コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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そよよ

第16話

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 目が覚めたのは、まだ太陽が顔を出し始めたばかりの早朝だった。カーテンは閉めたままだったが、赤い太陽光がその隙間から部屋の中に入り込み、拡散していた。時計を見ると、まだ5時だった。はっきりとしない意識のまま、僕は起き上がると、目を擦った。肌寒いと思ったら、そうか、裸だったんだ。

 瞬間、僕は、妙な感覚に襲われた。何かが変だ。部屋の中が…。部屋の中だけじゃない。何かおかしい。昨日と様子が違う。

 あれ…。有香が…いない。トイレか? 否…ベッドに、人の温もりが残っていない。という事は、こんな早朝に出て行った…? 何故? 何か、幻滅させたか? 彼女に、僕とまた一緒になる事に対して、躊躇いや抵抗があったのか? それとも、僕は、彼女の作り出した僕のタルパの代わりにはなれなかった、という事なのか?

 僕は混乱した頭を抱えながら、ベッドから出て、散乱している服を着た。昨日飲んだワインや、食べた惣菜の容器なんかはテーブルの上は既になく、綺麗に片付いている。有香の服も、バッグもない。けれど…植木鉢は、テーブルの上に残っている。有香は…いない。

 僕は少し焦りを覚えて、スマートフォンを手探りで取り上げると、LINEを立ち上げた。何か、有香から連絡が入っていないか…。

 おかしい…。訳が解らない。どういう事だろう…。LINEの友達一覧に…有香の名前がない。有香からブロックされたのか? LINEって、ブロックすると完全に一覧から削除される仕様なのか?

 不図、コスプレの先輩からLINE通知が入っているのに気付いた。何件か入っている。僕は、トークを開いた。そこには、会社を無断で休んでいるみたいだけれど大丈夫? とか、生きてる? とか、生きてたら返事して! とか、書かれていた。よく見ると、着信履歴も何件か入っている。

 僕は、手が震えるのを感じた。一体、何が起こっているというのだろう。

 僕は、急いで着信通知から先輩に電話を掛けた。コール音が途切れ、すぐに先輩の声が飛び込んできた。
「生きてる? 生きてるの?」
 先輩の声だった。いきなり、そんな事を言われる理由が解らなかった。
「一体…」僕は、自分で声が震えているのが解った。「何があったんですか…?」
「それはこっちのセリフだよ。今まで、どこで何をしてたの?」
 どこで…って…。
「ただ、昨日から、家で寝ていただけですけど…」
「昨日から?」
 どういう事だ?
「ごめんなさい」僕が言った。「混乱していて、何が何だか解らない状態です」
 僕の言葉に、マイクの向こうから溜息が聞こえた。
「よく聞いてね」先輩が言った。僕は、はい、と答えた。「あなたは、ここ2日間、会社を無断欠勤しているの。会社からも何度か電話が行っている筈だし、家にも誰かが訪ねて行った筈だよ」
 そんな…。そんな馬鹿な。
「今日は…」僕が言った。「何月、何日ですか?」
 タイムマシンをテーマにした映画で、こんなシーンあったな、と頭のどこかで思いながら、先輩が答えた日付は、有香の誕生日から3日後だった。という事は…これが夢でなければ、僕は2日間も日を跨いで寝続けていた事になる。そんな…そんな馬鹿な。
「とりあえず、今からそっちに行くから、インターフォン鳴らすから、ちゃんと開けてよ」
 僕は、上の空で、解りました、と呟く様に言ってから、電話を切った。

 気づくと、外は暗くなり始めていた。という事は…早朝ではなく、夕方の5時だった、という事か。

 まだ、状況が理解できていない。冷静に考えないと…。冷静にならないと…。

 僕は、シャワーを浴びようと思い、トイレの扉を開けた。
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