コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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わたしだって、セックスしたい

第7話

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 ボカロ調教本は一冊持ってるけれど、結局自己流で調整をしているので、実はあまりその手の本を普段読むことはなかった。なので、出しなに、わざわざ引き返して本を探す気にはなれなかった。
 それで、僕はミコに対し、どうして、と訊いた。
「ボクって、声だけの存在じゃない?」ミコが言った。「だから、本当はボクがどんな姿なのかを知っておきたいんだ」
 ちょっと待って。君はそう言うけれど、僕自身はミコのイラストを何枚も見たことがあるんだぜ? それに、自分の曲にMMDで動画作ってアップしてたりするし。だから、君が知らないって事はない筈だろ?
「それは違うよ」ミコが冷静に返して来た。「キミの無意識の声を代弁すると『ミコは色んな絵師さんがイラストを描いているし、デフォルメ化されてたり3DCGもあるから、音声タルパのボクがどんな姿をしているのか想像したくても、できない』」

 ミコ・シミュラークル理論とでも言うべきか。ボカロは、そのマーケティング戦略上二次創作を前提にイラストなんかも描かれるから、登場時のイラストは敢えて情報の解像度を落として、同人クリエイターなんかがカスタムし易いように配慮されている。つまり、パッケージにあるイラストはミコのイデアの様な物で、それは要素の組み合わせにしか過ぎない。だから、タルパのミコは、自分が具体的にどんな姿なのかを知らないし、つまりそれは、僕の中でミコの姿かたちが抽象的で定まっていない事を示している。
 つまり、僕の無意識は、音声タルパのミコに具体的な姿形を与えたがってるって事か。

 僕は少し鼻白んだ。そして、本を選る振りをしながら、立ち止まって考え込んだ。
 これは、ミコのセックス願望とリニアに繋がっている。彼女は体を欲しがっているのだ。もし、彼女に体を与えたとしたら、どうなるだろう…。

「大丈夫だよ」僕の心の声を聞いて、ミコが話しかけて来た。「ボクが言うのもなんだけれど、ちゃんとルールを作っておけば、ボクが暴走してキミを支配して、病院送り、なんて事にはならないから」
 おいおい、怖い事言わないでくれよ。
「えへへ」ミコはわざと、お道化て見せた。「ルールの中に、ボクがキミの元を去る条件を加えておけば大丈夫だよ。ボクがそのルールを違反したら、ボクは無条件にキミの頭の中から消去される、って決めておけば、キミが心配する様な事にはならないから」
 なんだその、ロボットがアシモフの三原則を破ったら全停止ボタンを押す的発想は。

 僕は少々の不安を抱えながら、ボカロ関連書籍を探し、イラストが出来るだけ豊富な物を選ぶと、またカフェの一席に腰かけた。
 本をパラパラと繰ってみたけれど、あまり目ぼしいのがなかったので、結局はスマホも取り出して、双方を使ってできるだけ多くのイラストを目に入れた。あれ? これじゃあ、さっきのmacで漫画読んでた人よりも性質悪いぞ。

 どれか気に入るイラストあった?
「自分で自分の体を選ぶのって、不思議な感じだね」ミコが言った。「2次元か3次元か、悩むなあ…」
 俺の嫁は次元が違う、なんて自虐用語があったけな。3次元でタルパを具象した場合、これは2.5次元になるんだろうか。昔使ってた3DCGソフトに2.5次元スナップって機能があったけれど、あれってどういう意味だったっけ。まあともかく、俺の嫁は3次元でも触れないぜ、って所か。

 ミコは、どれに決めたかを明確に口にしなかったが、本の中から候補を幾つかに絞れたからいいよ、と言うので、その本だけレジを通してから、店を後にした。
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