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コミュ障じゃないボカロPの歌なんて聴かない
第1話
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「コミュ障」という言葉が、実在するある種の病名を指す用語なのか、それとも他愛のないネットスラングのひとつに過ぎないのかは知らない。僕が理解している事は、ニコニコ百貨なんかでまとめられている「コミュ障に見られる症状」の大半が自分にあてはまる、というそれだけの事だ。
自分がコミュ障であると意識した事は、社会人になるまで、否、なってからも、長らくなかった。どちらかというと多弁であるし、人当たりは悪くないので、自分は、自分の言葉で以て正しく他人に理解され、承認されていると思っていた。然し、違った。理解なんてされていないし、ましてや受け入れられてなんかもいなかった。何故なら、彼らは僕の発する言葉を、恐らくその一割も聞き取れていなかったからだ。
これは非常にシンプルな問題で、つまり、僕は非常に早口なのだ。
早口過ぎて、聞き取れない。滑舌もそんなに良くないかもしれない。自分は、一生懸命伝えようとする。すればするほど、伝わらない。
或る時、リアルに思った。自分は他人より多くの言葉を発するが、どこまでいってもこれは相手に届いておらず、単なるモノローグに過ぎないのだ、と。リアクションなど決して望めない幼子の縫いぐるみとの会話と同列。決して話しかけて来ることのない、バレーボールのウィルソンと同じ。
早口をコンプレックスとする人間にしか共感できない事はいくつもあるだろう。
例えば、何故自分はこんなにも早口なのか、という問いは、幾度となく自問してきた。
考えれば色んな理由が思い当たった。
自分みたいな人間の話に多くの時間を割いて貰うのは勿体ない。でも、自分を知って欲しいから多くを伝えたい。道理、短い時間に多くの言葉を詰め込むしかなく、早口になり、余計伝わらない。
早口を矯正しようと意識的にゆっくり喋ってみても無駄。そもそも、脳に刻まれた修正しようのない深い傷なのだ。無意識下で蠢く、主観的にも捉え様のない複雑な精神構造体を解かない事には、表面的に繕っても全く意味がないし、役にも立たない。でも、そんな自己分析ができるスキルも方法論も持たないし、それ以前に怖くて自分を見つめられない。
だから、言い訳だと解っていても、それでも、原因を自分の外に求め、救いを得たいと考えてしまう。
ダーウィンに言ってやりたい。有利な特徴を持った種族が生存競争において種を保存できるのではなかったのか。
ドーキンスに言ってやりたい。人間の実存目的は、ジーンを残す事ではなくミームを残す事ではなかったのか。
であれば、短時間に多くの情報を与える事のできる、この早口という特殊能力を持った自分は、人生を有利に進める事が出来たのではなかったのか。いつか周囲は、この単位時間に与えられる他者と比類のない情報量に慣れ進化するか、または淘汰されていく筈ではなかったのか。
目を覆わざるを得ないような生傷が心の中にあるかと言われると、恐らくそうではない。コミュニケーションができず、理解されない事による痛みを具象化する為に自傷して確かな痛みを求める程追い詰められている訳でなければ、勇気もない。だから、道理なのだ。発話以外の方法にコミュニケーションの手段を求めるのは。
色々と手を出した。
小説を書いたり、絵を書いたり、映像を作ったり。畢竟、音楽で自分を表現する事に落ち着いた。これは単純な理由だ。小説よりも労力が要らず、解りやすく、端的に表現ができ、伝わらなくても責任を負わなくて済むからだ。歌詞では好きなことを表現できるし、どんな過激な言葉やメタファーも旋律に載せてしまえば隠匿される。一部の人間がそのメッセージに気づいてくれればしめたものだが、大半はそもそも歌詞になんて興味がない。映像程に具体化する必要もない。とても都合がいい伝達形式なのだ。
でも、結局はいずれも独白に過ぎず、全てはモノローグでしかない、という結論に帰結すると理解した時、僕は、まるであの、戦争に行ったジョニーが体験したような閉塞感に襲われ、いたたまれなくなった。
何を以て、伝わったと判断するのか。何が、コミュニケーションが成立した証跡となるのか。youtubeやニコ動の再生数か? コメントの数か? それとも、たった一人のファンが、作品の制作意図を、まるで僕の意識を辿る様に諳んじて見せる事か?
