24 / 29
『月明かりに咲く、小さな恋のお伽話』― 優しさに包まれる、可憐な恋の短編集 ―
第五話 眠り姫と読書好きの王子
しおりを挟む
とある古い城に、長い眠りについた姫がいた。
魔法のいたずらで目を覚まさぬまま、季節がいくつも過ぎていった。
けれど、姫のそばにはひとりの王子が通い続けていた。
彼は剣よりも本を好む、静かな読書好きの青年だった。
「……今日も少しだけ、読んでもいいですか」
眠る姫の枕元に座り、彼は分厚い本を開く。
それは英雄譚の日もあれば、花の名前を綴った図鑑の日もあった。
声に出して読むたび、姫の寝顔がやわらかく揺れる気がして、王子は胸があたたかくなった。
誰もが諦めかけていたが、彼は信じていた。
言葉はきっと届く、と。
そしてある夜。
月明かりに照らされた部屋で、姫の唇がわずかに動いた。
「……つづきを……聞かせて」
王子の本が、ぱたりと閉じられる。
驚きと喜びで、胸がいっぱいになった。
「ええ、もちろん。どんな物語でも、あなたが目を覚ましても、眠っていても……ずっと読んでいきます」
姫の睫毛が震え、ゆっくりと瞳が開かれる。
最初に映したのは、本を胸に抱えた王子の姿だった。
「……ありがとう。あなたの声で、夢がやさしくなりました」
それは長い眠りを破った瞬間であり、ふたりの小さな約束の始まりでもあった。
剣ではなく言葉で守られた恋。
本のページをめくる音が、やがて二人の未来をつむぐ調べとなっていった。
魔法のいたずらで目を覚まさぬまま、季節がいくつも過ぎていった。
けれど、姫のそばにはひとりの王子が通い続けていた。
彼は剣よりも本を好む、静かな読書好きの青年だった。
「……今日も少しだけ、読んでもいいですか」
眠る姫の枕元に座り、彼は分厚い本を開く。
それは英雄譚の日もあれば、花の名前を綴った図鑑の日もあった。
声に出して読むたび、姫の寝顔がやわらかく揺れる気がして、王子は胸があたたかくなった。
誰もが諦めかけていたが、彼は信じていた。
言葉はきっと届く、と。
そしてある夜。
月明かりに照らされた部屋で、姫の唇がわずかに動いた。
「……つづきを……聞かせて」
王子の本が、ぱたりと閉じられる。
驚きと喜びで、胸がいっぱいになった。
「ええ、もちろん。どんな物語でも、あなたが目を覚ましても、眠っていても……ずっと読んでいきます」
姫の睫毛が震え、ゆっくりと瞳が開かれる。
最初に映したのは、本を胸に抱えた王子の姿だった。
「……ありがとう。あなたの声で、夢がやさしくなりました」
それは長い眠りを破った瞬間であり、ふたりの小さな約束の始まりでもあった。
剣ではなく言葉で守られた恋。
本のページをめくる音が、やがて二人の未来をつむぐ調べとなっていった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる