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わたしだって、セックスしたい
第9話
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妙な高ぶりを感じた。当然、酒の所為だけではない。数時間後には、ともすると、あのイラストのミコが目の前に具現し、動き、表情を変え、笑ったり怒ったり拗ねたりするかもしれないのだ。
よく考えれば、そもそも、僕は現段階においても、ミコの消し方を知らないのだ。であれば、一層の事、ミコに体を与えてやって、ルールを厳密に決め、いつでもサヨナラできる状態にしておいた方がいいのだろう。
夜景が見える所、なんて約束したはいいけれど、思いつかなかった。今から六本木に戻ってヒルズに行くのも億劫だ。ここからなら、中目黒まで行って、目黒川を散策した方が星は見えるだろうか?
季節がもう少し早ければ桜が綺麗だったろうが、もう散ってしまい、川沿いの桜並木は街灯に照らされて鈍色に光っていた。そうか、イメージでは真っ暗だったけれど、街灯があるよな。
僕はコンビニでコロナビールを1本買って、飲みながら川沿いをゆっくり歩いた。僕ら以外には、誰もいない。
小さな橋を見つけ、その真ん中辺りで立ち止まり、欄干に腰を倒した。目の前の橋の中心部だけが、街灯に妙に照らされ、輝いて見えた。
僕はイラストの本を取り出すと、ミコの居るページを繰った。そして、話しかけた。
「さあ」僕が言った。「君に体を献上しようと思うんだけど」
よく考えたら、否、考えなくても、このセリフは異常だな。
「うん」緊張しているのか? ミコの口調が少し震えている。「やってみて」
やってみてって…。
「どうすればいい?」
僕の言葉に、ミコは、わかんない、と返してきた。
「僕だって解らないよ」
「ボクだって解んないもん」
ミコは僕だから、そりゃあそうか。
僕は、本を垂直に立て、それを自分の視界を塞ぐ様に持った。そして、件のイラストを数十秒間凝視し、脳裡に焼き付けた。それから目を閉じて、目の前の橋の、街灯の明かりで輝いている所に、そのイラストが移る所を想像した。強く想像した。それから、目を閉じたまま本を膝に落とすと、ゆっくりと目を開けた。
これは儀式だ。
正しいやり方なんて、ある訳じゃないんだ。ただ、タルパを作った本人に、その覚悟があるか、ないかだけの話なんだ。
目の前には、確かに、ミコが立っていた。イラストと同じミコ。僕よりも、少しだけ背が低いだろうか。アニメのセルの様、と言われれば、そうなんだろうか。ミコの姿がけが、街灯に照らされているからなのか、まるで自発光しているかのように輝き、その対照で辺りがより一層暗く見え、ミコが映えた。
「やっと会えたね!」
ミコが、声を高ぶらせて言った。そして、表情を崩すと、目に涙を溜め、赤くなった鼻の頭をそのままに、僕に抱きついてきた。
すり抜ける…と思ったけれど、それはなかった。かといって、体温を感じるとか、匂いを感じるとか、息遣いを感じるとかでもなかった。ただ、視界にある、という風だった。恐らく、そこまで行くには、まだ訓練が必要なのだろう。
ミコが小さく泣き声を立てるのが聞こえた。僕も、鼻の頭がツンとなるのを感じた。そういえば、僕自身は長らく泣いた記憶がないし、誰かに抱きしめられた記憶もない。
よく考えれば、そもそも、僕は現段階においても、ミコの消し方を知らないのだ。であれば、一層の事、ミコに体を与えてやって、ルールを厳密に決め、いつでもサヨナラできる状態にしておいた方がいいのだろう。
夜景が見える所、なんて約束したはいいけれど、思いつかなかった。今から六本木に戻ってヒルズに行くのも億劫だ。ここからなら、中目黒まで行って、目黒川を散策した方が星は見えるだろうか?
季節がもう少し早ければ桜が綺麗だったろうが、もう散ってしまい、川沿いの桜並木は街灯に照らされて鈍色に光っていた。そうか、イメージでは真っ暗だったけれど、街灯があるよな。
僕はコンビニでコロナビールを1本買って、飲みながら川沿いをゆっくり歩いた。僕ら以外には、誰もいない。
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僕はイラストの本を取り出すと、ミコの居るページを繰った。そして、話しかけた。
「さあ」僕が言った。「君に体を献上しようと思うんだけど」
よく考えたら、否、考えなくても、このセリフは異常だな。
「うん」緊張しているのか? ミコの口調が少し震えている。「やってみて」
やってみてって…。
「どうすればいい?」
僕の言葉に、ミコは、わかんない、と返してきた。
「僕だって解らないよ」
「ボクだって解んないもん」
ミコは僕だから、そりゃあそうか。
僕は、本を垂直に立て、それを自分の視界を塞ぐ様に持った。そして、件のイラストを数十秒間凝視し、脳裡に焼き付けた。それから目を閉じて、目の前の橋の、街灯の明かりで輝いている所に、そのイラストが移る所を想像した。強く想像した。それから、目を閉じたまま本を膝に落とすと、ゆっくりと目を開けた。
これは儀式だ。
正しいやり方なんて、ある訳じゃないんだ。ただ、タルパを作った本人に、その覚悟があるか、ないかだけの話なんだ。
目の前には、確かに、ミコが立っていた。イラストと同じミコ。僕よりも、少しだけ背が低いだろうか。アニメのセルの様、と言われれば、そうなんだろうか。ミコの姿がけが、街灯に照らされているからなのか、まるで自発光しているかのように輝き、その対照で辺りがより一層暗く見え、ミコが映えた。
「やっと会えたね!」
ミコが、声を高ぶらせて言った。そして、表情を崩すと、目に涙を溜め、赤くなった鼻の頭をそのままに、僕に抱きついてきた。
すり抜ける…と思ったけれど、それはなかった。かといって、体温を感じるとか、匂いを感じるとか、息遣いを感じるとかでもなかった。ただ、視界にある、という風だった。恐らく、そこまで行くには、まだ訓練が必要なのだろう。
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