違う。まるで違う。結局、クリエイティブを通して受容者とのダイアローグの成立を認識できないのであれば、発語による言語コミュニケーションに幾分も劣る、低質なマスタべーションに過ぎない。とどのつまり、コミュニケーションなんて物は一方的な自己満足でしかなく、そこに疑問を抱いて創作活動をしている時点で、既に大きく見誤っているのではないか。
そんな折だった、友人から興味深い話を聞かされた。
自分がコミュ障であると意識した事は、社会人になるまで、否、なってからも、長らくなかった。どちらかというと多弁であるし、人当たりは悪くないので、自分は、自分の言葉で以て正しく他人に理解され、承認されていると思っていた。然し、違った。理解なんてされていないし、ましてや受け入れられてなんかもいなかった。何故なら、彼らは僕の発する言葉を、恐らくその一割も聞き取れていなかったからだ。
これは非常にシンプルな問題で、つまり、僕は非常に早口なのだ。
早口過ぎて、聞き取れない。滑舌もそんなに良くないかもしれない。自分は、一生懸命伝えようとする。すればするほど、伝わらない。
或る時、リアルに思った。自分は他人より多くの言葉を発するが、どこまでいってもこれは相手に届いておらず、単なるモノローグに過ぎないのだ、と。リアクションなど決して望めない幼子の縫いぐるみとの会話と同列。決して話しかけて来ることのない、バレーボールのウィルソンと同じ。
早口をコンプレックスとする人間にしか共感できない事はいくつもあるだろう。
例えば、何故自分はこんなにも早口なのか、という問いは、幾度となく自問してきた。
考えれば色んな理由が思い当たった。
自分みたいな人間の話に多くの時間を割いて貰うのは勿体ない。でも、自分を知って欲しいから多くを伝えたい。道理、短い時間に多くの言葉を詰め込むしかなく、早口になり、余計伝わらない。
早口を矯正しようと意識的にゆっくり喋ってみても無駄。そもそも、脳に刻まれた修正しようのない深い傷なのだ。無意識下で蠢く、主観的にも捉え様のない複雑な精神構造体を解かない事には、表面的に繕っても全く意味がないし、役にも立たない。でも、そんな自己分析ができるスキルも方法論も持たないし、それ以前に怖くて自分を見つめられない。
だから、言い訳だと解っていても、それでも、原因を自分の外に求め、救いを得たいと考えてしまう。
ダーウィンに言ってやりたい。有利な特徴を持った種族が生存競争において種を保存できるのではなかったのか。
ドーキンスに言ってやりたい。人間の実存目的は、ジーンを残す事ではなくミームを残す事ではなかったのか。
であれば、短時間に多くの情報を与える事のできる、この早口という特殊能力を持った自分は、人生を有利に進める事が出来たのではなかったのか。いつか周囲は、この単位時間に与えられる他者と比類のない情報量に慣れ進化するか、または淘汰されていく筈ではなかったのか。
目を覆わざるを得ないような生傷が心の中にあるかと言われると、恐らくそうではない。コミュニケーションができず、理解されない事による痛みを具象化する為に自傷して確かな痛みを求める程追い詰められている訳でなければ、勇気もない。だから、道理なのだ。発話以外の方法にコミュニケーションの手段を求めるのは。
色々と手を出した。
小説を書いたり、絵を書いたり、映像を作ったり。畢竟、音楽で自分を表現する事に落ち着いた。これは単純な理由だ。小説よりも労力が要らず、解りやすく、端的に表現ができ、伝わらなくても責任を負わなくて済むからだ。歌詞では好きなことを表現できるし、どんな過激な言葉やメタファーも旋律に載せてしまえば隠匿される。一部の人間がそのメッセージに気づいてくれればしめたものだが、大半はそもそも歌詞になんて興味がない。映像程に具体化する必要もない。とても都合がいい伝達形式なのだ。
でも、結局はいずれも独白に過ぎず、全てはモノローグでしかない、という結論に帰結すると理解した時、僕は、まるであの、戦争に行ったジョニーが体験したような閉塞感に襲われ、いたたまれなくなった。
何を以て、伝わったと判断するのか。何が、コミュニケーションが成立した証跡となるのか。youtubeやニコ動の再生数か? コメントの数か? それとも、たった一人のファンが、作品の制作意図を、まるで僕の意識を辿る様に諳んじて見せる事か?
違う。まるで違う。結局、クリエイティブを通して受容者とのダイアローグの成立を認識できないのであれば、発語による言語コミュニケーションに幾分も劣る、低質なマスタべーションに過ぎない。とどのつまり、コミュニケーションなんて物は一方的な自己満足でしかなく、そこに疑問を抱いて創作活動をしている時点で、既に大きく見誤っているのではないか。
そんな折だった、友人から興味深い話を聞かされた。
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