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わたしのオナニーに賢者タイムはいらない
第6話
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僕は、ミコとの会話で暫く意識が飛んでいたのを誤魔化す様に、M3にはどんなコスプレで来ますか、と訊いた。先輩が、音楽イベントなんだから、ミコにしようと思ってるよ、というので、余計当惑して、僕は咳込んでしまった。ああ、こういう時って、マンガやラノベみたいに、本当に咳込むんだなって思った。よく、コーヒー吹いた、なんて言うけれど、存外に実体験から生まれたスラングなのかもしれないな。
コスプレしてると、時々思うんだよね、と先輩が呟く様に言った。僕は鏝でもんじゃを押さえながら、何ですか、と訊いた。先輩は、客観的に自分を見るのが怖い、という事を話した。やっている最中はいいんだよ、コスプレに嵌っている時はね。でも、この年になって、もう若気の至りってんじゃないから、後々振り返った時に、黒歴史と思ってしまう自分がそこにいるんじゃないか、って事が怖い。なんだか先輩は難しい事を言ったぞ、と思いながら、僕は、それはつまり、後から冷静になった時に、未来の自分が今のコスプレしてる自分を否定するかもしれない事について、今の立場から恐怖してるって事ですか、と訊いた。彼女は首肯した。そして、なんだっけ、あれ、男にしかない…マスタべーションの後の…と訊いてきた。真顔でとんでもない事を突然訊いてくるのは、昔から変わってないな。百合の特権か。僕は、ああ、賢者タイムですか、と返してやった。彼女は、そう、それそれ、と言った。賢者タイムって言えば、解りやすいでしょ、と。僕は、よくその例えをしたな、と感心しながら、的確だと思った。創作にしろコスプレにしろ、それがモノローグであるうちは、なんにせよオナニーに過ぎないのだ。これは殆どのクリエイタの共通認識ではないだろうか。だから、本当に創作をコミュニケーションの用具と位置付けるのであれば、決して止めてはいけないのだ。オナニーを。賢者タイムに入る前に、次のオナニーを始めなければならない。止めずに続けて、いつか大衆に受容された者のみが、ダイアローグを完成できるのだ。そういう意味では、先輩は大学時代からずっとそれを続けて来た訳で、それを自分で否定してしまうのは、傍から見ても非常に残念だ。
テクノブレイクって知ってますか、と僕が先輩に訊いた。先輩は、かぶりを振った。僕は躊躇わずに、用語の説明をした。つまり、オナニーのし過ぎが主因となり死に至る事だ、と。先輩は笑った。本当にそんな人いるの、と。僕は同じく笑いながら、解りません、と返した。でも、創作において、オナニーを止めて自分を黒歴史化するくらいなら、テクノブレイクするまでオナニーし続けた方が人生として価値がありませんか。僕の言葉に、先輩は少しだけ考えるようにしてから、どうだろう、そうかもね、と答えた。それから、コスプレでテクノブレイクするのもありなのかもね、と言った。僕は、笑顔で以て返答した。
放っておけばミコは居なくなるかと思っていたけれど、最後まで僕の隣で鏝をこねくり回しながら相槌を打っていたりして、居座った。それで、夜道を一緒に帰る事にした。
「一緒に売ってくれる人が見つかって良かったね」
ミコが言った。僕は小さく頷いた。
「先輩、当日ミコのコスプレするってよ」僕の言葉に、ミコは、それは困ったね、と言った。「どうして?」
「だって、本物のボクが隣にいるんだよ? 比較されたら可哀想だなあ」
ミコは、キシシと笑った。解ってて言ってるな。
「おいおい、誰も連れていくって言ってないよ」
僕は、わざと意地悪して言った。ミコは慌てるような表情を見せて、え~、と声を上げた。
「いいもん、勝手についていくから」
そうなんだろうな。
「荷物とか運んでくれると助かるんだけれどなあ」
「あはは」ミコが声を上げた。「頑張ってキミが荷物を運んでる姿、たくさん応援してあげるね」
そうなるよな。
「君は僕よりもコミュニケーション力が高いんだから、接客のアドバイスとか、声かけるターゲット選定とか手伝ってくれると実用的なんだけどね」
僕の言葉に、ミコは、わかったよ、と言って深く頷いた。
僕達は、久しぶりに手を繋いで歩いた。実際に肌が触れると、この想像上の生物が、とてもただの妄想とは思えない瞬間がある。そういえば、あれからセックスの試行は、結局一度もしていない。そっか。あのルールを作ってから、いずれ僕にリアルの彼女が出来る事が前提になっちゃったから、そういう意味では、こういう恋愛対象では、なくなっちゃったんだろうなあ。と思い、少し強く手を握った。ミコが向こうから求めてこなくなったのは、僕が彼女に対してそういう意識をし始めたからなんだろう。
解らない。このままミコとは何年先までも付き合っていけそうな気もするし、かといって、ミコ自体が時々僕に忠告するように、なんらかの拍子に、ミコが僕の意識を乗っ取る可能性だって否定できないのだ。だから、最終ボタンは畢竟、必要なのだ。
第4章のテーマ曲である「わたしのオナニーに賢者タイムはいらない」を、以下のリンクより視聴いただけます。是非、聴いてみてくださいね!
