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そよよ
第12話
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ミコの予想通り、有香から誘いのLINEが入り、誕生日に会う事になった。とは言え、彼女は、自分の誕生日である事など一言も添える事はなかった。ただ、貰い物のワインを1人で飲みきれないから、それを持って僕の部屋に来る、というのは、口実だと思った。
僕は、色々な意味で落ち着かない気分で、部屋の片づけや掃除をした。ミコは手伝ってはくれず、というのは当然だが、立ったまま壁に凭れながら、彼女もなんだか落ち着かない様な、上の空な表情をしていた。例えば、僕が有香とセックスをしたら、ミコは消失する、とか、そういう決まりを厳密に作っている訳ではない。けれども、状況によっては、もしかすると、今日、ミコとサヨナラしなければならない可能性だって、ある。そう考えると、僕だって、ミコのタルパを失う覚悟や心の準備は、全く出来ていない。思えば、この数ヵ月、ミコが一緒に居る事が当たり前過ぎて、いなくなる、という状況を想像した事すらない。だからと言って、僕が、ルールの変更を申し込んだとしても、ミコはそれを良しとしないだろう。どの道、僕とミコとは、いずれは別れなければならな関係なのだ。
「また会えるかも…」ミコが言った。「なんて、曖昧な関係じゃないからね」
僕は掃除の手を止め、ミコの方を見た。彼女は、俯いて視線を床に落としたままだった。僕は、返す言葉がなく、暫く無言で立ち尽くしてしまった。
ミコは、少しだけ顔を上げて、僕と視線を合わせて来た。
「サヨナラなんて言わないよ、とか、また会いましょう、とか、そんなセリフはラノベの中だけのお話で、現実は、会えない」ミコが言った。「圧倒的に、会えない…」
ルールに依って消失するタルパは、以後、暗示で以て僕の無意識下において同一性を持って具現化し得ない、という事なのだろう。つまり、同じタルパであったり、同じ記憶を持ったタルパを作る事は、もう出来ない、という事をミコは言っている。
正直、というか、当然、僕は迷っている。現在、既に色々な意味でミコは僕の事を支えてくれており、僕は彼女に、多かれ少なかれ、依存している。セックスは結局成功しなかったけれど、現実世界における人間の彼女以上に、彼女らしいとさえ思っている。だから、二度と会えなくなるのは、嫌だ。
「ありがと」ミコが言った。「でも、キミがタルパを作った目的を思い出してね」
そう。元々、現実世界におけるダイアローグの実現を補助する役割を、タルパには与えていた筈だ。そして、有香と僕とは、生きて来た文脈にしろ、考え方にしろ、コミュニケーションに対する考え方にしろ、他には見つけようがないくらい似ている。だから、彼女の事を知れば知るほど、そこにはダイアローグが構築されていき、果てはコミュ障の克服を可能とするかもしれない。
「記念写真も撮れなければ、声を録音する事もできない」僕が言った。「でもやっぱり、君が消えたとしても、君と二度と会えないとしても、僕は、君の事は一生忘れる事はないだろうな…」
僕の言葉に、ミコは満面の笑みを見せた。
「歌は残るよ」
ミコが言った。そうか。彼女と一緒に作った歌は、残るのか。タルパのミコは、僕という現実世界のメディアを媒介し、現実世界と接触し、そして現実世界に影響を与えているのだ。
僕は、ミコの髪を軽く数回撫ぜた。それから、お互いに抱き合った。ミコは、強く僕の服を掴むと、小さく声を立てて泣いた。
僕は、色々な意味で落ち着かない気分で、部屋の片づけや掃除をした。ミコは手伝ってはくれず、というのは当然だが、立ったまま壁に凭れながら、彼女もなんだか落ち着かない様な、上の空な表情をしていた。例えば、僕が有香とセックスをしたら、ミコは消失する、とか、そういう決まりを厳密に作っている訳ではない。けれども、状況によっては、もしかすると、今日、ミコとサヨナラしなければならない可能性だって、ある。そう考えると、僕だって、ミコのタルパを失う覚悟や心の準備は、全く出来ていない。思えば、この数ヵ月、ミコが一緒に居る事が当たり前過ぎて、いなくなる、という状況を想像した事すらない。だからと言って、僕が、ルールの変更を申し込んだとしても、ミコはそれを良しとしないだろう。どの道、僕とミコとは、いずれは別れなければならな関係なのだ。
「また会えるかも…」ミコが言った。「なんて、曖昧な関係じゃないからね」
僕は掃除の手を止め、ミコの方を見た。彼女は、俯いて視線を床に落としたままだった。僕は、返す言葉がなく、暫く無言で立ち尽くしてしまった。
ミコは、少しだけ顔を上げて、僕と視線を合わせて来た。
「サヨナラなんて言わないよ、とか、また会いましょう、とか、そんなセリフはラノベの中だけのお話で、現実は、会えない」ミコが言った。「圧倒的に、会えない…」
ルールに依って消失するタルパは、以後、暗示で以て僕の無意識下において同一性を持って具現化し得ない、という事なのだろう。つまり、同じタルパであったり、同じ記憶を持ったタルパを作る事は、もう出来ない、という事をミコは言っている。
正直、というか、当然、僕は迷っている。現在、既に色々な意味でミコは僕の事を支えてくれており、僕は彼女に、多かれ少なかれ、依存している。セックスは結局成功しなかったけれど、現実世界における人間の彼女以上に、彼女らしいとさえ思っている。だから、二度と会えなくなるのは、嫌だ。
「ありがと」ミコが言った。「でも、キミがタルパを作った目的を思い出してね」
そう。元々、現実世界におけるダイアローグの実現を補助する役割を、タルパには与えていた筈だ。そして、有香と僕とは、生きて来た文脈にしろ、考え方にしろ、コミュニケーションに対する考え方にしろ、他には見つけようがないくらい似ている。だから、彼女の事を知れば知るほど、そこにはダイアローグが構築されていき、果てはコミュ障の克服を可能とするかもしれない。
「記念写真も撮れなければ、声を録音する事もできない」僕が言った。「でもやっぱり、君が消えたとしても、君と二度と会えないとしても、僕は、君の事は一生忘れる事はないだろうな…」
僕の言葉に、ミコは満面の笑みを見せた。
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ミコが言った。そうか。彼女と一緒に作った歌は、残るのか。タルパのミコは、僕という現実世界のメディアを媒介し、現実世界と接触し、そして現実世界に影響を与えているのだ。
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