『〇〇夜に読む、お伽話の癒し帳』 ― どんな夜も、あなたの心に寄り添う小さな物語 ―

だって、これも愛なの。

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『月明かりに咲く、小さな恋のお伽話』― 優しさに包まれる、可憐な恋の短編集 ―

第五話 眠り姫と読書好きの王子

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 とある古い城に、長い眠りについた姫がいた。
 魔法のいたずらで目を覚まさぬまま、季節がいくつも過ぎていった。

 けれど、姫のそばにはひとりの王子が通い続けていた。
 彼は剣よりも本を好む、静かな読書好きの青年だった。

「……今日も少しだけ、読んでもいいですか」

 眠る姫の枕元に座り、彼は分厚い本を開く。
 それは英雄譚の日もあれば、花の名前を綴った図鑑の日もあった。
 声に出して読むたび、姫の寝顔がやわらかく揺れる気がして、王子は胸があたたかくなった。

 誰もが諦めかけていたが、彼は信じていた。
 言葉はきっと届く、と。

 そしてある夜。
 月明かりに照らされた部屋で、姫の唇がわずかに動いた。

「……つづきを……聞かせて」

 王子の本が、ぱたりと閉じられる。
 驚きと喜びで、胸がいっぱいになった。

「ええ、もちろん。どんな物語でも、あなたが目を覚ましても、眠っていても……ずっと読んでいきます」

 姫の睫毛が震え、ゆっくりと瞳が開かれる。
 最初に映したのは、本を胸に抱えた王子の姿だった。

「……ありがとう。あなたの声で、夢がやさしくなりました」

 それは長い眠りを破った瞬間であり、ふたりの小さな約束の始まりでもあった。

 剣ではなく言葉で守られた恋。
 本のページをめくる音が、やがて二人の未来をつむぐ調べとなっていった。
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