コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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わたしだって、セックスしたい

第10話

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 川沿いを並んで歩いた。とても不思議な感じがした。ミコが歩くと、ヒールの音は勿論、衣擦れの音や、長いツインテールの髪の毛が揺れ動く微かな音が聞こえて来た。それだけで、物凄い存在感を感じた。

 二人とも沈黙していたが、気になってミコの横顔を伺おうとすると、同じタイミングで彼女もこちらに、前髪越しに上目遣いの視線を送って来て、互いにはにかむ様に笑った。

「ね」ミコが呼びかける様に言った。「手…」
「ん?」僕は、不意に少し慌てた声で訊いた。「手?」
「そ」ミコは、並んで歩く僕の手に、彼女の手を重ねて来た。「ね?」

 体温を感じた。先ほどと同じように、すり抜ける事なく、僕の手と彼女の手は重なり、握る事ができた。長く細い指。これが、本当に僕の無意識が作り出した虚構の存在なのだろうか。幻覚と割り切るには、あまりに艶めかしいし、それ以上に、この東京を埋め尽くすどんな人間よりも、人間らしい…そう思えた。僕は、オート化したタルパなんて物は、もっとコミカルな物だと思っていた。妖怪ウォッチが少年の作り出したタルパの世界を描いた物語であるのなら、それは明らかに悲劇だが、太宰に言わせれば、タルパは確実に喜劇名詞だろう。

 手を繋いで歩いて、体温を感じ、長い髪が僕の顔や二の腕に触れ、彼女の紅潮した頬の表情から漏れる息遣いを感じる度に、段々現実味を帯びで来るのを感じた。つまり、彼女が所望したセックスをする事に。

「できると思う?」
 ミコが僕の横顔を覗き込みながら、言った。そうか、僕の心を読んだのか。
「どうだろうね」僕は、わざと素っ気なく答えた。それから、繋いだ手で、ミコの手を持ち上げてみた。「まさか重さまで感じるとは想像もしてなかったからね」
 ミコが、えへへ、と笑った。

 部屋に戻ったのは、24時前だった。ミコとは一緒に電車に乗ったが、始終お互い無言だった。まあ、電車の中で話しかけられても困るんだけどね…。
 荷物をベッドの脇に適当に放ってから、僕はジャケットを脱いだ。Tシャツを脱ごうとした時、横目に、ミコの視線が入った。

「恥ずかしがる事はないんだろうけれど」僕が言った。「やっぱり見られてるのは、なんとなく恥ずかしいね」
 ミコが、そっか、と言った。
「じゃあ、トイレにでも隠れてようか?」
「今からシャワー浴びようと思うんだけれど」
「ん?」
「浴室は、トイレと繋がってるの」
 ミコは微笑んだ。
「大丈夫。キミがシャワー使ってる間、消えていてあげるから」
「そんな事ができるの?」
「できるよ」というより「キミが無意識にそれをやるんだけれどね」
 なるほど。そうか。
「解ったよ」僕が言った。「じゃあ、シャワー終わったら出て来てきてね」
「あれ」ミコは、はにかみを相殺するようにお道化た声で言った。「一緒にシャワー浴びたっていいんだけどな」
 僕は苦笑した。
「それは出来るのかもしれないけれど、とりあえず今日はやめておこう」

 僕が返すと、ミコは肘から上で小さく手を振りながら、じゃあね、と言って、トイレの扉を開け、中へ消えていった。冷静に考えると、この瞬間は、扉もタルパの一部なんだろうか…。深く考えるのはよそう。

 服を全て脱いで、少しだけドキドキしながら、ミコが消えていったトイレの扉を開けた。
 ミコはいない…。

 少しほっとしてから、僕は続いている浴室の扉を開け、シャワーを浴びた。
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