コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

文字の大きさ
55 / 94
カエルの歌が聴こえない

第11話

しおりを挟む
 タイトルと内容が決まってから、基調となる旋律だけ、一緒に決める事にした。僕と有香は、一緒に小さなキーボードに手を伸ばして、旋律を考えた。

「13拍子って、難しいね」有香が言った。「よく考えたら、6拍子の曲だってそんなに聞かないもんね」
「でもね」僕が言った。「5拍子の曲から23拍子の曲まで一通り作ったけれど、一番変拍子として意味があるのって、13拍子だと思ってるんだ」
「へえ」有香が少しだけ目を丸くして言った。「そうなんだあ」
「変拍子特有の不自然さがなく、聴き易くて、それであって変拍子じゃないと作れない曲、っていうのがやりやすいかな」
 と言いつつ、別に僕はそんなレベルにいる訳じゃないけどね。まあ、殆どの混合変拍子は、7拍子さえ自由に使いこなすことが出来れば、なんとかなってしまったりする。

 さて、で、13拍子だ。
「ドレミファミレド、だよね」
 有香が言いながら、キーボードでドレミファミレドを弾いた。
「あ、7音だね」僕が言った。「ドレミファミレド、で7音だ」
「という事は、カエルの合唱の歌って、もともと7拍子なの?」
「違う違う」僕が、諭す様に言った。「歌ってみると解るけれど、最後にひとつ休符が入るだろ?」
 僕の言葉に、有香は中空を見上げるようにすると、ドレミファミレド、と旋律を呟いた。それから僕と視線を合わせてくると、
「ほんとだ!」
 と言った。
 僕は少しだけ得意になって、続けた。
「でも、日本人って、元々変拍子に慣れている筈なんだよね」
「ん?」有香が言った。「どうして?」
「和歌ってあるだろ?」
「和歌? 5・7・5・7・7の事?」言って、有香は気づいた様に、「ほんとうだね…」と呟いた。
「でしょ? 日本人は文化として、5と7の変拍子の音を受け継いでいるんだ」
 僕の言葉に、有香は目を輝かせて、すご~い、と言った。
「じゃあ、変拍子は日本人にもっと受け入れられてもいいって事だよね」有香が言った。「変拍子ブーム、くるかもね」
 そこまで有香が言った所で、僕は声を出して笑った。有香がまた、キョトンとしてしまった。
「ごめんごめん」僕が言った。「まことしやかな話だから、騙されちゃったね」
「どういう事?」
 僕は、純粋な有香の瞳を横目で見ながら、続けた。
「確かに、文字数は5・7・5・7・7なんだけどね。拍数は違うんだ」
 有香はまた、5・7・5・7・7と、百人一首を読み上げる様に、節をつけて呟いた。
「あっ…」気づいた様に有香が言った。「休符が入るから、音は6・8・6・8・8?」
「う~ん、どうだろう」僕が言った。「8・8・8・8・12とかかもしれないけどね」
 有香が、指を折りながら拍数を数え始めた。
「うん、そうかも」
 気づいて、なんだあ、残念、と有香が言った。

「でも、ドレミファミレドが7音なのは使えるかも」僕は言いながら、キーボードを弾いた。「ほら、ファを1音にして、それ以外を2音にしており返せば…」
 ドドレレミミファミミレレドド、と13音を弾いた。
「あ」有香が言った。「うまくいきそうだね」
 それで、有香はメモ帳に移動すると、歌詞のメモを始めた。歌詞のアイデアが浮かび始めたらしい。

「歌詞を書くとき…」僕が言った。「日本語の普通の言葉と一緒に、ひらがなで書いた歌詞もあると嬉しいな」
「ん?」有香が言った。「どうして?」
「ボカロってさ」僕が言った。「漢字だと入力できないんだよね」
 僕の言葉に有香は、あ~、と感嘆した。
「そっかあ」有香が言った。「知らなかった。じゃあ、今までわたしが書いた歌詞って、全部ボカロに歌って貰う時にひらがなに書き換えられてたんだね」
 そうだろうね。
「ひらがなでも、ただひらがなにしただけじゃ駄目なんだ」僕が続けた。「例えば『わたしはカエルです』と歌わせたい時は、『わたしわかえるです』と入れなきゃいけない」
「『は』は『わ』と発音されないんだね」
 僕は首肯した。
「他にも『歌った』は『うたあた』にしたり、『歌おう』は『うたおお』にしたりするね」
 有香はまた、へえ、と言った。
「知らなかった。今まで、もしかすると、作り手さんに随分迷惑かけてたのかもね…」
 僕は笑った。
「まあ、ローマ字とか、音記号で入れる人とかもいるみたいだから、そうとも限らないけどね」
 有香は、解ったよ、と言うと、ひらがなの歌詞も同時に打ってくれた。でも、肝心な本文は僕のスランプをテーマにするので、先に、僕がキーワードだけメモ帳にいくつか打ち込んで、それを膨らませて歌詞を作る事にした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...