夜明け草の誓い ―政略で結ばれたふたりが見つけたのは、孤独を越える小さな光―

だって、これも愛なの。

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第5話 季節の贈り物

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夏の初め、宮殿の一室。
窓から射し込む陽射しは強く、庭園の緑を鮮やかに照らしていた。

執務を終えて部屋へ戻ると、机の上に包みが置かれていた。
控えめな花柄の布で丁寧に包まれた、小さな箱。
その傍らで、リリアナが少し緊張した面持ちで立っていた。

「殿下……少しだけ、早い贈り物を用意してしまいました」

「贈り物?」

彼女は恥ずかしそうに視線を逸らしながら、箱を差し出す。
受け取り、布を解くと――そこには深い青色の布で作られた小さなハンカチが入っていた。
群青の糸で繊細な刺繍が施され、角には小さな花の模様。

「わたしの刺繍はまだ拙いのですが……殿下のお好きな色で、いつもお手元に置いていただければと思って」

胸が熱くなるのを感じた。
俺の好みなど、誰も気にしたことがなかった。
彼女だけが、それを覚えて、形にしてくれる。

「……大切にする」
短く告げると、リリアナはぱっと笑顔を咲かせた。

その笑みを見て、ふと机の引き出しに手を伸ばした。
「では、俺からも渡そう」

取り出したのは、青い小花を束ねた小さなブーケ。
今日の庭園で、侍女に手伝わせながらも自分で選んだものだ。

「殿下……!」

「お前が花を好きだと言っていたからな。
本当はもっと大げさなものを用意すべきなのだろうが……これが一番、お前らしいと思った」

リリアナは両手で花束を抱きしめ、目に涙を浮かべていた。

「わたし、殿下からお花をいただける日が来るなんて……」

「お前が喜ぶなら、それでいい」
言葉にしてみると、不思議なほど心が軽かった。

互いの贈り物を手にしながら見つめ合い、ふたりの間に静かな温もりが広がる。
それは政略でも義務でもなく、ただ「夫婦」として自然に芽生えた絆だった。
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