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― 第三話:君は、まだ知らない選択をする ―
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雨の日の相合い傘事件から、数日が過ぎた。
彼──風間 蓮(かざま・れん)くんは、転校生としてすっかりクラスに馴染んでいる。
でも、私のなかでは、やっぱりまだ「変な人」枠のままだ。
「未来で君と結婚するって聞いたから」
「今日も話しかけに来たよ」
「君の好きなカフェオレ、未来でも変わらず好きだったよ」
──そんなセリフを真顔で言ってのける時点で、まともなわけがない。
でも。
「本当は、信じてるんでしょ?」
そう言われたら、少しだけ、ドキッとしてしまうくらいには──
彼の言葉が、私の中に、残っていた。
* * *
「文化祭のクラス出し物、何にするか話し合ってるんだって?」
放課後、図書室の窓際。
私がぼんやり外を眺めていると、また彼が現れた。
「……あー。うん。まだ決まらないの。みんなバラバラで」
「未来の記憶では、“君の案”が採用されてたよ。
たしか、“小さな本屋さん”みたいなやつ」
「……え、なんでそれを」
「たぶん、君が今日の夜、家でノートに書くんだと思う。
だから、“未来で知った”だけ」
またそれ。
でも、私の胸の奥に引っかかっていた小さなアイデアは、
まさにその“本屋さん”の案だった。
まだ誰にも言ってなかったのに。
……言ってみようかな。案外、通るかも。
「ねえ、あかり」
彼が、初めて私の名前を呼んだ。
いつも“君”だったのに。
「この文化祭の後、君はひとつ、大きな選択をすることになるんだ」
「選択?」
「うん。進路に関係すること。たぶん、誰にも相談せずに決めるんだと思う」
私は口を閉ざした。
進路のこと。
まだ誰にも話していない。でも、迷っていた。
「……それも、未来で見たの?」
「正確には、未来で“そう言ってた”君の記憶があるだけ。
でも、それが本当に起こるかどうかは、まだわからない」
彼の目は、いつになくまっすぐだった。
「未来って、思ってるよりずっと柔らかい。
だから、君が何を選ぶかは、僕にもわからないよ」
──“未来を知ってる”って、そういうことなの?
全部が確定してるんじゃない。
全部が見えてるんじゃない。
「ただ、どんな未来になっても──」
「君のこと、好きでいたいなって思ってるだけ」
不意打ちのようなその言葉に、
私は返す言葉を失った。
図書室の窓の外。夕暮れの光がふたりの間に差し込んで、
まるでその瞬間だけが、そっと保存されたような気がした。
──つづく。
彼──風間 蓮(かざま・れん)くんは、転校生としてすっかりクラスに馴染んでいる。
でも、私のなかでは、やっぱりまだ「変な人」枠のままだ。
「未来で君と結婚するって聞いたから」
「今日も話しかけに来たよ」
「君の好きなカフェオレ、未来でも変わらず好きだったよ」
──そんなセリフを真顔で言ってのける時点で、まともなわけがない。
でも。
「本当は、信じてるんでしょ?」
そう言われたら、少しだけ、ドキッとしてしまうくらいには──
彼の言葉が、私の中に、残っていた。
* * *
「文化祭のクラス出し物、何にするか話し合ってるんだって?」
放課後、図書室の窓際。
私がぼんやり外を眺めていると、また彼が現れた。
「……あー。うん。まだ決まらないの。みんなバラバラで」
「未来の記憶では、“君の案”が採用されてたよ。
たしか、“小さな本屋さん”みたいなやつ」
「……え、なんでそれを」
「たぶん、君が今日の夜、家でノートに書くんだと思う。
だから、“未来で知った”だけ」
またそれ。
でも、私の胸の奥に引っかかっていた小さなアイデアは、
まさにその“本屋さん”の案だった。
まだ誰にも言ってなかったのに。
……言ってみようかな。案外、通るかも。
「ねえ、あかり」
彼が、初めて私の名前を呼んだ。
いつも“君”だったのに。
「この文化祭の後、君はひとつ、大きな選択をすることになるんだ」
「選択?」
「うん。進路に関係すること。たぶん、誰にも相談せずに決めるんだと思う」
私は口を閉ざした。
進路のこと。
まだ誰にも話していない。でも、迷っていた。
「……それも、未来で見たの?」
「正確には、未来で“そう言ってた”君の記憶があるだけ。
でも、それが本当に起こるかどうかは、まだわからない」
彼の目は、いつになくまっすぐだった。
「未来って、思ってるよりずっと柔らかい。
だから、君が何を選ぶかは、僕にもわからないよ」
──“未来を知ってる”って、そういうことなの?
全部が確定してるんじゃない。
全部が見えてるんじゃない。
「ただ、どんな未来になっても──」
「君のこと、好きでいたいなって思ってるだけ」
不意打ちのようなその言葉に、
私は返す言葉を失った。
図書室の窓の外。夕暮れの光がふたりの間に差し込んで、
まるでその瞬間だけが、そっと保存されたような気がした。
──つづく。
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