コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

文字の大きさ
74 / 94
そよよ

第2話

しおりを挟む
 中野の友人に連絡をとる事にした。彼に贈物の相談をする為ではない。どちらかというと、唯一、僕のタルパの存在を知っている彼に、今僕の身に起きている事を話しておきたかったのだ。

 友人は、自宅でコーヒー豆を手挽きミルでゆっくりと挽きながら、僕の話に耳を傾けた。当然、有香の話や、彼女がタルパを持っている事も話した。彼は偏見や驚きなく、幾度となく僕の話に相槌を打っては、理解を示してくれた。

 僕が言葉を切ると、友人は始め、有香はお前とどういう関係なのか、とか、お前のタルパを作るなんて余程だな、とか、囃すような素振りを見せた。が、急に冷静な表情を作ると、今、ミコのタルパは居るのか、と訊いて来た。僕は、家に置いて来た事を伝えた。尤も、彼女は出現したい時には勝手に出てくるだろうし、急に会話に割り込んで来たり、心の声に反応したりするんだろうけれど。友人は、ミコのタルパが、有香に対してなんらかの警告を示している事、それはどちらかというと、ミコ自身がルールに従って消失する事を恐れているというよりも、メンヘラの有香と僕が再び恋愛関係になる事で、僕自身の精神が有香に侵食され、立ち直れなくなる事を危惧しているのではないか、という事を言った。僕は、ああ、客観的な意見とはこういう物だ、と友人に相談して良かったと思った。僕は友人に、有香と自分が恋愛関係になる事で、逆に相互のタルパを消失し、メンヘラやらコミュ障に対するコンプレックスを解消、または受け入れられるのではないか、と話した。彼は、それも一理あるが、どのみちリスキーだ、と答えた。それから、ミコが警告を発するのは、お前が無意識に、有香と一緒になる事に恐れをなしているからだ、と付け加えた。僕は黙って首肯した。

 友人がコーヒーを僕の前に置いてくれた。いい香りがした。

 僕は自分が、自分のタルパと共に、一体何を成したいのかが、段々解らなくなってきていた。もともとは興味本位な所もあったけれど、コミュニケーションに関するコンプレックスを克服する事が一義としてあった筈だ。そして、タルパと別れる条件として設定したのが、コミュニケーションツールを諦める、つまり楽曲を作らなくなった時か、コミュニケーションコンプレックスをある程度克服する、つまりリアルの彼女が出来た場合か、に定めた。だから、この当初の考えに立ち返れば、僕が有香と恋愛関係になる事には躊躇う事はない筈だし、それに、同様のコンプレックスを抱き、タルパを生み出した彼女は、これ以上揃い様もない条件を満たしていると言える。それが、ともするとカタストロフへの道しるべともなり得る事への恐怖。

 有香は、無関心が一番苦痛だと言った。今、有香に最も関心があるのは、彼女のタルパと、この僕だろう。だから、少なくとも表層の僕は、有香にもっと近づきたいと考えている。

 友人は、コーヒーを音を立てて啜ると、口を開いた。そういえば、結局、ミコとのセックスは成立したのか。僕は苦笑いして、かぶりを振った。そして、挑戦しようとしたのは、一度だけである事、そのあと有香と出会ってから、ミコとは異性としてのなんらかの干渉はないし、ミコ自体も積極的ではない事を伝えた。友人は、そうか、と答えた。それから、セックスをしろ、とは言わないけれど、もう少し自分の無意識であるタルパと話し合ってみたらどうだ、と言った。話し合う…ねえ…。確かに、ミコと僕の関係において、互いにどんな事を考えているのか、とか、お互いどう思っているのか、といった事を、真剣に話し合った事はなかった。僕自身はタルパと共生しているので、半ば、というか、殆ど、一個の人物、生物としてミコの事を捉えて、その錯覚の中で生活しているが、客観的に見れば、ミコとの対話はつまり、僕の意識と無意識との対話なのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...