コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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プロローグ

第4話

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 店を出てからは、そういえば結局店の名前が最後まで解らなかったけれど、表参道をブラブラし、MoMAショップを冷やかしたり、雑貨屋を回ったり、竹下通りを通り抜けてみたりなどした。ミコには結局、何かしら物を買い与えたりする必要がないので、安上がりだ。

 18時過ぎ頃に渋谷に戻り、入場時間まで少し時間があったので、ライブ会場のビルの1階にあるユニクロを適当に冷やかし、時間を潰した。女性物のセーターやコートなんかをミコに当ててやると、ミコが一々得意げにポーズをとるのが面白く、何度か続けたが、傍から見ると異様な光景だな、と思い、辞めた。

 ちらほらと、僕らと目的地が同じと思われる人々がエレベータに向かい始めた頃、僕たちもコンサートホールに向かった。

 受付で、僕は2人分の前売りチケットを提示した。途端、僕の背中から、ミコが、わあ、と歓声を上げるのが聞こえて来た。
「ボクの席も買ってくれたの? 嬉しい!」
 訝りながら、僕の肩越しに視線を投げたスタッフに対して、あとから来ます、と伝えた。

 ワンドリンク制なので、バーのカウンターで行列した。コーラくらいにしておこうと思ったが、折角なのでコロナビールにした。ミコが、ボクの分は? と不平を口にしたが、分けてあげるから、とあしらってやった。

 二階席の、一番後ろの席だった。どちらかというとライブを傍観する立ち位置の席だな。
「ここって」ミコが呟いた。「関係者席じゃないの?」
 僕は、関係者招待するなら確かにこういう位置かもしれないけど、そもそも皆で盛り上がる様な楽曲の音楽グループじゃないから、このくらい離れた所でしっとり聴くのが良いんだよ、と返した。

 演奏が始まると、ミコは身を乗り出して、目を輝かせてステージに向かい、耳を傾けていた。
「ねえ、この曲、面白いね」僕は正面を向いたままだったが、ミコが僕の横顔に話しかけてくるのが周辺視野で解った。「キミの音楽に似てる」
 僕は顔の向きを変えずに首肯してから、アイリッシュ系で変拍子だからね、と答えてやった。

 気づいたら、どこから取り出したのか、ミコは長いストローを僕のコロナの瓶に挿し込み、飲んでいた。薄暗いホール内で、明滅するステージのライトに照らされたミコの顔は、若干、火照っていた。酔っているのか…。

 インスト曲が多いグループだが、特定の曲になると、最前列の複数の観客が、リコーダーやアコーディオンなんかを取り出し始めた。ああ、これが風部と呼ばれる人たちか。つまり、彼らは合奏するのだ。目の前の演奏に合わせて。

 隣でミコがもぞもぞしている。トイレにでも行きたくなったのか、と思ったがそうではなく
「ボクも歌っていいかなぁ」
 と呟くと、僕の返事を待たずに立ち上がり、演奏に合わせて大きな声で歌い始めた。インスト曲だし、彼女にとっては初めて聴くアーティストだから歌詞なんて出鱈目だけれども、それでもステージや観客の演奏に合わせて即興で歌い始めた。

 僕は、やれやれ、と思いながら、ステージに上がったりしないでくれよ、と呟いた。まあ、あがったところで、何か影響がある訳ではないのだが。

 ホールを出たのは22時頃だった。ミコは興奮冷めやらぬ様子でありつつ、スッキリした表情をしていた。僕は、そもそも興奮するような楽曲は少なかったし、インスト曲であれだけ歌えるのも君くらいの物だろうな、と言ってやった。ミコは舌をだして、えへへ、と漏らした。
「キミがもっと歌わせてくれたら、大人しくしてたかもよ」 
 悪戯っぽい表情で彼女が言った。

 交差点のスターバックスでコーヒーを飲んでから、帰路についた。ミコと電車に乗るつもりだったけれど、彼女は、デートっぽいから、という訳の解らない理由で、改札の所で別れた。僕は釈然としない表情で、改札口で手を振るミコを横目に、電車に乗った。

 で、自宅に着き、玄関の扉を開けると
「おかえり!」
 と元気な声が聞こえて来た。
 僕は苦笑した。
「結局先に居るんだったら、一緒に帰ればよかったのに」
「ごめんなさ~い。でも、外で一緒にいるとキミは大変でしょ?」僕は荷物を下ろしながら、まあそうだけど、と返した。「今日は楽しかったよ。ありがと」
 ミコの言葉に、こちらこそ、と適当に答えながら、僕は寝支度を始めた。
「あれ、もう寝ちゃうの?」ミコが心配そうな顔で言った。「今日は曲を作らないの?」
「明日は仕事だしね」僕が言った。「今日はちょっと疲れたよ」
 ミコは、ゆっくりと僕に近づき、傍らで立ち止まった。
「忘れないでね。キミが音楽を作らないと、ボクは存在を維持できないんだから」彼女はいつになく冷静な語気で言った。「それが『ルール』なんだからね…」
 言われて、僕はミコと視線を合わせた。
 ミコは、急に表情を崩した。
「ありがとう、楽しかったよ」
明るい声で彼女が言った「また明日ね、お休み!」

 そう言うと、彼女はトイレの扉を開け、中に入っていった。それが「ルール」だからだ。
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