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第四話 気づきと告白未満
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夕暮れの学園回廊。
窓から差し込む橙色の光が、石畳を長く照らしていた。
並んで歩くエドガー殿下とリリアナ。
昨日までは何気ない時間だったのに、今日はどうにもぎこちない。
「……あの、殿下」
「……リリアナ嬢」
呼び合った途端、ふたりの声が重なってしまい、同時に顔が真っ赤になる。
「どうぞ、殿下から……」
「い、いえ! リリアナ嬢から……!」
互いに譲り合い、気まずい沈黙が流れる。
しばらくして、思い切ったようにリリアナが口を開いた。
「わたくし……この前、将来のことを考えて、もし離れ離れになったらどうしようと……そう思っただけで、胸が痛くなってしまいました」
殿下は目を見開く。
けれど、それは驚きではなく、同じ想いを抱えていたからだった。
「……私もです」
「……!」
「いつの間にか、私の日々はすべて、貴女と一緒にあるのが当たり前になっていました。
側にいられない自分を想像したら、恐ろしくて……」
言葉にしてしまえば、もう後戻りはできない。
それでも殿下の声は真剣で、震えながらもまっすぐだった。
リリアナの胸にも、熱いものが込み上げる。
(これが……“恋”なのかしら)
言葉にはしないまま、ふたりは互いの瞳をじっと見つめ合った。
沈黙なのに、胸の奥で確かな答えを交わし合ったように感じる。
ちょうどその時、曲がり角から友人たちが現れた。
慌てて距離を取るふたりを見て、彼らは目を細めて微笑む。
(……もう、ほとんど告白しているようなものですね)
(やっと気づきましたか)
夕陽が赤く染める回廊の中で、ふたりの恋はまだ「名前」を持たない。
けれど確かに、それは芽吹いていた。
窓から差し込む橙色の光が、石畳を長く照らしていた。
並んで歩くエドガー殿下とリリアナ。
昨日までは何気ない時間だったのに、今日はどうにもぎこちない。
「……あの、殿下」
「……リリアナ嬢」
呼び合った途端、ふたりの声が重なってしまい、同時に顔が真っ赤になる。
「どうぞ、殿下から……」
「い、いえ! リリアナ嬢から……!」
互いに譲り合い、気まずい沈黙が流れる。
しばらくして、思い切ったようにリリアナが口を開いた。
「わたくし……この前、将来のことを考えて、もし離れ離れになったらどうしようと……そう思っただけで、胸が痛くなってしまいました」
殿下は目を見開く。
けれど、それは驚きではなく、同じ想いを抱えていたからだった。
「……私もです」
「……!」
「いつの間にか、私の日々はすべて、貴女と一緒にあるのが当たり前になっていました。
側にいられない自分を想像したら、恐ろしくて……」
言葉にしてしまえば、もう後戻りはできない。
それでも殿下の声は真剣で、震えながらもまっすぐだった。
リリアナの胸にも、熱いものが込み上げる。
(これが……“恋”なのかしら)
言葉にはしないまま、ふたりは互いの瞳をじっと見つめ合った。
沈黙なのに、胸の奥で確かな答えを交わし合ったように感じる。
ちょうどその時、曲がり角から友人たちが現れた。
慌てて距離を取るふたりを見て、彼らは目を細めて微笑む。
(……もう、ほとんど告白しているようなものですね)
(やっと気づきましたか)
夕陽が赤く染める回廊の中で、ふたりの恋はまだ「名前」を持たない。
けれど確かに、それは芽吹いていた。
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