月の庭で抱きしめて ―― 甘えん坊な幼馴染と、月明かりの恋

だって、これも愛なの。

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第五話 花冠の夜に

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 庭には白い花が満開に咲き、夜風にそよぐたび、甘やかな香りを漂わせていた。
 月は丸く輝き、まるで今夜が特別だと告げているようだった。

「セレナ、ちょっと待ってて」
 そう言ってルカは花壇にしゃがみ込み、小さな白い花をひとつひとつ摘み始めた。

「……なにをしているの?」
「えっと……その……」
 不器用な指で花を編んでいく姿に、セレナは呆れながらも微笑んだ。
 すぐに花びらがぽろぽろ落ちてしまい、彼の眉間には深いしわが寄る。

「上手くいかない……でも、作りたいんだ」
「どうして?」
「セレナに、僕の気持ちを形で渡したいから」

 そう言って顔を上げた瞳は、涙をこらえるように真剣だった。

「子どもみたいね」
「子ども扱いしないでって言ったはずなのに……でも、いいや」
 セレナは胸が熱くなるのを感じながら、彼の隣に腰を下ろした。

「貸してごらんなさい」
 彼の手から花を受け取り、指先で丁寧に編んでいく。
 ルカが横で目を丸くして見守っているのがわかる。

「……やっぱりセレナは器用だな」
「少し慣れているだけよ。あなたの気持ちがあるから、形になるの」

 やがて輪が完成すると、セレナは花冠をルカの手に戻した。
「はい。仕上げはあなたが」
「……僕が?」
「ええ。せっかくの想いなのだから」

 緊張で震える指で、ルカは花冠をセレナの頭にそっとのせた。


「似合ってるよ。……世界で一番、綺麗だ」


 からかいでも甘えでもなく、まっすぐな言葉。
 セレナの胸が熱くなる。幼馴染として過ごした長い年月の中で、こんな瞳を向けられたことはなかった。

「ルカ……」
「僕は、君が笑ってくれるなら、どんなわがままでもやめられる気がする。でも――」
 彼は少し頬を赤らめ、それでも言葉を続けた。
「……でも、本音はやっぱり、もっと君を独り占めしたいんだ」

 真剣な誓いを立てた後でも、彼はやっぱり甘えん坊で、わがままを言う。
 けれどそのわがままは、すべてセレナを想う気持ちの裏返しだと、今はもうよくわかる。

 セレナは小さく笑い、彼の頬に触れた。
「仕方ないわね。……でも、そんなあなたが愛おしいの」

 ルカの瞳が驚きに見開かれ、すぐに嬉しそうに細められる。
 次の瞬間、月明かりの下で、彼はセレナを強く抱きしめた。

 花冠が少し傾いて、白い花びらがひとひら舞い落ちる。
 それでもふたりは気づかず、ただ互いの温もりを確かめ合っていた。

 ――月の庭に咲く白い花々は、風に揺れながらふたりの未来を祝福しているようだった。
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