コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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そよよ

第15話

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 僕と有香は、肩を寄せ合って、並んで座った。彼女の髪の毛が僕の頬に触れ、いい香りがした。当然、高校時代に彼女が使っていたシャンプーとは違う香りだけれど、当時も同じように、髪に絡ませた香りに胸の高鳴りを感じた記憶がある。

(こんなに満たされたお誕生日は、久しぶりだよ)有香がノートに書いた。相変わらず、綺麗な字だ。(ありがとう)

 僕は照れ臭くって、何て書いてあげれば良いか解らなかった。でも、有香だって、この言葉を口で言うのが照れるから、筆談にしたに違いないのだ。ああ、それにしても、この「間」って、LINEとかで既読をつけちゃって、返事を考えている「間」と同じだ。
(同じじゃないよ)
 僕の表情を見て感じ取ったのか、有香は僕からそっと鉛筆を取り上げると、そう書いた。僕の心の声に対してそのまま返事を書かれるなんて…。ミコとの会話と錯覚してしまう。
(どういう事?)
 僕が書いた。それから、有香に鉛筆を渡した。
(だって、隣にいるんだもの。あなたが、わたしの為に、言葉を考えるのに悩んでいる表情も、ちゃんと解っているから)有香が書いた。僕はそれを読んで、自然と目頭が熱くなるのを感じた。これは、タルパのミコが、僕に対して思っていてくれた事と同じだ。僕が何を考えているのか、どう思っているのかを、理解して、共感してくれている。こんな事は、無意識が作り出すタルパという存在でなければ、成し得ないのではなかったろうか。それが、現実世界の有香と、同じレベルで実現ができている。彼女自身が、僕と同様にタルパを持っている、という事にも起因するのかもしれないけれど、これは、この共感覚こそが、僕がずっと得たいと思っていたダイアローグそのものではなかったか。

 僕は、自然と、自分の頬を涙が伝うのを感じた。とても単純に、自分を受け入れてくれる人がいる事が、嬉しかった。僕も有香も、それを今まではタルパに頼っていた。つまり、自分で自分を受容するという、自慰行為の中でしか達成されないし、できない物と思っていた。
(ごめん)涙で湿った紙の上で、鉛筆の文字が滑った。(僕は、有香のタルパほど、有香の事をちゃんと理解している自信がない)
 僕が書くと、有香は僕の手の上に、有香の手を重ねた。それから、そっと鉛筆を取り上げると、書いた。
(わたしの方を見て)
 僕は、涙を拭う事もせずに、顔を上げて、有香の方を見た。薄く微笑みを湛え、ワインの為か、恥ずかしさの為か、頬を染めた有香の表情が、そこにあった。

 それから、僕等は自然と顔を近づけて、キスをした。いつのまにか曲がストップしており、無音の室内に、ちゅ、という音が小さく、数度響いた。有香の唇は、チョコレートの味がした。一度だけ唇を離すと、お互いにまた見つめ合い、二人とも笑顔を作った。それから背中に手を回すと、再びキスをした。そして、僕は、そのままゆっくりと、有香の服のボタンを外し始めた。一瞬だけ、トイレの扉を見遣った。ミコの姿は、当然だけれど、なかった。

 僕等は互いに裸になると、部屋の電気を消し、ベッドに入った。
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