを俺に言えというのか」
「訊く権利くらい、僕にはあるだろ?」
「…いいだろう。知りたければ、いつもヘッドフォンをしている女に訊いてみるんだな」
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