『自称・未来の旦那様』― 運命より、いまを信じたかった ―

だって、これも愛なの。

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― 第一話:君の名前を、未来で知った。―

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春の風は、あたたかくて、少しだけまぶしい。
新学期、クラス替え初日。教室のざわつきの中で、私は窓際の席に座っていた。

新しいクラス、新しい担任、新しいクラスメイト。
いつものことなのに、どうしてこんなに気疲れするんだろう、なんて思いながら。

そのとき。

「──やっと見つけた」

そう声をかけてきたのは、ひとりの男子生徒。
制服はちゃんとこの学校のもの。けれど、見覚えはない。

「え、私?」

「うん。間違いない。君は──未来で、僕の奥さんになる人だよ」

 

……え?

 

頭の中が真っ白になった。
あまりに唐突で、あまりに意味がわからなくて、声すら出ない。

そんな私をよそに、彼はにこりと笑う。

「まだ信じられないよね。でも安心して。僕、未来から来たってわけじゃないから」

──え、ちがうの?(それもまた謎だけど)

「ただ、未来で“君と結婚する”って、誰かから聞いたことがあるんだ。それだけ。
 だから、早めに仲良くなっておこうと思って」

そんなの──そんなの、ある!?!?

 

* * * 

 

その日から、私は変な男に追いかけられる日々に突入した。

名前も知らない転校生(らしい)、胡散臭いセリフばかりの“自称・未来の旦那”。
初対面なのに、私の誕生日を知っていたり、
昔飼っていた猫の名前を口にしたり、
小学校のときのあだ名まで当ててきたり。

「どうしてそれを……?」
思わず聞いてしまった私に、彼はふわっと笑ってこう言った。

「ぜんぶ、“未来で知った”だけだよ」

まるで、未来は確定していて、
私はもう彼の“奥さん”としてそこにいるかのように。

……信じられるわけ、ない。
けど、どこかで心が引っかかってる。

「ねえ、名前は?」

そう聞いた私に、彼はもう知ってるよという顔で答えた。

「──望月あかり、でしょ?」



(……なんで、知ってるの?)

 

そして、彼は続ける。

「今日のことも、実は知ってたよ。君がその窓際の席を選ぶってことも。
……だから、ここで君に会いに来たんだ」

 

未来を語る人なんて信じられない──はずだったのに。
気づけば私は、彼の言葉を、少しずつ気にしはじめていた。

これは、運命?それともただの妄言?

でもこの春、私の毎日は、
「未来の旦那様」と名乗る彼によって、
少しずつ、動き出していくことになる──

 

──つづく。
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