夜明け草の誓い ―政略で結ばれたふたりが見つけたのは、孤独を越える小さな光―

だって、これも愛なの。

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第6話 雨の日のひととき

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昼下がり、宮殿の窓を打つ雨音が絶え間なく響いていた。
庭園も街並みも白い霞に包まれ、外に出ることは叶わない。
普段なら執務に追われている時間だが、今日は珍しく予定が空いていた。

「殿下」
静かに声をかけられて振り向くと、リリアナが盆を抱えて立っていた。
盆の上には小さな菓子と二つのティーカップ。

「雨の日にぴったりのものを、と……厨房の方に教えていただきました」

机に盆を置き、温かな香りの立つお茶を注いでくれる。
窓の外の灰色と対照的に、部屋の中はほんのりと甘い匂いに包まれた。

俺はカップを受け取り、ひと口含む。
「……悪くない」
静かにそう言うと、リリアナはほっと笑顔を浮かべた。

「雨の音を聞きながら、殿下と一緒にいただくからでしょうか……なんだか、とても落ち着きます」

彼女の言葉に耳を傾けながら、ふと自分の胸の内に気づく。
確かに、雨音に閉ざされたこの空間は、外の世界から切り離されたようで――
ただ彼女と過ごすことだけが現実になっていた。

「リリアナ」
呼びかけると、彼女は驚いたようにこちらを見る。
「はい?」

「……こうしてお前と過ごすと、時がゆるやかに流れる」

それは、先日の夜にも口にした思いに似ていた。
けれど今は、もっと素直に伝えられた。

リリアナの頬が少し赤くなり、視線が揺れる。
「わたしもです。殿下のおそばにいると……時間が、優しくなります」

その答えに胸が熱くなる。
雨音に包まれながら、互いに視線を交わす。
静かなひとときが、これほど甘やかで満たされているとは――かつての俺には想像もできなかった。

やがてリリアナが、机に置かれた本をそっと開いた。
「殿下、読み聞かせてもよろしいですか?」

ページをめくる声に雨音が重なる。
俺はただ、その声を聞きながら、重く閉ざしていた心が確かにほどけていくのを感じていた。

――雨の日も、彼女がいれば晴れ渡る。
そんな思いを胸に、静かに目を閉じた。
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