https://www.nicovideo.jp/watch/sm28029211
※リンクで直接飛べない場合は、楽曲名で検索してください
コスプレしてると、時々思うんだよね、と先輩が呟く様に言った。僕は鏝でもんじゃを押さえながら、何ですか、と訊いた。先輩は、客観的に自分を見るのが怖い、という事を話した。やっている最中はいいんだよ、コスプレに嵌っている時はね。でも、この年になって、もう若気の至りってんじゃないから、後々振り返った時に、黒歴史と思ってしまう自分がそこにいるんじゃないか、って事が怖い。なんだか先輩は難しい事を言ったぞ、と思いながら、僕は、それはつまり、後から冷静になった時に、未来の自分が今のコスプレしてる自分を否定するかもしれない事について、今の立場から恐怖してるって事ですか、と訊いた。彼女は首肯した。そして、なんだっけ、あれ、男にしかない…マスタべーションの後の…と訊いてきた。真顔でとんでもない事を突然訊いてくるのは、昔から変わってないな。百合の特権か。僕は、ああ、賢者タイムですか、と返してやった。彼女は、そう、それそれ、と言った。賢者タイムって言えば、解りやすいでしょ、と。僕は、よくその例えをしたな、と感心しながら、的確だと思った。創作にしろコスプレにしろ、それがモノローグであるうちは、なんにせよオナニーに過ぎないのだ。これは殆どのクリエイタの共通認識ではないだろうか。だから、本当に創作をコミュニケーションの用具と位置付けるのであれば、決して止めてはいけないのだ。オナニーを。賢者タイムに入る前に、次のオナニーを始めなければならない。止めずに続けて、いつか大衆に受容された者のみが、ダイアローグを完成できるのだ。そういう意味では、先輩は大学時代からずっとそれを続けて来た訳で、それを自分で否定してしまうのは、傍から見ても非常に残念だ。
テクノブレイクって知ってますか、と僕が先輩に訊いた。先輩は、かぶりを振った。僕は躊躇わずに、用語の説明をした。つまり、オナニーのし過ぎが主因となり死に至る事だ、と。先輩は笑った。本当にそんな人いるの、と。僕は同じく笑いながら、解りません、と返した。でも、創作において、オナニーを止めて自分を黒歴史化するくらいなら、テクノブレイクするまでオナニーし続けた方が人生として価値がありませんか。僕の言葉に、先輩は少しだけ考えるようにしてから、どうだろう、そうかもね、と答えた。それから、コスプレでテクノブレイクするのもありなのかもね、と言った。僕は、笑顔で以て返答した。
放っておけばミコは居なくなるかと思っていたけれど、最後まで僕の隣で鏝をこねくり回しながら相槌を打っていたりして、居座った。それで、夜道を一緒に帰る事にした。
「一緒に売ってくれる人が見つかって良かったね」
ミコが言った。僕は小さく頷いた。
「先輩、当日ミコのコスプレするってよ」僕の言葉に、ミコは、それは困ったね、と言った。「どうして?」
「だって、本物のボクが隣にいるんだよ? 比較されたら可哀想だなあ」
ミコは、キシシと笑った。解ってて言ってるな。
「おいおい、誰も連れていくって言ってないよ」
僕は、わざと意地悪して言った。ミコは慌てるような表情を見せて、え~、と声を上げた。
「いいもん、勝手についていくから」
そうなんだろうな。
「荷物とか運んでくれると助かるんだけれどなあ」
「あはは」ミコが声を上げた。「頑張ってキミが荷物を運んでる姿、たくさん応援してあげるね」
そうなるよな。
「君は僕よりもコミュニケーション力が高いんだから、接客のアドバイスとか、声かけるターゲット選定とか手伝ってくれると実用的なんだけどね」
僕の言葉に、ミコは、わかったよ、と言って深く頷いた。
僕達は、久しぶりに手を繋いで歩いた。実際に肌が触れると、この想像上の生物が、とてもただの妄想とは思えない瞬間がある。そういえば、あれからセックスの試行は、結局一度もしていない。そっか。あのルールを作ってから、いずれ僕にリアルの彼女が出来る事が前提になっちゃったから、そういう意味では、こういう恋愛対象では、なくなっちゃったんだろうなあ。と思い、少し強く手を握った。ミコが向こうから求めてこなくなったのは、僕が彼女に対してそういう意識をし始めたからなんだろう。
解らない。このままミコとは何年先までも付き合っていけそうな気もするし、かといって、ミコ自体が時々僕に忠告するように、なんらかの拍子に、ミコが僕の意識を乗っ取る可能性だって否定できないのだ。だから、最終ボタンは畢竟、必要なのだ。
第4章のテーマ曲である「わたしのオナニーに賢者タイムはいらない」を、以下のリンクより視聴いただけます。是非、聴いてみてくださいね!
https://www.nicovideo.jp/watch/sm28029211
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