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日常の小話:未来の旦那様と、ふたりで朝ごはん ― なんてことない朝が、いちばん好き。―
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日曜日の朝。
トースターが「チン」と鳴って、
私はコーヒーの香りに包まれながら、小さくあくびをする。
寝ぐせのついた髪、パジャマのまま、
でも、となりにはちゃんと“旦那様”がいる。
「……君、ジャム塗りすぎ」
「甘いのは朝のうちに摂取するって決めてるの」
「ほう。じゃあこのあと食べるパンケーキは?」
「それはもう……昼扱い」
「はやない?」
そんな会話を交わしながら、
ふたりでトーストにかじりつく。
結婚式から、まだ半年。
毎日一緒にいるようになっても、
なぜか、こうして迎える朝は、いつもちょっとだけ特別だ。
ふと思い出して、私は声をかける。
「ねえ、はじめて朝ごはんいっしょに食べたとき、覚えてる?」
「もちろん」
「ホテルの朝食ビュッフェで、あんただけ全種類取ってきてさ、
“どれが君の未来の朝食か探してる”とか言ったよね」
「だってあのときは、まだ“未来の旦那様”って名乗ってた時代だったから……」
「いや、そういう問題じゃない(笑)」
ふたりで笑い合って、コーヒーを一口。
「今の生活、どう?」
ふいに私が尋ねると、蓮は少し考えて、
それからすっと笑って言った。
「うん、君がいる朝って、やっぱりいいなって思ってる」
その何気ない言葉に、胸がじんわりする。
「……未来の旦那様のくせに、今のことばっか言うじゃん」
「未来も過去も、どうでもよくなるくらい、今が心地いいんだもん」
予知夢も、特別な奇跡も、もう見てない。
でも、あのとき思い描いた“未来”は、
いま、目の前のコーヒーカップの湯気の中にある気がする。
静かで、あたたかくて、何も起きない朝。
「──このまま、なんにも起こらなくていいね」
「うん。それがいちばん幸せ」
私たちは、そう言って、
またひとくち、トーストをかじった。
──おわり。
トースターが「チン」と鳴って、
私はコーヒーの香りに包まれながら、小さくあくびをする。
寝ぐせのついた髪、パジャマのまま、
でも、となりにはちゃんと“旦那様”がいる。
「……君、ジャム塗りすぎ」
「甘いのは朝のうちに摂取するって決めてるの」
「ほう。じゃあこのあと食べるパンケーキは?」
「それはもう……昼扱い」
「はやない?」
そんな会話を交わしながら、
ふたりでトーストにかじりつく。
結婚式から、まだ半年。
毎日一緒にいるようになっても、
なぜか、こうして迎える朝は、いつもちょっとだけ特別だ。
ふと思い出して、私は声をかける。
「ねえ、はじめて朝ごはんいっしょに食べたとき、覚えてる?」
「もちろん」
「ホテルの朝食ビュッフェで、あんただけ全種類取ってきてさ、
“どれが君の未来の朝食か探してる”とか言ったよね」
「だってあのときは、まだ“未来の旦那様”って名乗ってた時代だったから……」
「いや、そういう問題じゃない(笑)」
ふたりで笑い合って、コーヒーを一口。
「今の生活、どう?」
ふいに私が尋ねると、蓮は少し考えて、
それからすっと笑って言った。
「うん、君がいる朝って、やっぱりいいなって思ってる」
その何気ない言葉に、胸がじんわりする。
「……未来の旦那様のくせに、今のことばっか言うじゃん」
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予知夢も、特別な奇跡も、もう見てない。
でも、あのとき思い描いた“未来”は、
いま、目の前のコーヒーカップの湯気の中にある気がする。
静かで、あたたかくて、何も起きない朝。
「──このまま、なんにも起こらなくていいね」
「うん。それがいちばん幸せ」
私たちは、そう言って、
またひとくち、トーストをかじった。
──おわり。
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