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― 第二話:白い傘の予言 ―
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次の日の朝。
私は、昨日の出来事を夢だったことにしようと決めていた。
“未来の旦那様”なんて、そんなの冗談に決まってる。
──って、思いたかったのに。
「おはよう」
登校してすぐ、校門の前で待ち伏せていた彼が言った。
「……何してるの?」
「いや、会いにきた。昨日、会うって言ったし」
「言ってない!」
「言ったようなもんでしょ」
にこにこしながら、勝手に隣を歩き出す彼。
不思議なことに、強引なんだけど、不快じゃない。
……なんでだろ。
「今日はね、白い傘を持ってくるといいよ」
ふと、彼がそんなことを言った。
「……晴れてるけど?」
「そうだね。でも、午後から降るよ。しかも、急に」
まさか、と思ったけど。
傘を持ってくるほどの予報でもなかったし、私はそのまま学校へ。
そして、午後──
突然、空が真っ暗になり、大粒の雨が降ってきた。
「うそでしょ……」
傘、持ってない。駅まで5分、走れば濡れる。詰んだ。
周囲の子たちが慌てて教室を飛び出していく中、
私はしばらく下駄箱で立ち尽くしていた。
──そのとき。
「ほら。言ったでしょ」
彼が、白いビニール傘を差し出してきた。
しかも、傘は1本だけ。
「ちょ、なんで本当に降るの!?」
「未来で君が“このとき相合い傘だった”って話してたんだ。
……だから、その通りにしてみた」
「そんなの、都合よすぎない?」
「でも、当たったよね?」
言葉につまる私。
信じたくない。でも、否定できない。
だって、私、今日この傘のことを思い出して、
家を出る直前まで迷ったのに。
まるで、心のなかまで見透かされてるみたい。
──駅までの道。
ふたりでひとつの傘に入りながら、肩が少しだけぶつかる距離。
私の心臓は、なぜかずっと落ち着かなかった。
「……ねえ、ほんとは何者なの?」
そう尋ねると、彼は少しだけ笑って、言った。
「未来のことは全部信じなくていいよ。
でも、今日の君が濡れないようにって思ったのは、本当」
そんなの、ずるいよ。
傘の中で、彼の声だけが、雨音にまぎれずに残っていた。
──つづく。
私は、昨日の出来事を夢だったことにしようと決めていた。
“未来の旦那様”なんて、そんなの冗談に決まってる。
──って、思いたかったのに。
「おはよう」
登校してすぐ、校門の前で待ち伏せていた彼が言った。
「……何してるの?」
「いや、会いにきた。昨日、会うって言ったし」
「言ってない!」
「言ったようなもんでしょ」
にこにこしながら、勝手に隣を歩き出す彼。
不思議なことに、強引なんだけど、不快じゃない。
……なんでだろ。
「今日はね、白い傘を持ってくるといいよ」
ふと、彼がそんなことを言った。
「……晴れてるけど?」
「そうだね。でも、午後から降るよ。しかも、急に」
まさか、と思ったけど。
傘を持ってくるほどの予報でもなかったし、私はそのまま学校へ。
そして、午後──
突然、空が真っ暗になり、大粒の雨が降ってきた。
「うそでしょ……」
傘、持ってない。駅まで5分、走れば濡れる。詰んだ。
周囲の子たちが慌てて教室を飛び出していく中、
私はしばらく下駄箱で立ち尽くしていた。
──そのとき。
「ほら。言ったでしょ」
彼が、白いビニール傘を差し出してきた。
しかも、傘は1本だけ。
「ちょ、なんで本当に降るの!?」
「未来で君が“このとき相合い傘だった”って話してたんだ。
……だから、その通りにしてみた」
「そんなの、都合よすぎない?」
「でも、当たったよね?」
言葉につまる私。
信じたくない。でも、否定できない。
だって、私、今日この傘のことを思い出して、
家を出る直前まで迷ったのに。
まるで、心のなかまで見透かされてるみたい。
──駅までの道。
ふたりでひとつの傘に入りながら、肩が少しだけぶつかる距離。
私の心臓は、なぜかずっと落ち着かなかった。
「……ねえ、ほんとは何者なの?」
そう尋ねると、彼は少しだけ笑って、言った。
「未来のことは全部信じなくていいよ。
でも、今日の君が濡れないようにって思ったのは、本当」
そんなの、ずるいよ。
傘の中で、彼の声だけが、雨音にまぎれずに残っていた。
──つづく。
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