『自称・未来の旦那様』― 運命より、いまを信じたかった ―

だって、これも愛なの。

文字の大きさ
9 / 10

結婚式編:未来の約束を、今日という日に ― ふたりで、ここまで歩いてきた。だから、未来もきっと大丈夫。―

しおりを挟む
春の風がやさしく吹いていた。

教会の鐘の音が遠くで鳴っている。
控室の窓から見えるのは、花の咲いた小道と、やわらかく揺れる光。

私は、真っ白なドレスを着て立っていた。

「……本当に、今日が来たんだな」

鏡の中の私は、少し泣きそうで、でも笑っていた。

 

──未来の旦那様、って、最初に彼が言ったとき。
あのときは、ほんとうに信じられなかった。

だけど今、
その“未来”が、いま目の前にある。

 

* * * 

 

バージンロードの先、
彼──風間 蓮が、まっすぐ私を見つめていた。

タキシード姿なんて、ちょっと似合わないような、
でも一瞬で胸がいっぱいになるような、そんな顔。

「……君が歩いてくる未来を、何度夢に見たかわからないよ」

ふたりだけの小さな声で、彼が言った。

「今日がその日だってわかってても、
やっぱり、君が一歩ずつ近づいてくるのを見ると、どうしようもなく、泣きそうになる」

私も、小さな声で答えた。

「私はね、未来がどうなるかなんて、ずっとわからなかったけど、
あなたと一緒にいた“毎日”が、ちゃんとこの日につながってた気がするの」

「予知なんかじゃなくて、
信じたいと思った気持ちの積み重ねが、今日ここにあるんだよね」

 

誓いの言葉も、指輪も、キスも。

ひとつひとつが、どこか照れくさくて、
だけど、すべてが本物だった。

 

* * * 

 

披露宴の終わり、ふたりで手をつないで、テラスに出た。

夕暮れの空が広がっていた。

「ねえ、覚えてる? はじめて話しかけてきた日」

「もちろん。『未来で結婚するって聞いたから』って言ったやつでしょ。
あれ、人生でいちばん胡散臭いナンパだったよね?」

「でも、結婚したじゃん?」

「……ねえ、それ、プロポーズのときに言ってたら、めちゃくちゃキザだったよ?」

「え、言おうか迷ってたんだけど……」

「ほんとにやめて正解(笑)」

 

ふたりで笑い合って、
私はそっと蓮の肩に頭を預けた。

「ありがとう。夢じゃなくて、今日を選んでくれて」

「ありがとう。信じてくれて。いっしょに歩いてきてくれて」

 

その言葉に、風がやさしく吹いた。

あの頃、未来なんて知らなかった。
知らなかったからこそ、
何度も選び直して、何度も迷って、
やっと、ここにたどり着いた。

 

私たちの物語は、今日で“一区切り”。

でも──

未来は、まだまだ続いていく。

“予知のない未来”を、ふたりでつくる日々が。

 

そしてきっと、いつか、
新しい誰かに、こんなふうに言う日が来るのかもしれない。

 

「──未来で君に会うって、知ってたよ」

 

──おわり。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

18年愛

俊凛美流人《とし・りびると》
恋愛
声を失った青年と、かつてその声に恋をしたはずなのに、心をなくしてしまった女性。 18年前、東京駅で出会ったふたりは、いつしかすれ違い、それぞれ別の道を選んだ。 そして時を経て再び交わるその瞬間、止まっていた運命が静かに動き出す。 失われた言葉。思い出せない記憶。 それでも、胸の奥ではずっと──あの声を待ち続けていた。 音楽、記憶、そして“声”をめぐる物語が始まる。 ここに、記憶に埋もれた愛が、もう一度“声”としてよみがえる。 54話で完結しました!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ

月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていた男女の恋の物語。 (謝罪)以前のあらすじは初稿のでした。申し訳ございませんでした。

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

処理中です...