『〇〇夜に読む、お伽話の癒し帳』 ― どんな夜も、あなたの心に寄り添う小さな物語 ―

だって、これも愛なの。

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『月明かりに咲く、小さな恋のお伽話』― 優しさに包まれる、可憐な恋の短編集 ―

第一話 星降る庭園の約束

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 その庭園は、夜になると星を映す鏡のように輝いた。
 噴水の水面には無数の光が揺れ、花壇の花々は月明かりに透けて、まるで夜空の一部になったよう。

 令嬢エリナは、眠れぬ夜ごとにそこへ足を運ぶ。
 家族の期待に応えなければ、と昼間は背筋を伸ばして過ごす彼女も、この庭園では少し肩の力を抜けるのだった。

「また来ていたのですね」
 声に振り返ると、噴水のそばに王子レオンが立っていた。
 夜会服のまま、けれど飾らずに微笑むその姿は、庭の光よりもやさしい。

「お妃候補が庭で夜更かしなどと……噂になりませんか?」
「噂になったら……あなたが守ってくださいますか?」
「ええ、もちろん」

 彼の答えは、あまりにも自然で。
 その一言に胸がほどけてしまう。

 ふたりは並んで噴水を覗き込み、映る星を数えた。
 言葉は少なくても、不思議と寂しさはなかった。

「エリナ。星は明日も降るでしょう。けれど……」
「けれど?」
「今夜の星は、今夜だけのものです」

 そう言って、レオンは手を差し伸べる。
 触れた指先は、ほんのりあたたかい。

「だから、この時間も――あなたと交わす約束も、大切にしたい」

 夜風に揺れる花々が、ふたりの会話を祝福するように音を立てた。
 エリナは微笑んで、その手を握り返す。

「ええ。私も……今夜の星を、あなたと憶えています」

 それは恋の告白ではなかった。
 けれど、労わり合い、優しさを分かち合う小さな約束。
 お伽話のように可憐で静かな夜の一幕だった。
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