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カエルの歌が聴こえない
第1話
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スランプ、というのは、創作を趣味生業としている人間であるなら、誰もが一度は経験した事があるだろうが、つまりは、僕は、今、スランプである。M3が終わってから、急に曲が作れなくなった。有香と再会した事が原因…ではないと思う。スランプ自体は珍しい事ではないが、今回はいつもより焦っている。何故なら、僕が曲を作り続けないと、僕はミコのタルパを維持できないからだ。そういう約束になっている。ん? そうか。僕にリアルの彼女が出来なくても、僕が曲作りを諦めたら、彼女は消えるのか。でも、これはマルチエンディングのRPGで言えばバッドエンドだ。音楽という通信手段を失い、更に無意識の代弁者であるミコを失う。つまり、コミュニケーションへの諦念。であれば、解りあえる彼女を作る、という終わらせ方がハッピーエンドだ。
新しい音楽を聴く、というのは、僕等の様な人種からすると、ある意味とても勇気が要る。なぜなら、その曲があまりにも自分の作品と方向性が近く、且つハイレベルである場合、その技法を吸収するまで、他の作品や楽曲に手がつかなくなるからだ。以前、とあるボカロPの楽曲を教えて貰って、よく考えたら教えてくれたのはあの先輩だが、それを聴いてから1ヵ月以上スランプに陥った事がある。自分の曲と傾向が似ている、または、自分が目指す音楽の形がそこにあり、何を作っても駄作としか感じられなくなる。その楽曲を超える何かしらの要素を持った曲を作らないといけない、という妙な使命感に駆られる。最終的には、超えたとか超えないとかは別として、その曲の要素を吸収し、自分の楽曲にはなかった新たな曲を1曲作り上げる事で収まったのだが、兎に角、それまでに1ヵ月要した。下手に音楽を聴くと、場合によっては何も手につかなくなる恐れがあるから、結構慎重になってしまったりする事がある。
「曲が作れないの?」
ミコが、PCに向かう僕の背中に向かって言って来た。
「もともと音楽なんて素人だから」僕が返した。「作れる、作れないは、結構気まぐれだったりするんだよね」
「ちょっと自虐的だね?」
「いや、そうじゃないんだ」僕が返した。「僕みたいに、後発組でもともと音楽経験がないようなボカロPだと、スランプの抜け方が解らないんだよね」
ミコは、くすくすと笑った。
「それは音楽経験のあるなしは関係ないんじゃないの? あのアニメの魔女だって、いきなり空を飛べなくなったんだよ?」
あのアニメってなんだよ。
「言うなればさ」僕が言った。「音楽理論をちゃんと解っていれば、こういう時、理屈で以て音楽を作れるんじゃないかな、って…」
言って、本当にそうなんだろうか、と自問してしまった。
「音楽理論はちゃんと勉強して欲しいよね」ミコが言った。「でも、それを使いこなせるかはキミ次第じゃん」
その通りで何も言えない。
「で?」僕がミコに訊いた。「そのアニメでは、どうやってスランプを抜け出したの?」
ミコは、えへん、とわざとらしく咳をして見せた。
「魔女の友達の絵描きさんがね…」
「ああ、いいよいいよ、その先は」僕が制した。「何が言いたいか解った」
「なんだよぉ。折角、いい事を言おうと思ったのに」
僕は笑った。
「君が知っている事は、全部僕が知っている事なんだぜ」
やった、初めてミコに言い返してやったぞ。なんて。
とは言え、作って作って作りまくる、それでも駄目ならば何もしない、なんて訳にもいかない。ミコを維持しなきゃ。
「趣味は、義務感を感じ始めたら辞め時だって言うよ」
ミコが言った。
「そんな事は何度も思ったけどさ」僕が言った。「それって、辞める言い訳にしか感じないんだよなぁ。確かにプロじゃないけどさ」
「じゃあ、どうするの?」
「それをミコが助言してくれたら、助かるんだけれどな」
「ワガママ」
はいよ、ゴメンナサイね。
然し、本当にどうしよう。何か適当に、簡単な曲でも作ってればいいのかな。カエルの合唱の歌とか。でも、それじゃ本末転倒だ。ミコを維持するのは、本来の目的じゃなくって、ちゃんと曲を作る事が目的なんだから。
新しい音楽を聴く、というのは、僕等の様な人種からすると、ある意味とても勇気が要る。なぜなら、その曲があまりにも自分の作品と方向性が近く、且つハイレベルである場合、その技法を吸収するまで、他の作品や楽曲に手がつかなくなるからだ。以前、とあるボカロPの楽曲を教えて貰って、よく考えたら教えてくれたのはあの先輩だが、それを聴いてから1ヵ月以上スランプに陥った事がある。自分の曲と傾向が似ている、または、自分が目指す音楽の形がそこにあり、何を作っても駄作としか感じられなくなる。その楽曲を超える何かしらの要素を持った曲を作らないといけない、という妙な使命感に駆られる。最終的には、超えたとか超えないとかは別として、その曲の要素を吸収し、自分の楽曲にはなかった新たな曲を1曲作り上げる事で収まったのだが、兎に角、それまでに1ヵ月要した。下手に音楽を聴くと、場合によっては何も手につかなくなる恐れがあるから、結構慎重になってしまったりする事がある。
「曲が作れないの?」
ミコが、PCに向かう僕の背中に向かって言って来た。
「もともと音楽なんて素人だから」僕が返した。「作れる、作れないは、結構気まぐれだったりするんだよね」
「ちょっと自虐的だね?」
「いや、そうじゃないんだ」僕が返した。「僕みたいに、後発組でもともと音楽経験がないようなボカロPだと、スランプの抜け方が解らないんだよね」
ミコは、くすくすと笑った。
「それは音楽経験のあるなしは関係ないんじゃないの? あのアニメの魔女だって、いきなり空を飛べなくなったんだよ?」
あのアニメってなんだよ。
「言うなればさ」僕が言った。「音楽理論をちゃんと解っていれば、こういう時、理屈で以て音楽を作れるんじゃないかな、って…」
言って、本当にそうなんだろうか、と自問してしまった。
「音楽理論はちゃんと勉強して欲しいよね」ミコが言った。「でも、それを使いこなせるかはキミ次第じゃん」
その通りで何も言えない。
「で?」僕がミコに訊いた。「そのアニメでは、どうやってスランプを抜け出したの?」
ミコは、えへん、とわざとらしく咳をして見せた。
「魔女の友達の絵描きさんがね…」
「ああ、いいよいいよ、その先は」僕が制した。「何が言いたいか解った」
「なんだよぉ。折角、いい事を言おうと思ったのに」
僕は笑った。
「君が知っている事は、全部僕が知っている事なんだぜ」
やった、初めてミコに言い返してやったぞ。なんて。
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「趣味は、義務感を感じ始めたら辞め時だって言うよ」
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「そんな事は何度も思ったけどさ」僕が言った。「それって、辞める言い訳にしか感じないんだよなぁ。確かにプロじゃないけどさ」
「じゃあ、どうするの?」
「それをミコが助言してくれたら、助かるんだけれどな」
「ワガママ」
はいよ、ゴメンナサイね。
然し、本当にどうしよう。何か適当に、簡単な曲でも作ってればいいのかな。カエルの合唱の歌とか。でも、それじゃ本末転倒だ。ミコを維持するのは、本来の目的じゃなくって、ちゃんと曲を作る事が目的なんだから。
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